蒼き瞳

秋月

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*誕生、月の王子と妖精族

誕生、月の王子と妖精族#4

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エマ「馬鹿なこと言わないでよ
こんな時に勝負なんてするわけないでしょ?」

私達の勝負で姫様とお腹の子どもに何かあったら大変よ
雪女と雪男の勝負なんて辺り一帯雪世界よ?
環境が変わってしまうわ

ナギサ「逃げるのかよ」

エマ「そうじゃないわよ。姫様の事を考えて…」

華夜「あら、私は良いわよ。面白そうだもの」

アズナ「私も賛成!」

思わず溜め息が出てしまうわ
アズナもだけど姫様…面白いことなんて無いでしょう…
なんて姫様らしい

エマ「分かったわよ。その勝負受けて立つ」

勝負と言われたら私だって本気でやってやるんだから
こう見えても私は負けず嫌いなのよ

アズナ「そうと決まったら広場に移動しよ!」

何でアズナがしきってるのよ
本当ノリノリなんだから…
でも勝負と言われて血が騒いでしまうのは私も妖魔のはしくれね
って事で広場に移動して姫様とアズナは私達から少し離れたところで観戦、私とナギサは向かい合った

エマ「やる気満々って顔して…言っておくけど勝ちを譲るような勝負はしないからね」

ナギサ「当然だろ。でも勝つのは俺だからな
約束覚えてるよな?」

エマ「勝ったら結婚でしょ?
負けたらどうするのかしら?」

ナギサ「勝つって言ってんだろ!」

ピキピキと地面が氷って範囲が広がり私の足元まで来た
まずい、と思って後ろに避けるとさっき私の立っていた場所から鋭い氷が突き出てきた
逃げても逃げても氷は追ってきてあっという間にそこら中が鋭い氷だらけ
どこまでも追ってくるなら逃げるだけ無駄ね
ピタッと足を止めるとすぐにそこから鋭い氷が出てきた

ナギサ「マジかよ…」

鋭い氷の先端に立つ私に意外にもナギサは驚いていた

エマ「これくらい簡単よ?それで?もう終わりなの?」

次はどんな手で追い込むつもりなのかしら…
なんて呑気に考えてたらもう既に術の中だったみたい
冷たく濃い霧が辺りを包みあっという間に何も見えなくなってしまった
しまった…霧の術ならナギサを越える人はそういない
それだけは私以上…この空間でしかも魔力を感じ取れない私には厄介そのもの
目を凝らしていると鋭い氷の欠片が幾つも私に向かってくる

エマ「とげみぞれ!」

同じ術で対抗すると氷の粒達は互いにぶつかり合い砕けていった
さてとこの濃い霧は私には消せないし、モタモタしてたら次の術が来る
今度はこっちの番

エマ「雨音色あまねいろ

この霧から出るのも消すのも難しいから、ここから直接ナギサを叩いてやる
優しく雨がポツリ、ポツリと地面に落ちていく

ナギサ「雨?エマの奴これで攻撃のつもりかよ」

全身を研ぎ澄まして僅かな雨の音を聞き分ける
見つけたわよナギサ

エマ「雪呀龍せきがりゅう!」

ナギサ「うわ!?あっぶね…残念だなエマ!外れたぞ!」

大きな雪の龍が見つけ出したナギサに襲いかかったけど上に避けられてしまった
まぁ、ナギサが相手だもん
それくらい計算の内
次の手は打ってある

ナギサ「マジかよ…っ」

上に避けたナギサが上を見て唖然としてる
それもそうでしょ?
真上からは複数の雪呀龍がナギサを狙って向かってきてるんだから

ナギサ「うわ!!?」

空中じゃ動けないナギサは雪呀龍によって地面に叩きつけられていき、大きな音と震動が響き渡った
ナギサがやられて霧は解けていく

ナギサ「くそ!離せよ馬鹿龍!!」

ナギサは残念ながら雪呀龍に咥えられ身動きがとれない状態だった

エマ「あんなに意気込んでいたのに残念ね
勝負は私の勝ちよ。結婚の話は白紙に戻しておいてね」

ナギサは悔しそうに肩を落としていてその姿を見たら思わず笑ってしまった
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