1度っきりの人生〜終わらない過去〜

最終話

綾は手紙をぐしゃぐしゃにしたのを後悔して、ゴミ箱をあさり、手紙をシワが伸びるように広げ、近くの公園のベンチで手紙を読んだ。
『綾ちゃんへ
綾ちゃんとはもっとなかよくなりたかったな。綾ちゃんと仲良くなったのは萌香からの紹介だったね。萌香を間に挟んで話をすることが多かったから二人っきりで話してるのはそうそうなかったんじゃないかな。もしかしたら、私はうざがられていたかもね。
もっとお話したかった。仲良くなりたかった。買い物や二人でお出かけもしてみたかった。
最後に言わせてください。
私の分まで幸せになってください。好きな人をとことん好きになって愛してほしい。そして、愛されてください。
それが私の願い。　　日香川　藍』
綾は手紙をぐしゃぐしゃにした。
「綺麗事ばっかり。私は藍を利用しようとしたのに……。」　　
綾は泣きながら、近くのゴミ箱に捨てた。


萌香の手紙には……
『萌香へ
小さい頃から大親友でいてくれてありがとう。私は萌香のことがすっごく大好き！
いきないの告白！ごめん！でも、私は萌香がいないと生きていけなかった。萌香がいたからこそ、乗り越えられることもたくさんあったよ。ありがとう。言い始めると言い切れないんだけどね…。
もっと話したかった。いきなり、私が死ぬなんてね。びっくりだよね。私も病気になったという真実を告げられたとき驚きと同時に悲しかった。もう生きられないんだと知って…。それと、みんなに会えなくなるってことに。大好きなみんなに…。これからも大好きでいたいな。
私の分まで生きぬいてね。
そして、最後に言わせてほしい。
私の分まで幸せになってください。好きな人をとことん好きになって愛してほしい。そして、愛されてください。
それが私の願い。　　日香川　藍』


日向の手紙には……
『日向くんへ
萌香のこと泣かせたら許さないからね。
萌香と結婚したのなら、私に一番に報告してほしいなぁ～って、なんてね。
第一声がこれかよ！って、言われそうだけど…。
日向くんにはいろいろとお世話になったね。ひろちゃんとバカやってて、何回も笑ったことあったな。今思うと良い思い出だと改めて思う。
みんなと仲良くしてね！
それと、最後に言わせてほしい。
私の分まで幸せになってください。好きな人をとことん好きになって愛してほしい。そして、愛されてください。
それが私の願い。　　日香川　藍』


大翔の手紙には……
『ひろちゃんへ
好きになってくれてありがとう。何回も告白してくれてありがとう。幼なじみになってくれてありがとう。
私が病気になったという真実を告げられたとき驚きと同時に悲しかった。もう生きられないんだと知って…。それと、みんなに会えなくなるってことに…。
いっぱい心配もかけたし、いっぱい悲しませた。でも、その分笑うこともできた気がする。ありがとう。
そして、最後に言わせてほしい。
私の分まで幸せになってください。好きな人をとことん好きになって愛してほしい。そして、愛されてください。
それが私の願い。
それと、好きな人をとことん好きになってね。幸せになってね。　日香川　藍』


李逵都の手紙には……
『李逵都くんへ
昔からいっぱい迷惑をかけてごめんなさい。
そして、好きになってくれてありがとう。
ちゃんと好きになってくれる人を見つけるんだよ！それと、李逵都くん、幸せになってね。幸せを分けてほしいくらいだけど…。サーフィンを楽しんでね。いつも見てた。見てるのも結構楽しかったんだよ。それを見てて好きになりそうなぐらいだったよ。バイバイ。　　　日香川　藍』


真登の手紙には……
『お兄様へ
全財産はお兄様にお譲りしたいと思います。
私のことで色々と心配かけてごめんなさい。病気のことも。
お兄様のこと、大好きだよ。
だから、幸せになってほしい！私の分まで！幸せになって、仏壇（？）やお墓（？）とかに話しかけてほしい。のろけでも何でも聞くよ。幸せをほんの少し分けてほしいっていう少なからずの希望です。
好きな人をちゃんとみつけて、結婚して！そして、赤ちゃんの報告楽しみに待っています。
それと、私はずっと見守ってるつもりだから。（なんかこわいけど…。）
最後に、今まで私のお兄様でいてくれてありがとう。
それと、奏也先生によろしくお伝えください。　　　　　　　　日香川　藍』



これらがあの封筒に入っていた手紙の数々だった。
藍は病気のことを知った日の夜、一日中布団の上で泣いた。泣いていた。
それから、藍の恋愛感情が分からなくなった。大翔が好きだったのか、李逵都が好きだったのか……。

もっと遅くに分かっていれば誰かに好きだって言えたかもしれない…。そして、付き合い始め、支えてくれる彼氏がいたかもしれないのに…。


藍は誰のことも恨まずに亡くなった。
ただ、後悔したことが多かった。
余命宣告され、それまでにやりたいことを出来ていれば…。
進行が遅ければ…。

今、後悔したっておそいのに…。


この先ずっと、藍の事を想い続けると思う。けど、その分いっぱい幸せになる。彼らはそれぞれの気持ちを胸に抱きながらこの先、十年、ニ十年、それより先まで生き続けるのだった。