年下の男の子

うめまつ

文字の大きさ
5 / 7

5

しおりを挟む
あれからあまり外に出なくなった。

ラジオ体操終わったらまっすぐ帰って宿題して、お母さんとお父さんの言い付けを聞くようにした。

まだ分からないことが多くて、よく分からないけど。

ひどいことを言わないようにすごい気を付けた。

ーあーちゃん嘘つき!ー

あの時、怒鳴った言葉がいつも頭にぐるぐるしてる。
あーちゃんは嘘つかない。
年下なのに今まで会った子の中で一番優しくて良い子だった。
私があーちゃんの話を聞かないで決めつけた。

だからお母さんは泣いたんだ。

お父さんが私を悪くないって言ったのは、私がお父さんにあーちゃん嘘つきだって言ったからだ。

お父さんが、ななみに意地悪する子はうちに来なくて良いって怒ってた。


お父さんが味方になって嬉しいはずなのに、お父さんがあーちゃんの悪口言うのが嫌で、わんわん泣いて怒った。


あーちゃんは良い子だもん!お父さんのバカ!死んじゃえって怒鳴ったらお父さんが怒ってた。



毎朝、ラジオ体操で友達に会うけど、友達からはプールに誘ってくれないし誰も家に来ない。

みんな、私抜きで遊んでる。

お父さんとお母さんにもみんなが意地悪だっていつも言ってた。
いつもみんなに、キライ!意地悪!って言ってた。


でも本当に意地悪なのは私で、優しかったのはみんなだったんだ。

塾で忙しいって言う友達にプールに来てって言ったら、みんないつも来てくれた。

お昼からお母さんのお手伝いがあるって言う子にまだ遊ぶって言ったらチャイムがなるまで付き合ってくれた。

そんなこともわからなかった。

私が意地悪だと気づいたから、おじいちゃんはあーちゃんを連れて帰ったんだ。


たまにお母さんはあーちゃんちの話をしてくれた。

前に住んでた地区で仲が良かったって。
あーちゃんのお母さんとお父さんは優しくて楽しい人だって。
あーちゃんのお父さんは事故で死んじゃって、お母さんも一緒に事故に遭って入院してるって。

いつ退院できるか分からないって

あーちゃんはおじいちゃんと二人だけで暮らしてて、家族はおじいちゃんしかいないって。

でも、おじいちゃんは足が悪いから大変だって。
指も曲がって動かないって。

関節って何か分からないけどおじいちゃんの体が大変なのは分かった。

あーちゃんはいつもお買い物やお料理してるんだって。

お母さんがやる仕事をいつもおじいちゃんとガンバってるって。

夏休みの間だけでもうちで楽しく過ごして欲しかったって



「あーちゃんに会いに行く?」

お母さんがいきなり聞いてきた。

なんで?
会えるの?

頭の中がぐちゃぐちゃだけど、あーちゃんに会いたくてポロポロ泣きながら頷いた。

あーちゃんにごめんなさいしたかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

隣の芝生は青いのか 

夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。 「どうして、なんのために」 「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」 絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。 「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」 「なんで、どうして」 手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。 パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

欲しいものが手に入らないお話

奏穏朔良
恋愛
いつだって私が欲しいと望むものは手に入らなかった。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

おしどり夫婦の茶番

Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。 おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。 一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

処理中です...