人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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百叩き

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がなりたてる大公へと視線を向ける。
どうやら世話役のトリスが気に入らないと難癖をつけている。
斑柄の羽根が王家の世話役に相応しくないと乱暴にトリスの羽根を引っ張って貶していた。
悔しさに顔を歪ませると睨み付けて不敬だと騒いで突き飛ばす。
王家は天使族の象徴となる無地の白しか好まないと言い募る。
「せめて白く染めてこい。偽物だが我慢もきく」
大公のなされようを後ろで宰相が顔を真っ赤に睨んでいた。
アグネリアの隆々とした大柄さに気品がないと貶し、次は夫人の仮面に突っかかる。
顔を出さないのは不敬だと。
さっと夫人が外すと傷を揶揄する。
いつもなら誰かがキレてもおかしくないのに、皆は静かに見守っている。
ジェラルド伯は頭痛を堪えてこめかみを抑え、ロバート殿はブラウンと二人、通路に寄りかかって、そろそろだな、そうですね、と夫人と大公のやり取りを冷静に眺めていた。
回りの静けさがいつもと違った。
「これは夫を守った誇りですので」
「女性を盾にせねばならない程度の男か」
「大公は私のみならず夫を侮辱されますの?」
「ふん、女の趣味の悪いあんな男が、」
「うふふ、よろしくてよ?しかと挑戦を受けますわ」
次の瞬間、ぱーんっと甲高い弾ける音が周囲に響いた。
エヴとペリエ嬢はキョロキョロとしていたが回りの団員が壁になって隠している。
私は皆より背が高いのでことの成り行きはしっかり見えた。
顎をしゃくってわめく大公へ、夫人は隣のアグネリアの腰から素早く鞭を引き抜いて下から上に、大公の胸を斜めに叩きつけたのだ。
「な?なに、を?分かってるのか?大公である、私に」
「ご存じありません?クレインの法律では伴侶、子、及びに親族、家内の使用人に対しての侮辱は鞭打ちとして取り扱いしますのよ?ちなみに領民間でもこの法律は適用いたします。身内を侮辱されたら身分に関わりなく殴ってよしということです」
パシンパシン、と手のひらに鞭を叩いて後ろに転んだ大公を見下げている。
「他領へ赴く時はその地の法律を学ぶのは当然でございましょう?」
「妻君、その通りでございます。大まかに変わらないとは言え領地それぞれの法律がございます。身分に関係なくそれに従うのが我が国の法律です」
側の宰相も同意した。
「宰相、刑の立会人はよろしくて?大公の発言の証人も引き受けてくださいます?拒否されるなら大公と同意かしら?グリーブス団長にお願いいたしますけど」
「いえ、ぜひ、お引き受けします」
目に怒りを滾らせて大公を見つめている。
「宰相!やめさせろ!」
「今回は鞭打ちひとつで構いませんわ。さあ、アグネリア。次は私兵団団長への侮辱罪よ」
「はい」
嬉々とする夫人の声に、ぱっとアグネリアが飛び出して華奢な大公を掴み上げる。
抵抗するが体格のいいアグネリアに軽々とうつ伏せにひっくり返され後ろ手に組まされた両腕は片手ひとつで押さえ込まれている。
「や、やめろぉ」
下腹を持ち上げてその下にアグネリアは立てた片膝を突っ込むと大公の自慢のロングコートの裾を捲って子供が母親に折檻される時のような体勢に持ち込んだ。
さすがに大公への刑罰を望んだ宰相も驚きに目を白黒させてあとずさった。
「夫の団と私の団はそれぞれ独立していますの。罰則も別。私の団への侮辱はお尻百叩きです。アグネリア、疲れたら交代してあげるわ」
手元の鞭をふるふると振って交代はこれだと見せびらかす。
「ありがとうございます」
叫ぶのを無視して、男並みに大きな手のひらを高く上げて振り下ろした。
ぱちーん、ぱちーん、とゆっくり叩く。
打たれる度にひいひい喘いでいる。
「夫の団なら他領と同じく決闘なんですけどね。私は母親らしくお尻ぺんぺんにしましたの。うちの子供達は天使なので実生活でしたことありませんけどね?」
機嫌のいい声で話しているとアグネリアの手が止まった。
「…奥様、申し訳ありません。数えるのを忘れていました。いつも、数えてもらっていたので」
「あら、なら最初からね?」
「ふ、ふざ、けるなぁぁ」
「元気だから平気よ。アグネリア、がんばるのよ?交代を呼んであげるから」
「ありがとうございます。いーち、にー、さーん、よーん、ごー」
「やめろおおお!やめろぉ!許さんからなぁ!」
「拷問でもよろしくてよ?アグネリアはそちらの方が得意ですから。ね?」
「はい。爪剥がしから針刺し、骨砕き。鬼人族は罪人の拷問を得意としていますし、歴史があります。そちらにいたしましょうか?」
「や、やめ!」
「あ、また申し訳ありません。話していたら。次で何発目でしたか?」
「あらぁ、また最初からね?」
「分かりました。何度も申し訳ありません。そうだ。大公も、ご一緒に数えてくださいますか?次もまた忘れたら最初からです。いきますよ、大声でお願いします。いーち、にー、」
「やめろ!」
「大丈夫よ、また忘れたらいちからやればいいわ。大公もそのつもりでお数えにならないのよ。お気に召したのね?女に叩かれるのはお好み?手より鞭がお好きかしら?少しみみず腫が出来る程度よ?」
大きく笑って嘲った。
ジェラルド伯は後ろ姿しか見えないが頭痛は止んだようで腕を組んで通路には寄りかかってその様子を眺めていた。
「お兄様、お母様は?」
いかつい団員らの人波で見えないエヴとペリエ嬢は寄り添い合って大公と夫人の声にびくびくしていた。
「お怒りだよ」
少し背伸びをして夫人のやりようを眺めている。
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