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第一章※本編
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患者の引き取りと聞いてはっとした。
「もしかして、子供の患者。移民の子のことか?」
「ああ、旦那様から手紙でな。領内で引き取れないかと問い合わせが来て、引き取りに来た。今から会えるか?」
「いや、少し離れた役所に預けてる。今からじゃ遅い。」
急いで出発しても昼勤務の所長がいない。
勝手に引き取りはできない。
「じゃあ、明日な。暇はあるか?」
「いや、仕事だ。すまない。」
「まあ、いい。勝手に行くよ。紹介を書いてくれ」
「わかった。少し待っててくれるか。部屋で書いてくる。」
「ムスタファ、座っててください。大丈夫ですよ。」
マックスが持ち運びの羽ペンとインク、便箋をテーブルに並べた。
「ここで良いぞ。」
ドルが顎をしゃくる。
「用意が良い。」
「マックスは賢いからな。」
感心すると自慢気にドルが微笑んだ。
「さすが、俺の弟弟子だ。」
肩を叩くと恥ずかしそうに笑った。
「マックスはすごいもんね?私の自慢のお医者様だよ。」
笑うお嬢様は頭を撫でると、恥ずかしそうにしていた。
「だぁい好き。」
目を細めて笑うお嬢様につられて自分もだと答えた。
四人でチョコレートを摘まんで談笑したのち、宿まで送った。
「出発は?」
「お嬢様がいるから急ぎ戻りたい。あとは患者の容態次第だな。お前も最後に挨拶をしたいだろ?」
微笑みを浮かべて頷く。
「引き取るにしても、あの子の将来は?」
大事なことだというのに、失念していた。
ドルに任せれば大丈夫と気が大きくなっていた自分に恥じる。
「さあな。だが、何かしらある。お前くらいの能力があるなら俺の侍従にしてもいい。」
「私のお友だちにするの。ねー、マックス?」
「ふふ、それも良いかもしれませんね。お嬢様。」
やはり、まだ二人とも幼い。
「…夢物語だよな。現実的じゃない。」
「ん?大丈夫だろ?」
「あ?なんで?身分とか無理だろう?」
色も。
あの子は俺と同じ色。
行く宛が狭まるはずだ。
「今は別邸がある。そこで領内の病人の治療で人手はいくらでもほしい。世話人も必要だ。そちらで下働きも出来る。心配するな。安心して送り出せ。また困ったらこっちに送れ。」
心強い言葉に目頭が熱い。
「ありがとう。」
「お前は医者だ。悩まず治療すれば良い。気にするな?」
「ぐす、はい。」
また泣けてきた。
「ムスタファ、安心してね。私がお仕事いーっぱいがんばるから。たくさん雇ってあげる!いっぱい助けてあげてよ?」
「ふ、く、頼もしい。」
「うちの家族も雇ってもらってます。面倒見が良いので、ちゃんと可愛がりますよ。」
「お前なら信用できる。すごいよ、マックスは。世話が上手だから。」
幼いお嬢様のお相手はこいつしか出来なかったろう。
きっとどの子にも優しく接する。
メソメソして申し訳ない。
だが、往来の人目も気にならず、泣きながら3人に頭を下げて感謝した。
下げていたらお嬢様が頬に頬を当てて抱き締めてくれた。
「ムスタファはね、一人の命を救ったんだ。私の自慢のお医者様。大好きだよ?」
「ああ、本当に。…光栄でございます、お嬢様。…私は幸せです。」
帰る前にまた会う約束をして寮に戻った。
幸せだと思った。
食堂でアルグスとコンドラットに顔の腫れに気づかれて、目が赤いと絡まれた。
「女にでもフラれたか?はは、色男が台無しだな。」
笑うアルグスと睨むコンドラットを一瞥して、笑った。
「いや、告白されたよ。」
大切なお嬢様に。
今も自慢のお医者様と。
大好きだと。
初めてこいつらに柔らかく笑った。
ちょっかいかけられても気にならないほど舞い上がってる。
「は?」
怪訝に見つめられても口許がにやける。
さっと口許を手で覆って隠した。
「無駄だ。今は機嫌が良い。」
手を振って二人から離れた。
目を丸くしていただけで引き留められなかった。
フノーにもドルの来訪を伝えた。
ドルと親しくて仲が良かったと聞いている。
伝えるようにドルからも言われていた。
明日は休みだそうで宿に伺うそうだ。
「久々にドルに会いたいですね。相変わらず筋肉ダルマでしたか?」
自分の腕や腹回りをポンポンと叩いて、このくらいと見せて遊びながら伝える。
「はは、君も機嫌が良い。初めてそんな茶化してますね。」
「年下に合わせると、ですね。はは、は。」
「ああ、もしかしてヘーゼルの子も来てたんですか?」
「はい、大きくなってました。」
手で身長を見せると驚いていた。
「へえ、追い越されそうですね。」
「ええ、悔しいですがね。あは、は。」
追い越されても良い。
嬉しいくらいだ。
食堂で飯を食べてると知り合いの団体に囲まれた。
「雰囲気が違う!本当だったんだ!」
「おい!本命に告白されたって本当か?!」
「聞いてないぞ!だれだ?俺達の仲なのに!」
「いや、違うって。そうじゃない。はは、」
何を言われても顔が笑う。
驚くコイツらに詳しく話せと捕まる。
新しく何の話だと人が集まる。
「もう、やめろ。放っておけ。」
それでも口許がゆるい。
「おーい!ムスタファが笑ってるぞぉ!」
「はあ!!?おい、見せろ!」
「褐色の君が?!見たい!」
どやどやと囲まれて騒ぎになり、入り口から隊長らの怒鳴り声も。
「お前ら!喧嘩ならやめろ!」
「何事だ!」
「違いますよ!」
「鉄面皮のムスタファがご機嫌なんです!」
「笑ってます!」
「はあ?」
「本命の恋人が出来たそうです!」
隊員を分けいったうちの隊長が目の前に来た。
「本当だ。笑ってるぞぉ!」
わあーっと食堂が余計に騒がしくなった。
「もう笑ってませんよ。」
「口許がにやけてるぞ。」
慌てて口を手で覆うが、それでも目が笑ってると囃し立てられた。
その様も可笑しくて笑った。
「もしかして、子供の患者。移民の子のことか?」
「ああ、旦那様から手紙でな。領内で引き取れないかと問い合わせが来て、引き取りに来た。今から会えるか?」
「いや、少し離れた役所に預けてる。今からじゃ遅い。」
急いで出発しても昼勤務の所長がいない。
勝手に引き取りはできない。
「じゃあ、明日な。暇はあるか?」
「いや、仕事だ。すまない。」
「まあ、いい。勝手に行くよ。紹介を書いてくれ」
「わかった。少し待っててくれるか。部屋で書いてくる。」
「ムスタファ、座っててください。大丈夫ですよ。」
マックスが持ち運びの羽ペンとインク、便箋をテーブルに並べた。
「ここで良いぞ。」
ドルが顎をしゃくる。
「用意が良い。」
「マックスは賢いからな。」
感心すると自慢気にドルが微笑んだ。
「さすが、俺の弟弟子だ。」
肩を叩くと恥ずかしそうに笑った。
「マックスはすごいもんね?私の自慢のお医者様だよ。」
笑うお嬢様は頭を撫でると、恥ずかしそうにしていた。
「だぁい好き。」
目を細めて笑うお嬢様につられて自分もだと答えた。
四人でチョコレートを摘まんで談笑したのち、宿まで送った。
「出発は?」
「お嬢様がいるから急ぎ戻りたい。あとは患者の容態次第だな。お前も最後に挨拶をしたいだろ?」
微笑みを浮かべて頷く。
「引き取るにしても、あの子の将来は?」
大事なことだというのに、失念していた。
ドルに任せれば大丈夫と気が大きくなっていた自分に恥じる。
「さあな。だが、何かしらある。お前くらいの能力があるなら俺の侍従にしてもいい。」
「私のお友だちにするの。ねー、マックス?」
「ふふ、それも良いかもしれませんね。お嬢様。」
やはり、まだ二人とも幼い。
「…夢物語だよな。現実的じゃない。」
「ん?大丈夫だろ?」
「あ?なんで?身分とか無理だろう?」
色も。
あの子は俺と同じ色。
行く宛が狭まるはずだ。
「今は別邸がある。そこで領内の病人の治療で人手はいくらでもほしい。世話人も必要だ。そちらで下働きも出来る。心配するな。安心して送り出せ。また困ったらこっちに送れ。」
心強い言葉に目頭が熱い。
「ありがとう。」
「お前は医者だ。悩まず治療すれば良い。気にするな?」
「ぐす、はい。」
また泣けてきた。
「ムスタファ、安心してね。私がお仕事いーっぱいがんばるから。たくさん雇ってあげる!いっぱい助けてあげてよ?」
「ふ、く、頼もしい。」
「うちの家族も雇ってもらってます。面倒見が良いので、ちゃんと可愛がりますよ。」
「お前なら信用できる。すごいよ、マックスは。世話が上手だから。」
幼いお嬢様のお相手はこいつしか出来なかったろう。
きっとどの子にも優しく接する。
メソメソして申し訳ない。
だが、往来の人目も気にならず、泣きながら3人に頭を下げて感謝した。
下げていたらお嬢様が頬に頬を当てて抱き締めてくれた。
「ムスタファはね、一人の命を救ったんだ。私の自慢のお医者様。大好きだよ?」
「ああ、本当に。…光栄でございます、お嬢様。…私は幸せです。」
帰る前にまた会う約束をして寮に戻った。
幸せだと思った。
食堂でアルグスとコンドラットに顔の腫れに気づかれて、目が赤いと絡まれた。
「女にでもフラれたか?はは、色男が台無しだな。」
笑うアルグスと睨むコンドラットを一瞥して、笑った。
「いや、告白されたよ。」
大切なお嬢様に。
今も自慢のお医者様と。
大好きだと。
初めてこいつらに柔らかく笑った。
ちょっかいかけられても気にならないほど舞い上がってる。
「は?」
怪訝に見つめられても口許がにやける。
さっと口許を手で覆って隠した。
「無駄だ。今は機嫌が良い。」
手を振って二人から離れた。
目を丸くしていただけで引き留められなかった。
フノーにもドルの来訪を伝えた。
ドルと親しくて仲が良かったと聞いている。
伝えるようにドルからも言われていた。
明日は休みだそうで宿に伺うそうだ。
「久々にドルに会いたいですね。相変わらず筋肉ダルマでしたか?」
自分の腕や腹回りをポンポンと叩いて、このくらいと見せて遊びながら伝える。
「はは、君も機嫌が良い。初めてそんな茶化してますね。」
「年下に合わせると、ですね。はは、は。」
「ああ、もしかしてヘーゼルの子も来てたんですか?」
「はい、大きくなってました。」
手で身長を見せると驚いていた。
「へえ、追い越されそうですね。」
「ええ、悔しいですがね。あは、は。」
追い越されても良い。
嬉しいくらいだ。
食堂で飯を食べてると知り合いの団体に囲まれた。
「雰囲気が違う!本当だったんだ!」
「おい!本命に告白されたって本当か?!」
「聞いてないぞ!だれだ?俺達の仲なのに!」
「いや、違うって。そうじゃない。はは、」
何を言われても顔が笑う。
驚くコイツらに詳しく話せと捕まる。
新しく何の話だと人が集まる。
「もう、やめろ。放っておけ。」
それでも口許がゆるい。
「おーい!ムスタファが笑ってるぞぉ!」
「はあ!!?おい、見せろ!」
「褐色の君が?!見たい!」
どやどやと囲まれて騒ぎになり、入り口から隊長らの怒鳴り声も。
「お前ら!喧嘩ならやめろ!」
「何事だ!」
「違いますよ!」
「鉄面皮のムスタファがご機嫌なんです!」
「笑ってます!」
「はあ?」
「本命の恋人が出来たそうです!」
隊員を分けいったうちの隊長が目の前に来た。
「本当だ。笑ってるぞぉ!」
わあーっと食堂が余計に騒がしくなった。
「もう笑ってませんよ。」
「口許がにやけてるぞ。」
慌てて口を手で覆うが、それでも目が笑ってると囃し立てられた。
その様も可笑しくて笑った。
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