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足が重いわぁ……
前は楽しかったのに。
夕方ごろ、手土産片手にベイル部隊長のアパートの扉を軽くノックして勝手に開ける。
俺が来る頃、鍵を開けっ放しにするのはいつものことだ。
「お邪魔しますよー、ベイルぶ、たい」
「ぎゃー!本物!」
「うわぁ!本当に死神だぁ!」
「ベイル兄ちゃん!やべぇ、死神が来た!」
なんだ?
10歳から少し小さいくらいのガキがごろごろ。
5人?もっといる?
叫び声にぎょっとしてるとガキどもが玄関の俺を突き飛ばして外へ逃げていった。
茫然とそれを眺めて走る後ろ姿を見送った。
「……なんだ、あれ?……あ、くそ、」
袋に入れていた酒が壁に当たったのか割れてる。
玄関前は酒でびちゃびちゃだし、くせぇし。
悪態しか出ねぇや。
「チッ」
中に入ろうとすると子供の泣き声。
長椅子の下に頭隠して置き去りにされたチビがメソメソしてる。
なんだこりゃぁ。
とりあえず親戚か近所の子供だろうけどさ。
部屋はチビが泣いてるだけでベイル部隊長はいないし、ビビってるチビの側に寄るのも躊躇われて掃除もせずに帰ることにした。
「ロニー!おい!」
階段を下りてすぐに水桶を一つ持ったベイル部隊長と会った。
「なんで帰ってる?」
反対方向へ歩いてるからすぐに察した。
「帰ります。こんな格好ですし、手土産の酒も割れましたし。すいません、玄関も汚したままなんですけど」
酒がズボンにかかってワインの色に染まった。
濡れて寒いし気持ち悪いし。
もう帰りたい。
俺の姿を見てすぐに眉をひそめた。
「そんなの気にしなくていい。着替えくらい貸す」
腕を捕まれて振り払った。
「おい、待て」
「帰りたいんですよっ。今日、無理して相手したから疲れましたしっ」
語気荒くそう告げると追いかけてきた手が引いて、イライラが少し落ち着いた。
「やっぱり部屋にカギをかけた方がいいですよ。さっき入ったら子供がうじゃうじゃ出てきましたから」
「俺の部屋に子供がいたのか?」
「10歳くらいの子供ですね。俺が部屋に入ると7、8人くらい外に逃げました」
部屋に一番小さいのが置き去りで1人で泣いてますと伝えると焦った顔で自分の部屋を見上げた。
「親戚か何か知りませんけど泣かせてすいませんね」
「悪い。甥っ子達だと思う。今日は来るなと言ったのに」
「そうですか。じゃあ、」
目の前に塞がるベイル部隊長を避けたのに手をかざして止められた。
「ロニー、帰ることはない。上がれ」
「置き去りのチビすけがあんだけ泣いてるのに側に寄れませんよ」
そう言うとムッとしてるが納得した気配。
とっとと子供の側に行け。
今日は疲れてるんだ。
あのガキどもの甲高い叫び声で耳は痛くてうんざりしてる。
昼間はアリオンへの嫉妬で吐きそうくらいムカムカするし、親父にベイル部隊長のちょっかいを聞かれて頭痛い。
一番はこの猿の相手だよ。
この糸目の猿。
ちょっと可哀想と思って構っただけなのに馬鹿じゃねぇの?
でも一番の馬鹿は俺。
バレバレな舐めた態度にベイル部隊長の目がつり上がっていく。
「……上官命令だ。残れ」
「はぁぁぁ?!」
「第一小隊所属ロニー副官。第二部隊隊長からの命令だ。分かったら返事しろ」
「……はい」
正式名称で呼ぶなら本気かよ。
プライベートでも、上官の命令は絶対……
渋々、上官の後ろをついていく。
部屋に行くとチビはやっぱり俺を見て怖がった。
ベイル部隊長が抱っこして、その首にしがみついて泣いてる。
「送ってくる。お前は着替えとけ」
頭痛と胸の気持ち悪さを堪えながら頷いた。
態度が悪い自覚はあるが、ふて腐れた態度と眉間のシワが取れない。
割れた酒瓶は空の水桶に突っ込んで、さっさと真っ裸。
タンスを漁って適当なボロい服を借りた。
帰って来る前に玄関にぶちまけたびちゃびちゃの酒も掃除。
ズボンも洗いに行くかと考えていたら、ヘルメット代わりに鍋を頭に被せて棒を振り回すガキの集団。
さっきのガキども。
チビを返せと怒鳴っていた。
また家主の不在に勝手に踏み込んでチビすけを探すから呆れた。
おかげで頭が痛い。
こっちの話は聞かねぇし。
ベイル部隊長が送ったと言ってるのに。
本当に馬鹿なガキは嫌いだ。
ガキどもの騒ぎにアパートの住民が集まってまた喧騒が大きくなった。
遠巻きに睨む大人達と俺を囲んだまま棒を向けて怒鳴るガキども。
うんざりした俺はこの場を撤退するつもりで部屋に戻った。
サイドテーブルに置きっぱなしにしてた財布を握ってワインで汚れた服を片手に外に出ようとしたら、ガキどもが逃げるなと立ち塞がってやがる。
「何度も言うがベイル部隊長が送っていった」
「嘘だぁ!会わなかったもん!どこに行ったんだよ!?」
聞いてないから知らん。
黙ってるとやっぱり嘘つき、どこにやったと決めつけて腰や腕に棒を叩きつけてくる。
ダグの一撃よりましだけど、数が多くてさばけないし、さすがにいてぇわ。
「狭い部屋で暴れんな。散らかる」
「うるせぇ!退治してやる!」
振り回した棒がチェストの酒瓶に当たって雪崩れた。
その拍子に何本か割れて、かっとなった。
「いい加減にしろ!このくそガキども!」
「うわぁぁっ!」
俺の私兵団で鍛えた怒号に、ガキどもは号泣してへたりこむ奴と余計にテンパって振り回すガキに分かれた。
「あぶねぇからガラスに寄るな!」
座り込んでるのは放って急いでガラスを踏みそうなガキを引っ張った。
「足元を見ろ!怪我するぞ!」
こいつら、裸足か薄いサンダルみたいな革靴だ。
踏んだらざっくりやる。
「あだっ!……いってえ、」
俺が心配してるのに、話を聞いていない半狂乱のガキが俺の顔を棒で殴って、辺りどころが悪かった。
瞼が切れてボタボタと血が出た。
鮮血も飛んでガキどもも玄関から覗いていた住民らも盛大に叫んで慌てている。
「あー、もう。めんどくせぇ」
皮膚が薄いからかなり血が出るのに。
「怪我するから部屋から出ろ。ガラスの片付けするから」
ギャーギャー泣いて聞いていねぇ。
通路も大騒ぎでうるさい。
子供もまともに扱えないのか、俺は。
アリオンなら、ルガンダ兄さんなら。
そんなことがよぎって、瞼の怪我とは関係のない頭痛でため息が出た。
「何の騒ぎだ!」
通路の階段辺りから怒号が響いた。
今頃、家主の登場だし。
おせぇよ。
「ロニー!お前、怪我したのか?!」
「あんた達!何してるのよ!」
「きゃぁ!血が出てる!」
「大変!」
……お宅らはどなた?
前は楽しかったのに。
夕方ごろ、手土産片手にベイル部隊長のアパートの扉を軽くノックして勝手に開ける。
俺が来る頃、鍵を開けっ放しにするのはいつものことだ。
「お邪魔しますよー、ベイルぶ、たい」
「ぎゃー!本物!」
「うわぁ!本当に死神だぁ!」
「ベイル兄ちゃん!やべぇ、死神が来た!」
なんだ?
10歳から少し小さいくらいのガキがごろごろ。
5人?もっといる?
叫び声にぎょっとしてるとガキどもが玄関の俺を突き飛ばして外へ逃げていった。
茫然とそれを眺めて走る後ろ姿を見送った。
「……なんだ、あれ?……あ、くそ、」
袋に入れていた酒が壁に当たったのか割れてる。
玄関前は酒でびちゃびちゃだし、くせぇし。
悪態しか出ねぇや。
「チッ」
中に入ろうとすると子供の泣き声。
長椅子の下に頭隠して置き去りにされたチビがメソメソしてる。
なんだこりゃぁ。
とりあえず親戚か近所の子供だろうけどさ。
部屋はチビが泣いてるだけでベイル部隊長はいないし、ビビってるチビの側に寄るのも躊躇われて掃除もせずに帰ることにした。
「ロニー!おい!」
階段を下りてすぐに水桶を一つ持ったベイル部隊長と会った。
「なんで帰ってる?」
反対方向へ歩いてるからすぐに察した。
「帰ります。こんな格好ですし、手土産の酒も割れましたし。すいません、玄関も汚したままなんですけど」
酒がズボンにかかってワインの色に染まった。
濡れて寒いし気持ち悪いし。
もう帰りたい。
俺の姿を見てすぐに眉をひそめた。
「そんなの気にしなくていい。着替えくらい貸す」
腕を捕まれて振り払った。
「おい、待て」
「帰りたいんですよっ。今日、無理して相手したから疲れましたしっ」
語気荒くそう告げると追いかけてきた手が引いて、イライラが少し落ち着いた。
「やっぱり部屋にカギをかけた方がいいですよ。さっき入ったら子供がうじゃうじゃ出てきましたから」
「俺の部屋に子供がいたのか?」
「10歳くらいの子供ですね。俺が部屋に入ると7、8人くらい外に逃げました」
部屋に一番小さいのが置き去りで1人で泣いてますと伝えると焦った顔で自分の部屋を見上げた。
「親戚か何か知りませんけど泣かせてすいませんね」
「悪い。甥っ子達だと思う。今日は来るなと言ったのに」
「そうですか。じゃあ、」
目の前に塞がるベイル部隊長を避けたのに手をかざして止められた。
「ロニー、帰ることはない。上がれ」
「置き去りのチビすけがあんだけ泣いてるのに側に寄れませんよ」
そう言うとムッとしてるが納得した気配。
とっとと子供の側に行け。
今日は疲れてるんだ。
あのガキどもの甲高い叫び声で耳は痛くてうんざりしてる。
昼間はアリオンへの嫉妬で吐きそうくらいムカムカするし、親父にベイル部隊長のちょっかいを聞かれて頭痛い。
一番はこの猿の相手だよ。
この糸目の猿。
ちょっと可哀想と思って構っただけなのに馬鹿じゃねぇの?
でも一番の馬鹿は俺。
バレバレな舐めた態度にベイル部隊長の目がつり上がっていく。
「……上官命令だ。残れ」
「はぁぁぁ?!」
「第一小隊所属ロニー副官。第二部隊隊長からの命令だ。分かったら返事しろ」
「……はい」
正式名称で呼ぶなら本気かよ。
プライベートでも、上官の命令は絶対……
渋々、上官の後ろをついていく。
部屋に行くとチビはやっぱり俺を見て怖がった。
ベイル部隊長が抱っこして、その首にしがみついて泣いてる。
「送ってくる。お前は着替えとけ」
頭痛と胸の気持ち悪さを堪えながら頷いた。
態度が悪い自覚はあるが、ふて腐れた態度と眉間のシワが取れない。
割れた酒瓶は空の水桶に突っ込んで、さっさと真っ裸。
タンスを漁って適当なボロい服を借りた。
帰って来る前に玄関にぶちまけたびちゃびちゃの酒も掃除。
ズボンも洗いに行くかと考えていたら、ヘルメット代わりに鍋を頭に被せて棒を振り回すガキの集団。
さっきのガキども。
チビを返せと怒鳴っていた。
また家主の不在に勝手に踏み込んでチビすけを探すから呆れた。
おかげで頭が痛い。
こっちの話は聞かねぇし。
ベイル部隊長が送ったと言ってるのに。
本当に馬鹿なガキは嫌いだ。
ガキどもの騒ぎにアパートの住民が集まってまた喧騒が大きくなった。
遠巻きに睨む大人達と俺を囲んだまま棒を向けて怒鳴るガキども。
うんざりした俺はこの場を撤退するつもりで部屋に戻った。
サイドテーブルに置きっぱなしにしてた財布を握ってワインで汚れた服を片手に外に出ようとしたら、ガキどもが逃げるなと立ち塞がってやがる。
「何度も言うがベイル部隊長が送っていった」
「嘘だぁ!会わなかったもん!どこに行ったんだよ!?」
聞いてないから知らん。
黙ってるとやっぱり嘘つき、どこにやったと決めつけて腰や腕に棒を叩きつけてくる。
ダグの一撃よりましだけど、数が多くてさばけないし、さすがにいてぇわ。
「狭い部屋で暴れんな。散らかる」
「うるせぇ!退治してやる!」
振り回した棒がチェストの酒瓶に当たって雪崩れた。
その拍子に何本か割れて、かっとなった。
「いい加減にしろ!このくそガキども!」
「うわぁぁっ!」
俺の私兵団で鍛えた怒号に、ガキどもは号泣してへたりこむ奴と余計にテンパって振り回すガキに分かれた。
「あぶねぇからガラスに寄るな!」
座り込んでるのは放って急いでガラスを踏みそうなガキを引っ張った。
「足元を見ろ!怪我するぞ!」
こいつら、裸足か薄いサンダルみたいな革靴だ。
踏んだらざっくりやる。
「あだっ!……いってえ、」
俺が心配してるのに、話を聞いていない半狂乱のガキが俺の顔を棒で殴って、辺りどころが悪かった。
瞼が切れてボタボタと血が出た。
鮮血も飛んでガキどもも玄関から覗いていた住民らも盛大に叫んで慌てている。
「あー、もう。めんどくせぇ」
皮膚が薄いからかなり血が出るのに。
「怪我するから部屋から出ろ。ガラスの片付けするから」
ギャーギャー泣いて聞いていねぇ。
通路も大騒ぎでうるさい。
子供もまともに扱えないのか、俺は。
アリオンなら、ルガンダ兄さんなら。
そんなことがよぎって、瞼の怪我とは関係のない頭痛でため息が出た。
「何の騒ぎだ!」
通路の階段辺りから怒号が響いた。
今頃、家主の登場だし。
おせぇよ。
「ロニー!お前、怪我したのか?!」
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