祖母の家族愛

有馬れい

文字の大きさ
1 / 1

祖母の家族愛

しおりを挟む
「今年のいかなごのくぎ煮も美味しいね!」毎春私が祖母に向けて言う言葉である。私が物心ついた頃から、祖母は毎年必ずいかなごのくぎ煮を炊いている。例え自分が治らない病気になっても。



悲しい現実を突き付けられたのは、一昨年秋のこと。市の健康診断の結果を聞いてくる、と言って家を出た祖母が帰ってきた時の顔色は、見たことも無い程に真っ青であった。祖母は、慢性腎不全に陥っていたのである。祖母は泣きながら、実は何年も前から腎臓が悪かったことを家族に告げた。1人で隠し続け、辛かったであろう。祖母は、もう少しで人工透析をしなければならないレベルの腎不全にまで陥っており、常に貧血状態であると主治医から私に話があった。祖母は、立っているだけでもフラフラしてしんどい状態であったのに、それを家族に隠し続けていたのである。



そんな祖母が決して辞めないこと、それが、毎春必ず行う【いかなごのくぎ煮炊き】である。いかなごのくぎ煮は、目を離せない料理である。立っているだけでも辛い祖母が、何十分もかけて、いかなごのくぎ煮を炊くのだ。どうして立っているだけでも辛いのに、炊くのをやめないのかと訪ねたことがある。すると祖母は、「みんなが美味しいねって言ってくれるのが嬉しいんだよ。」と笑顔で話してくれた。



祖母は、いかなごのくぎ煮を炊いても自分で食べることは無い。自分が食べると、家族が食べる分が減るからだそうだ。いかなごのくぎ煮は、祖母の家族への愛が詰まっている。私は、いかなごのくぎ煮を食べる度に涙がこぼれそうになる。【いかなごのくぎ煮】という料理ひとつで、こんなに家族の愛が感じられるなんて、私は幸せ者である。



祖母の想いを受け継ぐ為に、今年から祖母のいかなごのくぎ煮の炊き方を学んだ。私がこれから、祖母の想いを引き継いでいく。いかなごのくぎ煮は、私達家族を繋いでくれる、とても大切な料理である。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

処理中です...