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新・アリとキリギリス
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テレビの地方版ニュースで『座右の寓話』と言う本の紹介があった。古来より伝わっている各国の寓話を収録し、それぞれの寓話が示している教訓に著者独自の解釈を加え、読者に伝えているものだそうだ。ニュースを見ていると、収録されている寓話の中にイソップ童話の『アリとキリギリス』もある事が分かった。どのようにアレンジされているのかまでは紹介されなかったが、『アリとキリギリス』自体は説明の必要もないほど有名な寓話だと思う。夏の間せっせと働くアリと、バイオリンばかり弾いている(私が知っている話ではそうだ)キリギリスのお話。働くべき時に真面目に働いた者は報われるが、遊び惚けていた者はいずれ食い詰めて行き倒れると言うお話である。子供の頃の私はそのまんま素直に受け止めていた。しかし二十代後半頃からの私は、この話について個人的に思う事があった。それについて書く前に、もしもその個人的に思う事が『座右の寓話』と被っていたらいけないから、購読して大丈夫かどうか確かめようと思っていた。
結局、色々取り紛れて購読していない。多分被ってないだろう。だから見切り発車で書く事にする。
アリとキリギリス
暑い暑い日が続く夏。今日も猛暑日になりそうなその日も、働きアリは、いずれ来る厳しい冬に備えてせっせと食糧集めに奔走していました。今日は東へ明日は西へと、文字通り東奔西走していたのです。そんな働きアリに目もくれず、来る日も来る日もバイオリンを弾いてばかりいる者がいました。キリギリスです。昼間は常に弾いているだけあって腕前は見上げたものでしたが、いつもいつもこんなにバイオリン漬けで大丈夫だろうか、とアリは心配になりました。それでなくとも炎天下にずっと立っていたら、いえ立っていなかったとしても体に悪そうです。
「キリギリスさん。良かったら少し木陰で休みませんか?」
しかしアリの勧めはバイオリンの豊かな音色にかき消されて、キリギリスには届きませんでした。そもそもが、忘我の境地にいるようでした。ちょっと思う所を感じたアリは、倒れない限りは…と思って諦めました。
やがて夏が終わり、訪れた秋も去り、冬が来ました。今年は一層雪深く、暖かい家の外には、夏の頃には想像も出来なかったほど凍てついた銀世界がありました。夏の間せっせと働いていたおかげで、働きアリの一家が冬の間困る事はなさそうでした。
誰も、アリの家を訪れる者はいませんでした。
キリギリスは、秋にデビューリサイタルを開いて世紀の天才と騒がれ、今や売れっ子のバイオリニストとして世界中を駆け回っています。来る日も来る日もバイオリンを弾いていたのは、キリギリスにとっては弾かない自分など有り得なかったから。それなくしては生きられなかったから。そしていずれその才能で世界を席巻する運命だったから。つまり天才だったからなのです。その演奏は聴衆を深く魅了し、音楽史に偉大な金字塔を打ち立て、キリギリスは死後も残る名声を築きました。
キリギリスの成功を耳にして、
「今思えば、あの方は、やはりただ者じゃなかったね…」
と感慨深く頷いたアリは、その後も良く働いて、それなりに裕福に、家族と一緒に幸せに暮らしました。めでたしめでたし。
……これで良くないですか?
(注)これを書いた後に書店で確認してみると、「アリとキリギリス」ではなく「アリとセミ」として紹介されていました。リサーチ不足で申し訳ありません。
結局、色々取り紛れて購読していない。多分被ってないだろう。だから見切り発車で書く事にする。
アリとキリギリス
暑い暑い日が続く夏。今日も猛暑日になりそうなその日も、働きアリは、いずれ来る厳しい冬に備えてせっせと食糧集めに奔走していました。今日は東へ明日は西へと、文字通り東奔西走していたのです。そんな働きアリに目もくれず、来る日も来る日もバイオリンを弾いてばかりいる者がいました。キリギリスです。昼間は常に弾いているだけあって腕前は見上げたものでしたが、いつもいつもこんなにバイオリン漬けで大丈夫だろうか、とアリは心配になりました。それでなくとも炎天下にずっと立っていたら、いえ立っていなかったとしても体に悪そうです。
「キリギリスさん。良かったら少し木陰で休みませんか?」
しかしアリの勧めはバイオリンの豊かな音色にかき消されて、キリギリスには届きませんでした。そもそもが、忘我の境地にいるようでした。ちょっと思う所を感じたアリは、倒れない限りは…と思って諦めました。
やがて夏が終わり、訪れた秋も去り、冬が来ました。今年は一層雪深く、暖かい家の外には、夏の頃には想像も出来なかったほど凍てついた銀世界がありました。夏の間せっせと働いていたおかげで、働きアリの一家が冬の間困る事はなさそうでした。
誰も、アリの家を訪れる者はいませんでした。
キリギリスは、秋にデビューリサイタルを開いて世紀の天才と騒がれ、今や売れっ子のバイオリニストとして世界中を駆け回っています。来る日も来る日もバイオリンを弾いていたのは、キリギリスにとっては弾かない自分など有り得なかったから。それなくしては生きられなかったから。そしていずれその才能で世界を席巻する運命だったから。つまり天才だったからなのです。その演奏は聴衆を深く魅了し、音楽史に偉大な金字塔を打ち立て、キリギリスは死後も残る名声を築きました。
キリギリスの成功を耳にして、
「今思えば、あの方は、やはりただ者じゃなかったね…」
と感慨深く頷いたアリは、その後も良く働いて、それなりに裕福に、家族と一緒に幸せに暮らしました。めでたしめでたし。
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(注)これを書いた後に書店で確認してみると、「アリとキリギリス」ではなく「アリとセミ」として紹介されていました。リサーチ不足で申し訳ありません。
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