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風雅の都
第二話 戴冠式
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「瀬兎様、そろそろ儀式用の衣装にお着替え下さい。」
稷に呼ばれ、私は華流亞との話を止めて部屋に戻る。大広間を出て廊下に入り、右に曲がったずっと奥にあるのが私の部屋。一番奥だという事もあり、この辺りは薄暗く滅多に誰も立ち寄らない。だから芹も稷もこの部屋でだけは敬語を使わず話すし、私の事を「瀬兎」と呼び捨てにする。
「さぁ瀬兎、華流亞よりも綺麗になって驚かせてやるよ!」
「私じゃそんなに綺麗になれないわよ」
「そんな事ないわ!」
と張り切っている稷に戴冠式用の服に着替えさせてもらいながら、今まで私を馬鹿にしていた民を見返すための霊力を貯め始めた。目を閉じて、霊力の流れを感じ、大きく息を吸うイメージで体内に霊力を送り込む。そうすると、自然と活力が溢れ、やる気が出てくる。絶対に失敗しないと予感する。
「さぁ出来た。崩さないように気をつけてね」
「この頭の重さどうにか出来ないの?」
沢山の柄の入った厚手の着物を何枚も羽織るだけならまだ我慢出来る。だけどこの頭の重さだけは文句を言ってしまう。少しでも揺らしたら、頭ごと落ちそうな重さだ。
「仕方ないわ。王の象徴だもの。式の途中で華流亞に渡せば軽くなるわよ」
「そうね…」
「さ、早く!着替えるのに時間をかけ過ぎてしまったわ」
気づけば式の時間が迫っていた。私達は急いで部屋を出て大広間に戻る。
芹が壁際で華流亞に話しかけられていた。
「何を話しているのかしら」
それにしても愛想笑いが酷い。嫌々聞いているのがすぐにばれる程では無いけど、明らかに話を聞く気がない事が伝わって来る。幸い華流亞は気づいていないようだった。
「芹、私も着替えて来るから瀬兎様の事よろしく」
「あぁ、任せておけ」
稷が二人の間に割って入った。流石だ。私にはそんな事をする勇気が無かった。この場にいたのが私だけだったら、芹はもう少し華流亞の話を聞く羽目になっていただろう。芹の気持ちを読んだのか、稷が入ってくれて、芹も良かったらしい。ごめんなさいね。頼りない主人で。
さて、そんなこんなで始まった戴冠式。
華流亞の護衛が彼女について民に話し始めた。
「このお方は正当な王家の血筋であり、瀬兎様とは違い王族しか使えない祝福の力を持っています」
と、こんな感じの内容だったかな?
ばーか、王家の血筋じゃなくても霊力が高ければ祝福の力を使えるんだよ。まぁ、霊力が高ければと言っても、そんなに多いわけじゃないしね。
この世には霊力を測る道具があって、生まれた時に測った霊力値は死ぬまでそうそう変わらない。霊力値によって闘級分けされていて、大体の人間がC級で、ほとんど霊力を持っていないと言える。その上にB・Aと続いてく。
それに対し、妖はB級が最低でそれ以下は存在しないし、妖のB級は人間のA級とほぼ同等の力を持っている者が多い。
ただ、A級まで行けば人間にしては強く、ごく稀に生まれるS級は一騎当千の力を持っていてもおかしくない。王族の血をしっかり引いていれば、A級が普通で、それ以上でないと祝福の力は使えない。つまり私はA級だ。でもこれは、公になっていない、私が強いと言ったところでみんな信じてはくれない。だから最後の日である今日は、盛大にやろうと思っている。
「それでは、瀬兎様より、華流亞様に王の証が授与されます。」
前に出るように言われ、私は華流亞と共に前に出る。そして華流亞が私の前に跪き、頭を下げた。私は自分の頭からそれを取り、華流亞の頭に乗せた。
「この国の未来を貴方に託します」
これで後は民に、王が変わったよ、という祝福をするだけだ。そう思った時、華流亞が思いがけない事を言い、私をイラつかせた。
「謹んでお受けいたします。先王瀬兎様」
先王…その言葉は私の心によく響いた。私は完全に過去の王になったのだ。民も王が変わったことに奇声を発して喜んでいる。私は自分の中の血の気が引いていくのを感じた。
あぁ…いつもそうだ。私が良いことをしても、民はいい顔をしない。私が王家の人間でない事も、ここにいていい人間ではない事も、私が一番良く分かっているさ。でも疑問に思うんだ。王家の人間が失敗をした時、それを不満に思うものはいないのに、どうして私だとダメなの?もし、本物の王が人間を絶滅させると言ったらそれに従うの?長く生きる妖と違って人間の王はすぐ変わるのだから、どんな時代があってもおかしくないはずなのに、決められた王が勢力を握るだけじゃ、貴方たちの求めるものは永遠に訪れないのに…
どれだけ武力に優れていても、頭の回転が速くても、王家ではないからと言って排除される。その点、お義父様はこんな私を育ててくれたし、王にまでしてくれた。こんな屈辱を味わうようになったのは、お義父様が亡くなられてからだ。
うん、決めた。元々私を見下す馬鹿どもを見返そうと思っていたから関係ないけど、これではっきりした。今の私が出来る盛大な祝福をお見舞いしてやるわ!
「それでは瀬兎様より、祝福を」
笑っていられるのも今のうちよ。
私は、祭壇に立ち、手を胸の前で組み、静かに心を鎮めた。終わった後、余裕に見せるために動けるだけの霊力は残して、組んだ手の方へ霊力を集める。
「初代京華国王、風雅の都の長、月姫の名の下に平和な国が続きますよう。新しき王の誕生に、祝福を」
組んでいた手を高く上げ、大きく広げる。ふわっと舞った私の霊力が虹色に輝き出し、式を見に来た民の真上を飛ぶ。広く大きく遠くまで、一番後ろで見ている妖達にも届くように。
「うわぁー」
中央の辺りで子供の声がした。それに続くようにみんな一斉に声を上げる。
「凄い。こんなに凄い祝福は初めて見た」
喜んでいる民を後にし、私は自席に戻る。その時華流亞の不満そうな顔が目に入った。どうよ、凄いでしょう?悔しいでしょう?と微笑みかけた。すると、いっそう不満が増したのか、いつもの可愛らしい顔からは想像もつかないくらい歪んだ顔をして、怒っている。今にも人を殺してしまいそうなほどに。
後の無くなった華流亞は顔を整え祭壇に向かった。普通、前王より霊力が低いと、無能な王と認識される。だから前王は少しだけ霊力を弱めて祝福するのだが、私はそんなに優しくはない。これは私と華流亞の戦争なのよ!
祭壇に立った華流亞は服から何かを取り出した。指輪だ。元々の計画では霊力を溜め込んだ指輪を使い、私と差をつけるつもりだったのだろうが、そんなことを言っていられる余裕は今の華流亞にはない。私より霊力が低いと見なされれば、この先馬鹿にされる未来しかないのだから、指輪を使う他ないのだ。
我ながら酷いとは思うけどね。最後くらい楽しみたいじゃない?
華流亞は指輪をはめ、私と同じように手を組んだ。
「この先のこの国の未来を守り、平和な国を作ることをここに誓います。」
華流亞が手を上げ、霊力を飛ばしたのと同時に、霊力を溜め込んでいた指輪の宝石が弾け飛び、祝福の風に乗って民の元に落ちた。芹と稷にはそれが見え、危ないと感じたが、私の霊力によって守られている民が怪我をすることは無かった。ここまで計算通り。
まぁ私の仕掛けた勝負は、多少のズルをした華流亞が勝った。悔しくはない、だってあの子の化けの皮を剥がせたのだから。ズルをしてでも私に勝ちたい卑怯な子。少数の民には気づかれたでしょうから、これからが楽しみだわ。
でもこの勝負がのちに、私達三人を引き離すことになるなんて、この時は想像も付かなかった。
稷に呼ばれ、私は華流亞との話を止めて部屋に戻る。大広間を出て廊下に入り、右に曲がったずっと奥にあるのが私の部屋。一番奥だという事もあり、この辺りは薄暗く滅多に誰も立ち寄らない。だから芹も稷もこの部屋でだけは敬語を使わず話すし、私の事を「瀬兎」と呼び捨てにする。
「さぁ瀬兎、華流亞よりも綺麗になって驚かせてやるよ!」
「私じゃそんなに綺麗になれないわよ」
「そんな事ないわ!」
と張り切っている稷に戴冠式用の服に着替えさせてもらいながら、今まで私を馬鹿にしていた民を見返すための霊力を貯め始めた。目を閉じて、霊力の流れを感じ、大きく息を吸うイメージで体内に霊力を送り込む。そうすると、自然と活力が溢れ、やる気が出てくる。絶対に失敗しないと予感する。
「さぁ出来た。崩さないように気をつけてね」
「この頭の重さどうにか出来ないの?」
沢山の柄の入った厚手の着物を何枚も羽織るだけならまだ我慢出来る。だけどこの頭の重さだけは文句を言ってしまう。少しでも揺らしたら、頭ごと落ちそうな重さだ。
「仕方ないわ。王の象徴だもの。式の途中で華流亞に渡せば軽くなるわよ」
「そうね…」
「さ、早く!着替えるのに時間をかけ過ぎてしまったわ」
気づけば式の時間が迫っていた。私達は急いで部屋を出て大広間に戻る。
芹が壁際で華流亞に話しかけられていた。
「何を話しているのかしら」
それにしても愛想笑いが酷い。嫌々聞いているのがすぐにばれる程では無いけど、明らかに話を聞く気がない事が伝わって来る。幸い華流亞は気づいていないようだった。
「芹、私も着替えて来るから瀬兎様の事よろしく」
「あぁ、任せておけ」
稷が二人の間に割って入った。流石だ。私にはそんな事をする勇気が無かった。この場にいたのが私だけだったら、芹はもう少し華流亞の話を聞く羽目になっていただろう。芹の気持ちを読んだのか、稷が入ってくれて、芹も良かったらしい。ごめんなさいね。頼りない主人で。
さて、そんなこんなで始まった戴冠式。
華流亞の護衛が彼女について民に話し始めた。
「このお方は正当な王家の血筋であり、瀬兎様とは違い王族しか使えない祝福の力を持っています」
と、こんな感じの内容だったかな?
ばーか、王家の血筋じゃなくても霊力が高ければ祝福の力を使えるんだよ。まぁ、霊力が高ければと言っても、そんなに多いわけじゃないしね。
この世には霊力を測る道具があって、生まれた時に測った霊力値は死ぬまでそうそう変わらない。霊力値によって闘級分けされていて、大体の人間がC級で、ほとんど霊力を持っていないと言える。その上にB・Aと続いてく。
それに対し、妖はB級が最低でそれ以下は存在しないし、妖のB級は人間のA級とほぼ同等の力を持っている者が多い。
ただ、A級まで行けば人間にしては強く、ごく稀に生まれるS級は一騎当千の力を持っていてもおかしくない。王族の血をしっかり引いていれば、A級が普通で、それ以上でないと祝福の力は使えない。つまり私はA級だ。でもこれは、公になっていない、私が強いと言ったところでみんな信じてはくれない。だから最後の日である今日は、盛大にやろうと思っている。
「それでは、瀬兎様より、華流亞様に王の証が授与されます。」
前に出るように言われ、私は華流亞と共に前に出る。そして華流亞が私の前に跪き、頭を下げた。私は自分の頭からそれを取り、華流亞の頭に乗せた。
「この国の未来を貴方に託します」
これで後は民に、王が変わったよ、という祝福をするだけだ。そう思った時、華流亞が思いがけない事を言い、私をイラつかせた。
「謹んでお受けいたします。先王瀬兎様」
先王…その言葉は私の心によく響いた。私は完全に過去の王になったのだ。民も王が変わったことに奇声を発して喜んでいる。私は自分の中の血の気が引いていくのを感じた。
あぁ…いつもそうだ。私が良いことをしても、民はいい顔をしない。私が王家の人間でない事も、ここにいていい人間ではない事も、私が一番良く分かっているさ。でも疑問に思うんだ。王家の人間が失敗をした時、それを不満に思うものはいないのに、どうして私だとダメなの?もし、本物の王が人間を絶滅させると言ったらそれに従うの?長く生きる妖と違って人間の王はすぐ変わるのだから、どんな時代があってもおかしくないはずなのに、決められた王が勢力を握るだけじゃ、貴方たちの求めるものは永遠に訪れないのに…
どれだけ武力に優れていても、頭の回転が速くても、王家ではないからと言って排除される。その点、お義父様はこんな私を育ててくれたし、王にまでしてくれた。こんな屈辱を味わうようになったのは、お義父様が亡くなられてからだ。
うん、決めた。元々私を見下す馬鹿どもを見返そうと思っていたから関係ないけど、これではっきりした。今の私が出来る盛大な祝福をお見舞いしてやるわ!
「それでは瀬兎様より、祝福を」
笑っていられるのも今のうちよ。
私は、祭壇に立ち、手を胸の前で組み、静かに心を鎮めた。終わった後、余裕に見せるために動けるだけの霊力は残して、組んだ手の方へ霊力を集める。
「初代京華国王、風雅の都の長、月姫の名の下に平和な国が続きますよう。新しき王の誕生に、祝福を」
組んでいた手を高く上げ、大きく広げる。ふわっと舞った私の霊力が虹色に輝き出し、式を見に来た民の真上を飛ぶ。広く大きく遠くまで、一番後ろで見ている妖達にも届くように。
「うわぁー」
中央の辺りで子供の声がした。それに続くようにみんな一斉に声を上げる。
「凄い。こんなに凄い祝福は初めて見た」
喜んでいる民を後にし、私は自席に戻る。その時華流亞の不満そうな顔が目に入った。どうよ、凄いでしょう?悔しいでしょう?と微笑みかけた。すると、いっそう不満が増したのか、いつもの可愛らしい顔からは想像もつかないくらい歪んだ顔をして、怒っている。今にも人を殺してしまいそうなほどに。
後の無くなった華流亞は顔を整え祭壇に向かった。普通、前王より霊力が低いと、無能な王と認識される。だから前王は少しだけ霊力を弱めて祝福するのだが、私はそんなに優しくはない。これは私と華流亞の戦争なのよ!
祭壇に立った華流亞は服から何かを取り出した。指輪だ。元々の計画では霊力を溜め込んだ指輪を使い、私と差をつけるつもりだったのだろうが、そんなことを言っていられる余裕は今の華流亞にはない。私より霊力が低いと見なされれば、この先馬鹿にされる未来しかないのだから、指輪を使う他ないのだ。
我ながら酷いとは思うけどね。最後くらい楽しみたいじゃない?
華流亞は指輪をはめ、私と同じように手を組んだ。
「この先のこの国の未来を守り、平和な国を作ることをここに誓います。」
華流亞が手を上げ、霊力を飛ばしたのと同時に、霊力を溜め込んでいた指輪の宝石が弾け飛び、祝福の風に乗って民の元に落ちた。芹と稷にはそれが見え、危ないと感じたが、私の霊力によって守られている民が怪我をすることは無かった。ここまで計算通り。
まぁ私の仕掛けた勝負は、多少のズルをした華流亞が勝った。悔しくはない、だってあの子の化けの皮を剥がせたのだから。ズルをしてでも私に勝ちたい卑怯な子。少数の民には気づかれたでしょうから、これからが楽しみだわ。
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