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バンボルト襲来す
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「……なんだ、あいつは……?」
結界に空いた穴から降りてきた奴、背中の腕がぞわりと蠢くたびに、吐き気がするような威圧が全身を貫いてくる。
顔は──獣人族だ。けど、普通じゃない。
ライオンみたいな鬣に、サメのような鋭い牙。
目つきだけで、全身の筋肉が萎縮しそうになる。視線が刺さるだけで、頭が痺れる。
そんな化け物みたいな奴が、静かに言った。
「抵抗すれば──容赦なく殺す」
……その場が、凍りついた。
誰も声を出せない。生徒も、教師も、息をすることさえ忘れたように固まっていた。
「……あれは、魔王軍の……バンボルト……」
誰かが震える声でそう呟いた。
「殺戮のバンボルト……!」
瞬間、場が崩れた。
生徒たちは悲鳴を上げながら逃げ出し、教師たちも慌てて避難誘導を始める。
だが、誰も“あの男”に立ち向かおうとはしなかった。
俺の隣にいたステラが、顔を青くしてつぶやいた。
「バンボルト……魔王軍の中でも、最も戦闘力に特化した武闘派。交渉も慈悲も通じない、“暴走そのもの”……。あの顔、あの威圧……常人なら、睨まれただけで動けなくなるって……」
その言葉通り、今まさに──俺たちは身動きが取れなくなっていた。
バンボルトが、静かに口を開く。
「轟電次郎って奴を渡せ。そうすれば、俺はここで暴れない」
ただそれだけの言葉。
だが、その“静けさ”が何よりも怖かった。
獰猛な顔でありながら、落ち着いた口調。
そのギャップが、不気味で、異様で、逃げ場を失わせる。
──俺のせいだ。
こいつは、俺を狙ってきた。俺の力が原因で、ここまでの騒ぎになった。
「やっぱり……魔王軍のやつらか……」
唇が震える。手のひらが汗で濡れていた。
「俺のせいで……みんなを危険に晒したってわけだな……」
歯を食いしばる。何とかしなきゃ……俺が。
そのときだった。
空間が震えた。歪み、裂けるように魔法陣が浮かび──
そこから、一人の老人が姿を現した。
白いローブに長い杖。背中はわずかに曲がっているのに、立っているだけで空気が引き締まるような存在感。
「誰じゃ、わしの結界を壊した奴は──」
その声は、雷鳴のように響いた。
周囲がざわついた。誰かが叫んだ。
「モルセウス様……!」
ミカの師匠で、ろくに授業もしやがらない俺達Zクラスの講師だ。モルセウス……そういや名前も初めて聞いたな。
別の講師が駆け寄って、事態の説明を始める。
モルセウスは黙ってそれを聞いていたが──話が終わると、ふいに口元をほころばせて言った。
「ミカ……そんな弟子もおったかのう」
のんきすぎるだろ!? とツッコミそうになったが、次の瞬間、彼の目が鋭くなった。
「電気の男よ。おぬしの“漏れ出す魔力”……いや、“電力”とやらを、ずっと観察してきたがのう……」
「わしには、無理じゃと結論づけたわい」
目が合う。重い……この人もまた、ただ者じゃない。
「悪いことは言わん。おぬし、この場から出て行け」
「そうすれば、再び強固な結界を張り、この獰猛な魔族を──この“バンボルト”とやらを、二度とこの場所には入れさせん」
……言葉が、喉に詰まった。
「これは命令でも忠告でもない。選択じゃ」
「ここに残れば、他の者が死ぬ。出て行けば、おぬしが一人になる」
俺の胸が、痛んだ。
逃げるか。戦うか。守るか。犠牲になるか。
俺の手に、その答えが、握られていた。
結界に空いた穴から降りてきた奴、背中の腕がぞわりと蠢くたびに、吐き気がするような威圧が全身を貫いてくる。
顔は──獣人族だ。けど、普通じゃない。
ライオンみたいな鬣に、サメのような鋭い牙。
目つきだけで、全身の筋肉が萎縮しそうになる。視線が刺さるだけで、頭が痺れる。
そんな化け物みたいな奴が、静かに言った。
「抵抗すれば──容赦なく殺す」
……その場が、凍りついた。
誰も声を出せない。生徒も、教師も、息をすることさえ忘れたように固まっていた。
「……あれは、魔王軍の……バンボルト……」
誰かが震える声でそう呟いた。
「殺戮のバンボルト……!」
瞬間、場が崩れた。
生徒たちは悲鳴を上げながら逃げ出し、教師たちも慌てて避難誘導を始める。
だが、誰も“あの男”に立ち向かおうとはしなかった。
俺の隣にいたステラが、顔を青くしてつぶやいた。
「バンボルト……魔王軍の中でも、最も戦闘力に特化した武闘派。交渉も慈悲も通じない、“暴走そのもの”……。あの顔、あの威圧……常人なら、睨まれただけで動けなくなるって……」
その言葉通り、今まさに──俺たちは身動きが取れなくなっていた。
バンボルトが、静かに口を開く。
「轟電次郎って奴を渡せ。そうすれば、俺はここで暴れない」
ただそれだけの言葉。
だが、その“静けさ”が何よりも怖かった。
獰猛な顔でありながら、落ち着いた口調。
そのギャップが、不気味で、異様で、逃げ場を失わせる。
──俺のせいだ。
こいつは、俺を狙ってきた。俺の力が原因で、ここまでの騒ぎになった。
「やっぱり……魔王軍のやつらか……」
唇が震える。手のひらが汗で濡れていた。
「俺のせいで……みんなを危険に晒したってわけだな……」
歯を食いしばる。何とかしなきゃ……俺が。
そのときだった。
空間が震えた。歪み、裂けるように魔法陣が浮かび──
そこから、一人の老人が姿を現した。
白いローブに長い杖。背中はわずかに曲がっているのに、立っているだけで空気が引き締まるような存在感。
「誰じゃ、わしの結界を壊した奴は──」
その声は、雷鳴のように響いた。
周囲がざわついた。誰かが叫んだ。
「モルセウス様……!」
ミカの師匠で、ろくに授業もしやがらない俺達Zクラスの講師だ。モルセウス……そういや名前も初めて聞いたな。
別の講師が駆け寄って、事態の説明を始める。
モルセウスは黙ってそれを聞いていたが──話が終わると、ふいに口元をほころばせて言った。
「ミカ……そんな弟子もおったかのう」
のんきすぎるだろ!? とツッコミそうになったが、次の瞬間、彼の目が鋭くなった。
「電気の男よ。おぬしの“漏れ出す魔力”……いや、“電力”とやらを、ずっと観察してきたがのう……」
「わしには、無理じゃと結論づけたわい」
目が合う。重い……この人もまた、ただ者じゃない。
「悪いことは言わん。おぬし、この場から出て行け」
「そうすれば、再び強固な結界を張り、この獰猛な魔族を──この“バンボルト”とやらを、二度とこの場所には入れさせん」
……言葉が、喉に詰まった。
「これは命令でも忠告でもない。選択じゃ」
「ここに残れば、他の者が死ぬ。出て行けば、おぬしが一人になる」
俺の胸が、痛んだ。
逃げるか。戦うか。守るか。犠牲になるか。
俺の手に、その答えが、握られていた。
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