ありふれた優しさでは太刀打ちできない

ルチカ

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ありふれた優しさでは太刀打ちできない

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ある夏の日の朝、夜勤の仕事を終えて家に電話をすると主人が出た。
「お袋が朝七時に友達の家に行くと言ったっきり帰って来ないんだよ~すぐに帰るって言ったのに~」と慌てている。
私はその時思った“とうとう徘徊かぁ~゛と。

私はグループホームで働いている介護スタッフ。グループホームとは認知症専門の老人ホーム。
徘徊なんて日常的なはずなのに、まさかまさかの姑が認知症になるとはなぁ~。内の親に限って?皆そう思っているのだろうなぁ。

家の中で私だけは冷静だった。
けれど、この真夏の暑い日に徘徊されちゃ探さない訳にはいかない。
夜勤明けで眠さと戦いながら探し、知り合いに電話をかけまくり、警察にも電話をかけた。
それからしばらくして近くに住む姑の兄夫婦と一緒に姑が帰って来た。
姑の義理姉が
「怒らないでやってね」と一言だけ言って姑の兄夫婦は帰って行った。

精神科への受診。アルツハイマー型認知症だと診断された。
治るはずもない病気。
ここからが大変な毎日だぁ~。
火の消し忘れで火事を起こしそうになるがそれを私のせいにして警察を呼んだり等、色々と警察のご厄介になりました。

グループホームで認知症の人達を見て、内では姑の事を見て、私の体がというか精神的に休まる場所が無い無い無い~。
何で私だけが~といつもいつも思っていました。
何度も何度も頭の中で姑を抹殺していた。今思うと恐ろしい~。
ありふれた優しさでは太刀打ちできない事をあらためて思う。
二年間かぁ~長かったなぁ~。
今、姑は老人ホームにいる。
内は今、平和だ。
今だから言うが家族が認知症になって家で面倒を見ると家中が破滅すると思っている。
だから私は娘に遺言状を残している。
“お母さんが認知症になったらかわいそうだとは思わず安いお金の老人ホームに入れなさい。その時お母さんはあなたの事がわからないんだからね。面倒を見てあなたが苦労する事なんてないんだからね゛と書いた。


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