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突然の訪問

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食事の後、新山を寮へと送り届ける。

新山との食事が、彼女とだったのなら楽しめたなと考えてしまう。
先日の彼女との食事を思い出すと、尚更だった。


時間は21時過ぎだった。
彼女の事を考えていたら、無性に会いたくなってしまった。
彼女のシフトは分からないが、取り敢えず連絡する事にした。

何度目かの呼び出し音の後、彼女の「はい」という声が耳に響く。
「鈴音?今、大丈夫?」
電話には出れているが、時間があるのか確認する。
「大丈夫ですよ。奨瑚さん…どうしたんですか?」
「鈴音に会いたくなったから…声だけでも聴ければと思って」
声を聴いたらもっと会いたくなってしまった。
「奨瑚さんが会いたいって思ってくれたのが、とても嬉しいです。私も……会いたいですよ?」
「鈴音…?少しでもいいから会おうか?」
彼女も思ってくれているなら、すぐに会いたい。
「奨瑚さん今どこですか?私、出れますよ?」
夜に彼女を外に呼びつけるのは、いくら申し出てくれても許可出来ない。

「俺は、今出先だから…良ければ鈴音のマンションに向かうよ?」
彼女のマンション上がった事はまだ無いが、送り届けた事はあった。
部屋の場所も確認済みだ。


彼女の了承を貰い、彼女の所へ車を走らせる。
今までは送るだけであったが、今日は彼女に会いに行く為…少し緊張している。



マンションに着くと、彼女に電話をする。
「今、着いたから…もう直ぐ会えるよ?」
「私…玄関で待ってますね……」
彼女が待っている5階でエレベーターを降りる。
降りたら彼女の姿が確認出来た。
彼女と視線が合うと、足早に彼女へと向かう。
「玄関の中で待ってればいいのに…」
彼女の頬に掌で触れる。
「奨瑚さんが、いきなり来てくれるって言うから…嬉しくて…」
頬に触れた手に彼女の手が重ねられる。
俺の手を握ると、彼女に部屋へと招き入れられた。


「シフト分からなかったから、迷惑じゃなかった?」
無理をさせない為にも、シフト次第では直ぐに帰ろうと考えていた。
「明日、夜勤なので大丈夫ですよ。奨瑚さんは気にし過ぎです。私は、奨瑚さんに会えるなら明日が朝から仕事だって大丈夫なのに……」
大切にしたいから、慎重になってしまう。
「鈴音に無理をさせたくないし、俺が重荷になるとか考えたくないから。心配させて欲しいんだ」
「奨瑚さんこそ、無理してないですか?」
彼女の心配そうな顔が見上げてくる。
安心させたくて、彼女の頭に手を当てゆっくりと撫でる。
「鈴音といる方が嬉しいし、無理はしてないよ。それに、申し訳ないけど俺は明日休みなんだ。鈴音の方に無理させちゃうかもよ……」
俺はわざとらしく凹んで見せる。
「一緒にいると……私は元気になれます」
彼女の言動に、胸がいっぱいになる。
「俺のほうが、鈴音に癒やされてるよ…」

彼女に誘われるまま、ソファへと一緒に座る。

どちらともなく…唇を重ねていた。
そのまま彼女をソファへ押し倒し、深く口付ける。
彼女は俺に身を委ねてくれ、俺たちは時間を忘れて身体を求めあった……。



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