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1 突然の異世界人

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今日も仕事に朝から出勤し夜遅く帰る。いつもの帰り道、何も変わらない。たまにコンビニに寄るぐらいで通常運転の日々。駅からの帰り道には大きめの公園があるがチラリと横目で見る程度で入った事は一度もない。

今日も帰り道に薄暗い公園をチラリと横目で見て帰る。これが始まり。

いつの時代でもファンタジーに憧れ何か特別な事が急に舞い降りてこないかと思うだろうが俺には必要ない。普段と同じで良かったのに見てしまった、街灯下のベンチを。

うわ…今日あのベンチに誰か座ってる。薄暗いし超怖い…何かデカイし。

そそくさと帰宅して家の前に着くが男に気をとられ明日の朝ごはんを買いにコンビニ寄るの忘れてた。最悪、朝はしっかり食べたい派です。戻るか…

チラリと癖で公園のベンチを見たがまだ男は座ってる。良く見ると剣士みたいな格好…いやいや。早くコンビニ行って帰ろ。

コンビニへ行きまた家に戻ろうとしたが公園のベンチをまたチラリと見てしまった。あれ?いない。ほっとした途端低い声で話かけられた。

「ここはどこだ?」
「うわ!!」
「すまない、驚かせるつもりはなかったんだ」
「あ、あ、イカ公園です」
「そうか…」

イカの遊具が少し離れた所にありイカ公園と呼ばれている。じゃなくて!

でか!それに格好!剣まである…聞くの怖すぎ。帰ろ。

「我が名は」
「あ、もし迷ったなら警察へ」
「ん?それはどこだ?」

うわ、面倒な事になった。警察わからない。我が名とか言う。勇者みたいな服装に剣。

「あの…因みに何処から来たんですか?」
「気づいたらここに。我が国ではないらしい」
「あぁ…そうですか」
「すまないがそこへ案内をしてもらいたい」
「あーいや…あ、はい…」

警察にこのまま行っていいんだろうか?これフラグじゃないだろうか?一緒に行って警察で大惨事起こるとか。俺も良く見るマンガとかだと自分の家とかに連れて帰るとか見るけど。自分がその立場になると怖すぎて無理。

仮に部屋に入れたとして。いやいや、そんな事したら生活できない!通常生活が!

「あ、ここです」
「ありがとう、助かった。これで帰れる」

ズキッ。これ…帰れないの知ってて引き渡すのか。ここには帰る魔法やら手だては一切ない。

「いえ…」

「あの…迷子だそうです」
「はい、迷子、うわ!でかいね。何処からきたの?」
「ナグマ王国から」
「へーどこそれ、ナグマナグマ…無いね」

ですよね。異世界人ですもん。

はぁ~

「因みに、彼どうなりますか?」
「あー保護されて2.3日たったら保護団体のうちに行くかな」
「そうですか…」

それ、もうここにすら戻れない。異世界でいったら警察に捕まえられたみたいな?
はぁ~だよな、これって。フラグだよな…。人の良心に漬け込むとかどうなのよ。

「俺が…保護しても?」
「あーいいけど身分証明書見せて用紙書いてね」
「あ、はい」

こうして俺は異世界人をお持ち帰りした。
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