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第4話
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沈黙が10分以上続いただろうか、部屋にはピコンピコンという機械音だけが響いている。
まさやは恵美の視線などお構いなしに、黙々とスマホゲームに興じている。
相手を自主的に帰らせようと無視作戦を目論んだものの、どうやら鈍感なまさやには通用しないらしい。
むしろ重苦しい空気と沈黙に耐え切れず、先に降参したのは恵美の方だった。
コンコンと目の前のテーブルを指で小突いて、まさやの注目を自身に向ける。
「あなた、明日香にプレゼントは?」
「え?」
「クリスマスだから会いに来たんでしょ? 普通、そんな日に手ぶらで女の家に来る?」
非難めいた恵美の口調に、まさやは困ったように頭を掻く。
「いやぁ。そういうのに疎くて。っていうか、明日香さんとはただの友達だから」
「友達ねぇ」
「そうです、友達」
「ふ~ん、親には内緒の交際ってわけね」
「いえいえ、そんなんじゃないです」
恵美の追求に初めて焦りを見せ始めたまさや。手元のスマホから暗いメロディーが流れた。
「あっ、ゲームオーバーだ」
まさやは恨めし気に恵美を見る。
勝ち誇ったような表情でその視線を受け止めた恵美は、厳しい口調で相手を問い詰めた。
「あのね、まさや君。あなたと明日香が本当のところどんな関係なのか私には分からない。だけど、こんな夜中にベランダから女の部屋に侵入するなんて非常識よ」
「はぁ」
まさやは困ったように頭を下げた。
「見つけたのが私だったから良かったようなものの、両親だったら大変な騒ぎだったわよ」
「確かに」
「警察に通報されるかも知れない。そうしたらあなたの親にもこのことがばれるわ。明日香と交際? 続けられると思う?」
「いやいや、本当に交際はしてないですって。でも、非常識ってことに関しては、なんとも……」
恵美の指摘が的を得ているだけに、言い返すことができないまさやはもごもごと言葉を濁した。
形勢逆転と見て取った恵美は、さらに追及の手を伸ばす。
「あなたさっきから明日香の彼氏じゃないって言い張ってるけど、だとしら泥棒ってことはないわよね?」
「泥棒?!」
素っ頓狂な声を上げたまさやは、目を丸くして恵美を見た。
まさかそんな疑いを持たれているとは露ほども思っていなかったらしく、ぶるんぶるんと大きく首を振る。
「こんな夜中に土足で女の家に侵入、よくよく考えると怪しいわよね。明日香が旅行中だってことも知らないなんて」
「勘弁してくださいよ恵美さん」
泣き出しそうになっているまさやの様子から判断するに、そんなたいそれたことをしでかしそうな悪人には見えない。このまま黙って退散してくれるのであれば、これ以上責め立てるのはやめておこう。
恵美は挑戦的な目つきでまさやを見た。
まさやはしきりに手を握ったり開いたりしながら、深呼吸して気持ちを落ち着けている様子だ。警察という単語を聞いてからまさやの態度に焦りが現れてきている。
もしや本当に強盗か何かをやらかした逃亡犯なのだろうか。恵美の中でそんな疑念がよぎり始めたと同時に、まさやが会話の矛先を変えてきた。
「そ、そういう恵美さんはどうなんです? クリスマスなんですから、男の人からプレゼントとかもらったんですか?」
「は? まさや君になんの関係があるのよ」
苛立たしそうに言うと、まさやは口を尖らせて抗議をはじめる。
「恵美さんは人のことにばっかり口挟んできますよね。肝心の自分はどうなんですか。こんな日に家で1人きりだなんて」
「言ったでしょ、勉強してるのよ」
「はぁ、勉強」
恵美の言葉を受けて、まさやはゆっくりと部屋の隅々にまで視線を巡らせた。
綺麗に片づいた机、整えられたベッド。教科書どころか、筆記用具すら出ていない。
まさやは再び視線を恵美の方へ戻し、もの言いたげな表情でわざとらしく首を傾げた。さっきまでのおどおどしていた態度が一変し、口元に笑みが浮かんでいる。
恵美は無言でその視線を受け止め、暗い表情で窓の外に目を向けた。暖房を入れたからだろう、先ほどまで鮮明に見えていた月の形が朧げになっている。
今夜は雪が降るかもしれない。
まさやは恵美の視線などお構いなしに、黙々とスマホゲームに興じている。
相手を自主的に帰らせようと無視作戦を目論んだものの、どうやら鈍感なまさやには通用しないらしい。
むしろ重苦しい空気と沈黙に耐え切れず、先に降参したのは恵美の方だった。
コンコンと目の前のテーブルを指で小突いて、まさやの注目を自身に向ける。
「あなた、明日香にプレゼントは?」
「え?」
「クリスマスだから会いに来たんでしょ? 普通、そんな日に手ぶらで女の家に来る?」
非難めいた恵美の口調に、まさやは困ったように頭を掻く。
「いやぁ。そういうのに疎くて。っていうか、明日香さんとはただの友達だから」
「友達ねぇ」
「そうです、友達」
「ふ~ん、親には内緒の交際ってわけね」
「いえいえ、そんなんじゃないです」
恵美の追求に初めて焦りを見せ始めたまさや。手元のスマホから暗いメロディーが流れた。
「あっ、ゲームオーバーだ」
まさやは恨めし気に恵美を見る。
勝ち誇ったような表情でその視線を受け止めた恵美は、厳しい口調で相手を問い詰めた。
「あのね、まさや君。あなたと明日香が本当のところどんな関係なのか私には分からない。だけど、こんな夜中にベランダから女の部屋に侵入するなんて非常識よ」
「はぁ」
まさやは困ったように頭を下げた。
「見つけたのが私だったから良かったようなものの、両親だったら大変な騒ぎだったわよ」
「確かに」
「警察に通報されるかも知れない。そうしたらあなたの親にもこのことがばれるわ。明日香と交際? 続けられると思う?」
「いやいや、本当に交際はしてないですって。でも、非常識ってことに関しては、なんとも……」
恵美の指摘が的を得ているだけに、言い返すことができないまさやはもごもごと言葉を濁した。
形勢逆転と見て取った恵美は、さらに追及の手を伸ばす。
「あなたさっきから明日香の彼氏じゃないって言い張ってるけど、だとしら泥棒ってことはないわよね?」
「泥棒?!」
素っ頓狂な声を上げたまさやは、目を丸くして恵美を見た。
まさかそんな疑いを持たれているとは露ほども思っていなかったらしく、ぶるんぶるんと大きく首を振る。
「こんな夜中に土足で女の家に侵入、よくよく考えると怪しいわよね。明日香が旅行中だってことも知らないなんて」
「勘弁してくださいよ恵美さん」
泣き出しそうになっているまさやの様子から判断するに、そんなたいそれたことをしでかしそうな悪人には見えない。このまま黙って退散してくれるのであれば、これ以上責め立てるのはやめておこう。
恵美は挑戦的な目つきでまさやを見た。
まさやはしきりに手を握ったり開いたりしながら、深呼吸して気持ちを落ち着けている様子だ。警察という単語を聞いてからまさやの態度に焦りが現れてきている。
もしや本当に強盗か何かをやらかした逃亡犯なのだろうか。恵美の中でそんな疑念がよぎり始めたと同時に、まさやが会話の矛先を変えてきた。
「そ、そういう恵美さんはどうなんです? クリスマスなんですから、男の人からプレゼントとかもらったんですか?」
「は? まさや君になんの関係があるのよ」
苛立たしそうに言うと、まさやは口を尖らせて抗議をはじめる。
「恵美さんは人のことにばっかり口挟んできますよね。肝心の自分はどうなんですか。こんな日に家で1人きりだなんて」
「言ったでしょ、勉強してるのよ」
「はぁ、勉強」
恵美の言葉を受けて、まさやはゆっくりと部屋の隅々にまで視線を巡らせた。
綺麗に片づいた机、整えられたベッド。教科書どころか、筆記用具すら出ていない。
まさやは再び視線を恵美の方へ戻し、もの言いたげな表情でわざとらしく首を傾げた。さっきまでのおどおどしていた態度が一変し、口元に笑みが浮かんでいる。
恵美は無言でその視線を受け止め、暗い表情で窓の外に目を向けた。暖房を入れたからだろう、先ほどまで鮮明に見えていた月の形が朧げになっている。
今夜は雪が降るかもしれない。
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