モデルファミリー <完結済み>

MARU助

文字の大きさ
82 / 146
奪われた家族

80話:思いもよらぬ再会

しおりを挟む
 部屋の空気が更に静まり返ったように感じた。

 1人の男が誠に詰め寄ろうとするが、青年が手でそれを制する。
 それを見た誠は、さらに畳み掛けるように話しかける。

「学校では生徒会長。ここではテロリストのリーダー。ずいぶん優秀なんですね」

 相手が美園の先輩だと分かってもなお、城島と向き合って話すことができない。
 城島からは底知れぬ闇の気配がする。誠はその殺気を敏感に感じ取り、正面から目を合わせられなかった。

 城島の口元には笑みが浮かんでいるが、愉快な気分から出たものでないことは確かだ。その証拠に相変わらず瞳の奥は冷たいままだ。

「自分の置かれている立場が分かっているのかい? 俺の正体にさえ気付かなければ無事に帰してやれたものを、自分から危険に飛び込もうとするなんて、利口じゃないな」
「はなからそのつもりです」
「――何」

 城島は目を細める。

「僕はトワの友達です。だからトワを助けてあげたいんです」
「助ける?」
「トワは信じてる人に裏切られています。トワはそれを知りません。あなたたちより悪い奴はもっと他にいるんです。トワに手を出さないと約束してくれれば、僕もできる限りの協力はします」

 誠は今度こそ真っ直ぐに城島の目を見た。
 フッ、と口の端を吊り上げ、ため息とも笑みとも知れぬ音を漏らした城島は、先ほどよりも幾分和らいだ表情で誠を見た。

「何か勘違いしているようだが、俺たちの目的はあくまで現政権の退陣、つまりトワを背後で操っているマツムラだ。トワに関してはむしろ君と同じ意見だよ。悪魔の手から救い出してやりたいんだ」 
「悪魔?」
「ああ。恐らく俺たちの敵は共通らしいな。マツムラ。そうだろ?」

 彼の言葉をどこまで信じていいのだろう。誠は判断しかねていた。

「その青い瞳。城島先輩は日本人じゃないんですね? ユグドリアの政治にこれだけ関心を持ってることを考えれば、半分はユグドリアの血が流れている。違いますか?」
「ご名答」

 そう言って、おざなりに拍手をしてみせた。

「美園くんから聞いていた『天使のような子』というイメージとはずいぶんかけ離れているね。そんな君なら僕の正体にも気付いてるんじゃないか?」

 誠は無言で城島を見た。城島は「どうぞ」と目で促した。

「……たぶん、あなたはトワ王子にとっても近しい人。彼を心配し、ユグドリアの将来を心配し、マツムラの裏の顔を知っている」

 そういう人物で誠が思い当たるのは一人しかいない。

「もしかしてトワの亡くなったお兄さんですか?」

 その言葉を聞いて、城島は口元を緩め「君は神童だな」と答えた。
 周りで聞いている城島の仲間達は恐らく日本語が分からないのだろう、黙って事の成り行きを見守っている。

「トワはお兄さんは死んだと思ってます。生きてるならどうして会いに行かないんですか?」 
「行けるものなら行ってるさ。だけど俺が生きている事が分かれば、今度はトワが危険な目にあうかもしれない」
「どういうことですか?」

 城島は目を伏せた。
 睫の隙間から微かに覗くのは美しい海の色。青ではない、深い深い海の底で眠る闇の深青。
 そこに映るものは、不安、恐れ、憎しみ、そして後悔だろうか――。

「……マツムラは…俺の家族を殺した」
「――え?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...