1 / 4
1話
しおりを挟む
「…茂、いつまで部屋に篭ってるの。いい加減学校に行ったら?」
母の声がした。彼にとっては数週間ぶりだろう。毒島茂。日夜ネットゲームにのめり込む、不登校の高校生。
「…あぁ、行くわ」
「本当!?」
毒島はパソコンを閉じ、部屋の扉を開け、久しい母の顔を見る。窓から差し込む光が彼を照らす。
「茂、貴方、…臭いわよ。お風呂入りなさい」
茂はこれまた数週間ぶりのシャワーを浴びた。ボサボサの髪をテキトーに整え、数ヶ月ぶりの制服に腕を通す。
「茂、何で急に行く事にしたの?」
朝食を食べている時に話しかけてきたのは、彼の姉、毒島凛花。彼と同じ学校に通う高校二年生。
「…今日転校生が来るから」
「…またお得意の未来予知?ホントに当たるから怖いのよね。にしても、何で転校生が来るからってアンタが行く事になんのよ、もしかして超美少女?」
「んじゃ行ってくる」
姉の言葉を無視して、彼は家を飛び出した。
「おい、毒島じゃね?久しぶりだな!」
学校に着くや否や、クラスメートらしい人々に声をかけられる。今も自分の席が確保されていた事が驚きだ。
「あぁ、まぁ…」
「お前さ、コレやってる?」
男子生徒の一人がスマホの画面を見せて来る。それは毎日毎日見てきた、とあるゲームのタイトル画面。
「FPSっつってさ、最近スマホ版が海外から配信されて、今大人気なんだよ」
「あー、そうなんだ。今度やって見るよ」
「んなこと言わずに、今やってみろって。ほら、俺の端末貸すからさ」
毒島は言われるがままに端末を受け取る。
「ここを押してな…って、操作方法分かんのか?」
毒島に操作の説明など必要なかった。
「まぁ、似たようなのやったことあるから」
戦闘が始まった。
まず全員が輸送機で運ばれ、各々好きな場所に降り立ち、戦闘する。操る男が降り立ったのは、都心部。誰でも最初は一般人のような服装だ。
毒島はいつも通り、ゲームの中の自分と重ね合わせる。
(…あの家には…二人か。見るからに動きが素人だな。辺りの武器は全部回収されたな。仕方ない)
画面内では、一人の男が二階建ての家へと入って行く。待っていたのは、銃声のオンパレード。二人掛かりで待ち伏せしていたのだ。が、男は既に背後に回り込んでいた。初期装備のまま、防弾チョッキを着けず、拳一丁で。偶然落ちていた発煙弾を投げ付け、煙の中で二人の敵を拳で撃破した。
(…チームで固まってるな。ここら一帯の武器は奪われてるとして、となると、かなりの重装備かもな)
男は倒した相手から拳銃M1911、言わずと知れたアサルトライフルAK-47、HK416、防弾チョッキ、手榴弾二発を奪い取る。
敵二人は当然、男の立て籠もる家屋へ侵入する。が、二人は扉が開けっ放しである事を深く捉えなかった。それが命取りとなる。
扉の裏に潜んでいた男が、一人目を集中攻撃する。一人目が致命傷を受け、ようやく反応出来た二人目の攻撃が始まるが、その時男は既に扉を閉め、外へ出ていた。扉を閉める直前、二発の手榴弾を投げ込んで。
爆音と共に、二人は死亡した。
「お前スゲェじゃん!一人でチーム一つ潰しやがった!」
気付けば、辺りは人が集まっていた。本当に流行っているらしい。
「あぁ、まぁ、偶然だよ」
「ほらほら、お前ら席着けー」
扉を開け、担任が入ってくる。気付けばホームルームの時間だ。辺りの人間はばらけて行く。
「おお、毒島。久しぶりだな。先生嬉しいぞー!」
「そして、皆には良い知らせがある!何と転校生が来たぞ!入りなさい!」
言われ、入って来たのは、一人の少女。白い肌に、白い髪。白い瞳。
「鈴原冬香。今日から一緒に勉強する仲間だ。アルビノって言って、別に健康だが、少し色素不足が原因で、こうやって全体的に白い彼女だが、性格は明るいから、仲良くしてやってくれよ!」
一日は何気無く終わった。
「おい毒島、一緒に帰ろうぜ」
言ってきたのは、朝周りに集まっていた男子生徒達。
「あぁ、そうだな」
毒島は嬉しい反面、怖かった。いくらゲームの世界でヒーローでも、現実ではすぐに忘れ去られる。
「毒島君、だっけ?」
彼の耳に入った声は、女子生徒のもの。それも転校生だ。未来予知で見た通りの。
「ちょっと話があるの。来てくれない?」
「おいおい、毒島、久々に学校に来りゃ、妖精のような美少女から呼び出しかよ、羨ましい奴だな~おい」
背中を押され、彼女の後を追う事になる。
向かった先は、小教室。
「座って」
一つの机を挟み、彼女と向かい合うようにして毒島は席に着く。白いロングヘア。彼ののめり込むネット世界にしか出てこないような少女だった。
そんな妖精が取り出したのは、イメージを壊しそうなスマートフォン。
「やろ」
「何を?」
「FPS」
妖精の口から信じられない単語が発せられる。
「えっと…」
「早く起動して。スマホにも入れてるんでしょ?」
毒島は言われるままに起動する。
「私が勝てば一つ、私のお願いを聞いてもらう。逆も然りよ」
「勝敗はどう決めるんだ」
「ルールは個人戦。チームは組まない。最終的に生き残った方の勝ち。途中で負ければそれで負け。両方負ければこの話は無し」
マッチングが終わり、百人のプレイヤーが輸送機から飛び立って行く。
「良いぜ、やってやるよ。それなりの腕なんだろ?」
母の声がした。彼にとっては数週間ぶりだろう。毒島茂。日夜ネットゲームにのめり込む、不登校の高校生。
「…あぁ、行くわ」
「本当!?」
毒島はパソコンを閉じ、部屋の扉を開け、久しい母の顔を見る。窓から差し込む光が彼を照らす。
「茂、貴方、…臭いわよ。お風呂入りなさい」
茂はこれまた数週間ぶりのシャワーを浴びた。ボサボサの髪をテキトーに整え、数ヶ月ぶりの制服に腕を通す。
「茂、何で急に行く事にしたの?」
朝食を食べている時に話しかけてきたのは、彼の姉、毒島凛花。彼と同じ学校に通う高校二年生。
「…今日転校生が来るから」
「…またお得意の未来予知?ホントに当たるから怖いのよね。にしても、何で転校生が来るからってアンタが行く事になんのよ、もしかして超美少女?」
「んじゃ行ってくる」
姉の言葉を無視して、彼は家を飛び出した。
「おい、毒島じゃね?久しぶりだな!」
学校に着くや否や、クラスメートらしい人々に声をかけられる。今も自分の席が確保されていた事が驚きだ。
「あぁ、まぁ…」
「お前さ、コレやってる?」
男子生徒の一人がスマホの画面を見せて来る。それは毎日毎日見てきた、とあるゲームのタイトル画面。
「FPSっつってさ、最近スマホ版が海外から配信されて、今大人気なんだよ」
「あー、そうなんだ。今度やって見るよ」
「んなこと言わずに、今やってみろって。ほら、俺の端末貸すからさ」
毒島は言われるがままに端末を受け取る。
「ここを押してな…って、操作方法分かんのか?」
毒島に操作の説明など必要なかった。
「まぁ、似たようなのやったことあるから」
戦闘が始まった。
まず全員が輸送機で運ばれ、各々好きな場所に降り立ち、戦闘する。操る男が降り立ったのは、都心部。誰でも最初は一般人のような服装だ。
毒島はいつも通り、ゲームの中の自分と重ね合わせる。
(…あの家には…二人か。見るからに動きが素人だな。辺りの武器は全部回収されたな。仕方ない)
画面内では、一人の男が二階建ての家へと入って行く。待っていたのは、銃声のオンパレード。二人掛かりで待ち伏せしていたのだ。が、男は既に背後に回り込んでいた。初期装備のまま、防弾チョッキを着けず、拳一丁で。偶然落ちていた発煙弾を投げ付け、煙の中で二人の敵を拳で撃破した。
(…チームで固まってるな。ここら一帯の武器は奪われてるとして、となると、かなりの重装備かもな)
男は倒した相手から拳銃M1911、言わずと知れたアサルトライフルAK-47、HK416、防弾チョッキ、手榴弾二発を奪い取る。
敵二人は当然、男の立て籠もる家屋へ侵入する。が、二人は扉が開けっ放しである事を深く捉えなかった。それが命取りとなる。
扉の裏に潜んでいた男が、一人目を集中攻撃する。一人目が致命傷を受け、ようやく反応出来た二人目の攻撃が始まるが、その時男は既に扉を閉め、外へ出ていた。扉を閉める直前、二発の手榴弾を投げ込んで。
爆音と共に、二人は死亡した。
「お前スゲェじゃん!一人でチーム一つ潰しやがった!」
気付けば、辺りは人が集まっていた。本当に流行っているらしい。
「あぁ、まぁ、偶然だよ」
「ほらほら、お前ら席着けー」
扉を開け、担任が入ってくる。気付けばホームルームの時間だ。辺りの人間はばらけて行く。
「おお、毒島。久しぶりだな。先生嬉しいぞー!」
「そして、皆には良い知らせがある!何と転校生が来たぞ!入りなさい!」
言われ、入って来たのは、一人の少女。白い肌に、白い髪。白い瞳。
「鈴原冬香。今日から一緒に勉強する仲間だ。アルビノって言って、別に健康だが、少し色素不足が原因で、こうやって全体的に白い彼女だが、性格は明るいから、仲良くしてやってくれよ!」
一日は何気無く終わった。
「おい毒島、一緒に帰ろうぜ」
言ってきたのは、朝周りに集まっていた男子生徒達。
「あぁ、そうだな」
毒島は嬉しい反面、怖かった。いくらゲームの世界でヒーローでも、現実ではすぐに忘れ去られる。
「毒島君、だっけ?」
彼の耳に入った声は、女子生徒のもの。それも転校生だ。未来予知で見た通りの。
「ちょっと話があるの。来てくれない?」
「おいおい、毒島、久々に学校に来りゃ、妖精のような美少女から呼び出しかよ、羨ましい奴だな~おい」
背中を押され、彼女の後を追う事になる。
向かった先は、小教室。
「座って」
一つの机を挟み、彼女と向かい合うようにして毒島は席に着く。白いロングヘア。彼ののめり込むネット世界にしか出てこないような少女だった。
そんな妖精が取り出したのは、イメージを壊しそうなスマートフォン。
「やろ」
「何を?」
「FPS」
妖精の口から信じられない単語が発せられる。
「えっと…」
「早く起動して。スマホにも入れてるんでしょ?」
毒島は言われるままに起動する。
「私が勝てば一つ、私のお願いを聞いてもらう。逆も然りよ」
「勝敗はどう決めるんだ」
「ルールは個人戦。チームは組まない。最終的に生き残った方の勝ち。途中で負ければそれで負け。両方負ければこの話は無し」
マッチングが終わり、百人のプレイヤーが輸送機から飛び立って行く。
「良いぜ、やってやるよ。それなりの腕なんだろ?」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした
茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。
貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。
母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。
バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。
しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
真実の愛ならこれくらいできますわよね?
かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの
でもそれは裏切られてしまったわ・・・
夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。
ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる