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アメリカ合衆国、eスポーツ会場にて。
『今回の大会唯一の日本人チーム明星にはあのホヤマがいる!』
「うおおおおぉーお!」
アナウンスと観声に包まれる中、観客席に囲まれる形で中央で競技を行う日本人の名は帆山。FPSの大会で優勝し続ける彼は、澄ました顔で本場である外人を次々と撃破して行く。最近注目を浴び始めた、eスポーツだ。
今回の相手はチームサイケデリックファイターズ、略してサイファイ。スイス代表の彼らは世界屈指の強豪とされており、今現在、既に帆山以外のチームメイトは全滅に追いやった。この手のゲームは何せ百人ほどで戦うゲームであるため、一対一では勝敗が決めにくい。そこで四人一組のチーム戦となっており、チームが全滅したら負け。他は全てコンピュータが作り出した自動操縦アバター。プロの動きをベースに作られている。
『おいおい、ジャパニーズ。もう残ってんのはアンタ一人だぜ?持ち上げられてる割に大した事ねぇんじゃねぇの?』
ゲームにはボイスチャット機能も備わっており、特定の相手に声を届ける事も可能。帆山の耳に流暢なフランス語が入ってくる。彼はまだ相手の発言に耳を傾ける余裕がある事に、相手は気付いていない。
『アンドレア、気を付けろ。相手はホヤマ。一人でも十分脅威になり得る』
アンドレア=ブルクスは嘲笑し、
『囲んでさっさと殺すぞ。相手は民家に潜んで…』
このゲームのボイスチャット機能は、敗れたプレイヤーは使用出来ない。会話の途中であっても断絶される。つまり、アンドレアは敗れた事になる。
『…!』
周囲に緊張の空気が走る。生存数を見ると、残り四人。つまりコンピュータアバターは全滅。残るはサイファイの三人と、未だ一度も姿を現さない帆山とか言う日本人。
倒れたアンドレアのアバターを見ると、クロスボウの矢が五本も刺さっていた。一応死亡さえしていなければ救助する事は可能だが、アンドレア自身がそれを望まない。
『…ウチのエースが一本ならまだしも、五本も矢に撃ち抜かれるとはどう言う事だ?あり得ない!クロスボウはフルオートじゃないんだぞ!?』
チームメイトのカミール=フレイは言う。
クロスボウなど一度撃たれれば分かるものだ。つまり、この五本は一度、もしくは数秒の間を取って放ち、死体に追い討ちを掛けたものだと推測される。
(悪趣味な…!)
こう言ったゲームには安全地帯と言うものが存在する事が多い。広大なマップの端くれで逃げ続けるアバターがいては、試合がかなり長引くために、時間が経つにつれて中心部以外を毒ガスを充満させていく、と言うものだ。もう終盤に差し掛かっている以上、近くに潜んでいる事は間違いない。
直後、銃声が響く。
カミールのアバターは何発か弾を受けつつも、民家の窓から中へ入って身を隠す。
だが、彼は気付かなかった。いや、いつもの彼なら気付いていただろう。大抵、武器や物資の初期配置と言うものは決まっており、内容は違えどこの民家には銃器、この工場には重火器、など決まっている。そしてここは何もない、一階建ての少し大きめの小屋のような家。その窓ガラスが割れていた。誰も入る必要の無い、都心部の民家の窓が。つまり、誰かがいる。
『この足音、後ろ…!』
彼の背後に迫っていた足音は銃声へと変わった。鮮血が舞う。
(…クソッ!死んだ!…さっきの射撃は、ここから撃ってたのか。だからその過程で窓ガラスが割れたって事か?にしてもクロスボウはどう言う事なんだ?)
カミールが考えている間に、観客が歓喜した。画面には既に敗北を表すフランス語が映っている。
(残る二人は瞬殺かよ)
結局誰一人として敵のアバターを見る事すら叶わなかった。
ヘッドホンを取り、改めて歓声の嵐に包まれる。
(ケッ、負けた時の歓声ほど気持ち悪いもんはねぇ)
さっさと帰ろうとしたチームサイファイに、握手を求める人物がいた。日本人の帆山。対戦相手だ。
「ありがとうございました」
彼らに日本語は理解し難い。それでも分かるものがあった。だから全員顔を上げた。
「ホヤマって…女かよ!」
何しろ相手はヘルメットを着用していたために気付かなかった。会場が驚きに包まれる。
「帆山千佐都。これでもまだ二十歳だぞ?」
帆山はその白い瞳で軽くウインクし、セミロングの美しいと白髪を白い耳に掛け、会場を去った。
「この人、私の実姉」
「え、マジかよ!」
今となっては使われなくなった割と綺麗な小教室で毒島茂と鈴原冬香は話し合っていた。携帯の動画を見つめて。彼らが観ていたのは一昨年のeスポーツ。
「でも、急にいなくなった。去年の大会も、他の小さな試合にも必ず顔出ししてたのに。だから、私は会いたいの」
毒島は聞き入る。
「だから、今年の十二月までに、RDSの出場資格を得る。あの場所なら、きっとお姉ちゃんも来る」
「RDS?」
聞き慣れない言葉に毒島は首を傾げる。
「リアル・デス・シューティング。未だ大会の詳細どころかルールも場所も公表されてない、謎の大会。勝てば、」
「勝てば?」
「アメリカの国家資産の何倍もの賞金が得られる、らしい」
『今回の大会唯一の日本人チーム明星にはあのホヤマがいる!』
「うおおおおぉーお!」
アナウンスと観声に包まれる中、観客席に囲まれる形で中央で競技を行う日本人の名は帆山。FPSの大会で優勝し続ける彼は、澄ました顔で本場である外人を次々と撃破して行く。最近注目を浴び始めた、eスポーツだ。
今回の相手はチームサイケデリックファイターズ、略してサイファイ。スイス代表の彼らは世界屈指の強豪とされており、今現在、既に帆山以外のチームメイトは全滅に追いやった。この手のゲームは何せ百人ほどで戦うゲームであるため、一対一では勝敗が決めにくい。そこで四人一組のチーム戦となっており、チームが全滅したら負け。他は全てコンピュータが作り出した自動操縦アバター。プロの動きをベースに作られている。
『おいおい、ジャパニーズ。もう残ってんのはアンタ一人だぜ?持ち上げられてる割に大した事ねぇんじゃねぇの?』
ゲームにはボイスチャット機能も備わっており、特定の相手に声を届ける事も可能。帆山の耳に流暢なフランス語が入ってくる。彼はまだ相手の発言に耳を傾ける余裕がある事に、相手は気付いていない。
『アンドレア、気を付けろ。相手はホヤマ。一人でも十分脅威になり得る』
アンドレア=ブルクスは嘲笑し、
『囲んでさっさと殺すぞ。相手は民家に潜んで…』
このゲームのボイスチャット機能は、敗れたプレイヤーは使用出来ない。会話の途中であっても断絶される。つまり、アンドレアは敗れた事になる。
『…!』
周囲に緊張の空気が走る。生存数を見ると、残り四人。つまりコンピュータアバターは全滅。残るはサイファイの三人と、未だ一度も姿を現さない帆山とか言う日本人。
倒れたアンドレアのアバターを見ると、クロスボウの矢が五本も刺さっていた。一応死亡さえしていなければ救助する事は可能だが、アンドレア自身がそれを望まない。
『…ウチのエースが一本ならまだしも、五本も矢に撃ち抜かれるとはどう言う事だ?あり得ない!クロスボウはフルオートじゃないんだぞ!?』
チームメイトのカミール=フレイは言う。
クロスボウなど一度撃たれれば分かるものだ。つまり、この五本は一度、もしくは数秒の間を取って放ち、死体に追い討ちを掛けたものだと推測される。
(悪趣味な…!)
こう言ったゲームには安全地帯と言うものが存在する事が多い。広大なマップの端くれで逃げ続けるアバターがいては、試合がかなり長引くために、時間が経つにつれて中心部以外を毒ガスを充満させていく、と言うものだ。もう終盤に差し掛かっている以上、近くに潜んでいる事は間違いない。
直後、銃声が響く。
カミールのアバターは何発か弾を受けつつも、民家の窓から中へ入って身を隠す。
だが、彼は気付かなかった。いや、いつもの彼なら気付いていただろう。大抵、武器や物資の初期配置と言うものは決まっており、内容は違えどこの民家には銃器、この工場には重火器、など決まっている。そしてここは何もない、一階建ての少し大きめの小屋のような家。その窓ガラスが割れていた。誰も入る必要の無い、都心部の民家の窓が。つまり、誰かがいる。
『この足音、後ろ…!』
彼の背後に迫っていた足音は銃声へと変わった。鮮血が舞う。
(…クソッ!死んだ!…さっきの射撃は、ここから撃ってたのか。だからその過程で窓ガラスが割れたって事か?にしてもクロスボウはどう言う事なんだ?)
カミールが考えている間に、観客が歓喜した。画面には既に敗北を表すフランス語が映っている。
(残る二人は瞬殺かよ)
結局誰一人として敵のアバターを見る事すら叶わなかった。
ヘッドホンを取り、改めて歓声の嵐に包まれる。
(ケッ、負けた時の歓声ほど気持ち悪いもんはねぇ)
さっさと帰ろうとしたチームサイファイに、握手を求める人物がいた。日本人の帆山。対戦相手だ。
「ありがとうございました」
彼らに日本語は理解し難い。それでも分かるものがあった。だから全員顔を上げた。
「ホヤマって…女かよ!」
何しろ相手はヘルメットを着用していたために気付かなかった。会場が驚きに包まれる。
「帆山千佐都。これでもまだ二十歳だぞ?」
帆山はその白い瞳で軽くウインクし、セミロングの美しいと白髪を白い耳に掛け、会場を去った。
「この人、私の実姉」
「え、マジかよ!」
今となっては使われなくなった割と綺麗な小教室で毒島茂と鈴原冬香は話し合っていた。携帯の動画を見つめて。彼らが観ていたのは一昨年のeスポーツ。
「でも、急にいなくなった。去年の大会も、他の小さな試合にも必ず顔出ししてたのに。だから、私は会いたいの」
毒島は聞き入る。
「だから、今年の十二月までに、RDSの出場資格を得る。あの場所なら、きっとお姉ちゃんも来る」
「RDS?」
聞き慣れない言葉に毒島は首を傾げる。
「リアル・デス・シューティング。未だ大会の詳細どころかルールも場所も公表されてない、謎の大会。勝てば、」
「勝てば?」
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