元社畜系女子が人生フルベッドで運命ガチャを回してみたら~美女の人生は一度でいい。~

いづか あい

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第1章 人生、終わった

第13ガチャ ピンチが向こうからやって来た

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「ラ、ラウ様、お嬢様…私は、これで」
「メイドさん、待って」
「!!」

(…逃がさないよ)

走り去ろうとするメイドを呼び止めると、ラウがわかりやすく顔をしかめる。


「お嬢様。勘弁してください、この子は新人で――」
「ねえ…ここって、色んな草や花があるのね」

ラウを無視して、メイドに声をかけてみるけど…顔色が悪い。

「この篭…あなたが全部摘んだんでしょ?」

ザっと散らばった草花を見る。
床には、紫の花、黄色の花…変わった形のハーブらしきものなど、多くの種類がある。その中の一つ、私は毒々しい紫色の花を見つけた。

「お、お嬢様が気に掛けるほどのものはありませんよ」
「…そうかなあ」

伸ばそうとした手を、ラウがぐっと掴んだ。

「ああ、危険です。これは毒草です」
「そうなの?」
「触ったら…死にますよ?」
「……どうして、そんな危ないものを摘み取ってるの?」
「危険だからこそ、です」

メイドが運んでいたのは籠は一つだけ。
私自身は薬草に詳しいわけじゃないけど、頭の中のスキルのおかげで、散らばっている種類のハーブが毒かそうじゃないかの区別はできる。

(…すごい、頭の中に辞書があるみたい)

やっぱり…あのどす黒い花がべランドンナ、だ。

「…ええと、ラウだっけ?前も会ったよね」
「!」
「はい、お嬢様」

崩れていた襟元を直し、大仰に礼をする。

「ラウと申します」

…確かに顔は整ってる方かもしれないけど。こういうのが、ロザベーリの好みの顔なのかしら?お父様の方がよっぽどカッコいいわね。

「あなたは、薬草に詳しいのね」
「それほどでも」
「だって、一目でこれが毒って気が付いたんでしょ?」
「…それは、色が」
「なら、メイドさんは気が付かなかったってことだよね」
「え?!」

…頭の中の辞書に浮かんでいるのは、黒い実に、薄紫色の花。
発破の形も、さっき踏んだ時に感じた変なにおいも、このベラドンナの特徴らしい。
もしかして、普通のハーブと一緒にわざとベラドンナの花を紛れ込ませたの?

「それ、どこに運ぶ予定だったの?」
「そ、それは、…お、お夕食の」
「もし、万が一その毒草を使っちゃったら…たいへん」
「も、もうしけありませ…っ」
「……はあ」

なんだろう。
今、背筋がぞっとした。

「……賢い子供は好きじゃない」
「え?…!」

ふわりと急に足元が浮かぶ。

「ちょっと…なに!」

いつの間にか私は、まるでお荷物のように肩に担がれてしまった。

「…お嬢様は、好奇心が強い余り、森に飛び出して迷子になった」
「な なにを」
「あとは…そうだな、足を踏み外して、井戸に落ちてしまった、とか」

恐ろしいことをつらつらをと並べる。
そして、どんどん人のいないところに連れていかれる。

「はな はなして!!」
「もしくは…奥様にいたずらをして、顔に一生残るような怪我をする。っていうのもいいですねえ」
「どこに連れていくの!!はなせ!!」

じたばたと暴れても、子供の力が大きな大人にかなうわけがない。

「誰…」

叫ぼうとした瞬間、くらりと意識が遠のく。

(何、これ…急に眠気が)

「う…ただじゃ、おかない…わ よ」

そして、私は気を失ってしまった。



「ラ…ラウ様、お、お嬢様を…どうなさるおつもりですかっ…も、もし、ばれたら」
「バレる?…その前にいなくなっちまえばいいさ」
「いなくなって…って」

さあ、と血の引いた顔を見て、ラウは笑った。

「あんたも共犯だぜ?」
「そ、そんな!!私は何も…」
「そうだな…シナリオはこうだ。入りたてのメイドが、金欲しさに伯爵一家に毒草を入れるよう命じられた。が、それがリッハシャルに見つかり、自責の念に駆られ、死亡」
「うっ…」

どす、とナイフが胸を貫く。―――一息だった。
ぐらり、と前かがみになると、色とりどりの薬草の上に倒れ込む。

「ふうん…奥様が警戒するわけだ。子供でこれなら、将来相当な美人になるな」

手ごろな大きさの革袋を見つけ、そこにリッハシャルを放り込む。

(異国の血を引く幼い娘なんて、マニアの間では相当高値がつきそうだが…に手土産として渡す方が俺にとっちゃ、うまい話になる)

にやりと笑い、胸元のタイを外し懐から煙草を取り出した。

「そして現状、名門伯爵家の唯一の令嬢…ね」

ふ、と吐いた煙は空の闇に消えていった。


**


ガタン、ゴトン。

「う…」

頭がくらくらする。

(あれ?私一体…)

「?!」

がば、と起き上がり、自分の身体を確認する。
手足は縛られておらず、自由に動けるけど…ここはどこ?

(小さい部屋に、椅子…に、窓?)

窓を見ると…そこは森の中。

「えっ…ええええ?!」

私が厨房に行ったのが夕方だから…もう夜だ。
どうやら私が乗っているのは、馬車でどこかに移動している状態…窓の外は、多分どこかの森の中。
つまり、誘拐された、ということだ。

「う、嘘…」

(それより…あのラウって男、やっぱり怪しい奴だったんだ…)

でも、いきなり私を拉致するなんて、どういうつもり?
前と違って、私がいなくなったら探す人は必ずいるし、ラウはロザベーリの愛人でしょう?夫人にもリスクが伴うんじゃあ?それとも…それすら気にもならない程もっと強力なアドバンテージみたいなものでもあるの?

「そう言えば…ロザベーリと、レイドックは政略結婚…レイドックは名門と言われる家柄で、それに釣り合う家となると。もしかして…ロザベーリの、実家?」

政略結婚て、理由があるからするわけで…例えば、ルドヴィガ伯爵家の方が立場が弱くて、ロザベーリの実家の方が力が強かったとしたら。

(妾の娘をいびっても、不倫してても、ルドヴィガ伯爵が文句を言えない立場だったら?)

前世での、娘に対する塩対応も、理由が付く。
伯爵は異国の踊り子を自分の家に妾として迎えるのだって、大変だったはず。それで、取引みたいなものをしたのかもしれない。

「なら…私は、どこに連れていかれるの?…それとも」

殺されてしまうの?
…一度、死んだ身だけど、やっぱり、死ぬのは怖い。

(こ―言うときに、神様ガチャが何とかしてくれるんじゃないの?!)

ああ、もう。…詰んだ。
高速で移動する馬車に、か弱い5歳の子供がどう対処できるっていうのよ!!!
今までの出来事が走馬灯のように駆け巡…あれ、そう言えば。

「時間戻し券…もう一個、あるんじゃない?」

(一枚で5歳なら…生まれたてに、戻る…けど)

どうしよう…そこまで戻らなくてもいい。

「あ―――私そこまで勝負強くないんだってばああ…!!!」

他に何か…あ!

「そうだ!!…確か、時間制限付き運動能力をあげられる券があった!!!」

そう叫んだ瞬間、パッと目の前にいつもの金色のカプセルが現われる。
でも。と、はたとなる。

「運動能力あげたって…こっから出れなきゃ意味ないじゃん…」

せめて、ここから出られれば。
そう思い、馬車の中のドアノブをひねると…なんと開いた。

「!!…いけるかも」

馬車のドアから身を乗り出す。
…遠くに見えるのは、伯爵邸!!!

「よおし!…私はっ!!小さいけど、スーパーウーマンなんだからあああ!!」




―――その頃、伯爵邸では。

「騒がしいようですね」

つめを磨いていた侍女の一人が言うと、近くにいた侍女に外へいくよう促す。

「見てきます」
「お願い。…あ、奥様、今夜の香水はこちらでよろしいですか?」
「…そうね。これにして」
「珍しくていらっしゃいますね。…その、こちらの香水は」
「今日は、いつもより美しくさせてくれる?」
「は、はい。かしこまりました…」

やがて、外に出ていた侍女が戻ってきた。

「どうやら、リッハシャルお嬢様がいなくなったらしいと、使用人総出で捜索しているようです」
「リッハシャルが?」
「はい…もうこんな夜になるのに」
「……私も行くわ」

ネグリジェの上にローブを羽織らせると、ロザベーリは立ち上がる。
部屋の外では、いまだ走り回るメイドのルルの姿があった。

「あ、お、奥様…」
「何の騒ぎ?」
「その…リッハシャルお嬢様のお姿が見えなくて…!奥様はご存じありませんか?!」
「知らない」
「わ、わかりました…失礼します!」

ばたばたと走り去る後姿を見送ると、レイドックの声が聞こえた。

「シャルが…いない?!」
「はい…っその、お邸内のどこにもいらっしゃらなくて。メイドがひとり倒れて…料理人の、ラウの姿も…!」
「ラウ・カーザイナー…?!」

(あの男…)

「探せ!!…どこかにいるはずだ!!
「わ、わかりました!!」

(シャル…一体どこに…)

「随分と騒がしいじゃない」
「!」
「レイドック。随分と憔悴しきっているようだけど」

出ていった執事と入れ替わりに、やって来た一度ロザベーリを見て、顔をしかめた。

「……なんだその恰好は」
「…リッハシャルがいなくなったとか」
「ああ…何処にもいない。外に出るはずもないし…だが、誰もあの子を見ていないんだ!!」
「一度落ち着いては?…随分と取り乱しているようだけど、みっともない」
「……ロザベーリ、お前の仕業じゃないだろうな」
「………は?」
「お前はあの子を嫌っているだろう…っあの子に何をした!」

思いがけない言葉に、ロザベーリは絶句し、唇をかんだ。

「私は…あの子を護ると誓ったばかりなのに!」
「……レイドック、あなたはいつもそう」

そのまま懐にしまっておいた小さな瓶を取り出し、口に含んだ。そして

「…ぐっ?!」

レイドックの胸倉をつかんで口づけをし、それを飲ませた。
ソファーに押し倒し、馬乗りになる。

「な…っ?!」
「私を見ない!…リア―ナを見る…リッハシャルを見る!!あの二人のことになればこうも簡単に理性を失い、失態を犯す…!」
「何を…飲ませた!」
「知ってるでしょう?私の家門にある魔法の薬…ひとたび飲めば、あなたの内に眠る欲望を掻き立て、それに抗えなくなる…」

はだけた胸元にゆっくりと指を這い、優雅にほほ笑みながら耳元で甘い言葉を囁く。

「ねえ、あなたの身体は私を求めてる…わかってるはずよ?だってそれが本能だもの」
「…ッやめろ」
「…あなたが私を拒む権利はない」
「…ロザベーリ…っ!!」
「後継ぎが欲しいんでしょう?なら、作ってあげる。間違えないで?私があなたを選ぶの…光栄に思いなさい」



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