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しおりを挟む本町で馬車を降りた後は、すぐ奥町行きの連絡馬車に乗る。
ケーラル滞在中、本町に来ることもあるので、観光はそのときにでもする予定だ。
でも、ターミナル内の売店で名物の温泉卵だけ買っていく。
温泉卵といってもやわやわのではなく、ただ温泉で茹でたというだけの固茹で卵だ。
だが、なぜかうまい。
腹ふさぎに2個セットのやつと飲み物に温泉サイダーを買って、出発時刻待ちの間にターミナルのベンチで食べる。
卵にはほのかに塩味がついていて、素朴で優しい味。
卵じたいもケーラル内の養鶏場のブランド卵らしくて、黄身の味が濃い。
あっという間に二つたいらげると、次は飲み物。
卵に口内の水分を持ってかれたので、すぐに潤さねば。
瓶の栓を開け、ゴクッゴクッと一気にあおる。
しゅわ~っ。
冷たい炭酸は乾いたノドによく効く。
温泉水で造ったというが、まぁ普通のサイダーだ。
観光地でよくみるやつだが、でも見かけたらついつい買ってしまう。
そうこうしているうちに連絡馬車が定刻がきて出発。
このケーラル内の集落を行き来する馬車に乗って奥町へと向かう。
所要時間は30分も無い。
道中には農地や民家が並んでいて、観光地ではないケーラルの一面を垣間見ることができる。
そんな景色を眺めていると、あっという間に奥町に到着した。
「いらっしゃいませ、サイト様。遠いところよくおいでいただきました」
「お久しぶりです。今回はよろしくお願いします」
そう出迎えてくれたのは、ヤズヤの女将であるチエさん。
記憶が確かならば、歳のころは40を越えているはずだが、全然そうは見えない若々しく綺麗な黒髪の女性だ。
名前がなんだか前世を感じさせるが、それもそのはず。
このケーラルを興した勇者は、異世界から来たといわれており、この世界に様々な知恵と技術をもたらしたと言われている。
そして、このケーラルには、彼の故郷の文化が色濃く残っており、それが今日まで続いている。
現にチエさんや他の従業員さんも和服姿であり、建物も和式で土足厳禁だ。
ただここまで和テイストなのは奥町だけで、本町は普通の街並みにちょっと和の要素が混じるぐらいだ。
本町じたいは、奥町よりも歴史が浅く、当代風を取り入れつつも、外部からの観光客に向けて、ケーラル要素がそこいらにちりばめられている。
一方奥町の方は、文化保護のために大規模な改修や新造建築物に規制があり、自治体主導で昔ながらの街並みを維持している。
なので、通はあえて奥町の方に行くという。
女将さんに案内され、受け付けで宿泊手続きを済ませる。
「サイト様には、以前、大変お世話になりました。その御礼というわけではありませんが、今回はごゆるりとお楽しみください」
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