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「あ~、サイトさんだ」
足湯でまったりしていたところで、突然名前を呼ばれた。
「何してるの~?」
そう言ってパタパタと近寄ってくるチカちゃん。
そして、なんだなんだと興味深げにチカちゃんに付いてくるちみっこたち。
おそらく学校帰りなのだろう。
荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んだ手さげ袋をぶんぶんしながら、わいわいがやがやとこちらに近づいてくる。
「こんにちは」
「「「こんにちはー」」」
「今はね、この景色を見ながらゆっくりとしてたとこだよ」
「えー、景色なんて見てもつまらないじゃん?」
ちみっこの一人がそんなことを言った。
「そんなことないよ。イーモスの山々がこんなに大きくて綺麗に見えるのは、ケーラルくらいだからね」
俺のその答えに子どもたちは、ふ~ん、そうなんだー、となかなかピンと来てない模様。
それも仕方の無いことだろう。
なんせケーラルで生まれ育った子どもたちは、ここがどんなにすごい特別な場所だということを知らないのだ。
こんなに空気がきれいな場所は他に無いし、自然の恵みがもたらす彩り豊かな食文化を味わえる場所は二つと無いというのに。
この場所に来るために、毎年どれだけの人が危険の伴う長い道のりを越えて、ここまで来るのか、を。
「まぁ君たちが大人になって、外に出たりすると解るようになるよ。ここの素晴らしさが」
ふぅ、いい湯だった。
足湯からあがって涼みがてら、小さな地元民たちとの交流を楽しむ。
すると――、
「ねぇねえ、サイトさん。昨日のクッキーってもう残ってない?」
「まぁまだあるけど、食べたいの?」
チカちゃんがちょっとためらいがちに尋ねてきた。
「実は今日、みんなにちょっとだけ自慢しちゃって……」
なんでもチカちゃんは、あのクッキーが相当気に入ったみたいで、学校で散々言いふらしたそうだ。
王都で話題というのも子どもたちの興味を引いたようだ。
子どもたちもそわそわしながら、この交渉の行く末をうかがっている。
「仕方ないなぁ、みんなちょっとずつだけど、いいかい?」
「「はぁ~い」」
みんなそろって威勢のいい返事を返す。
パッキングで容量がとんでもないことになっている上着のポケットから、フィガロのクッキーを一人2、3枚ずつ出して配ると、みんなすごい勢いで食べ出した。
「うめぇー」
「おいし~い」
「これが都会の味かぁ」
「さいこー」
大げさなくらいすごい反応を見せる子どもたち。
この世界は甘味が高いというわけではないが、それでも子どもにとって美味しいお菓子は、冒険者にとってのお宝のようなものである。
さらにめったに食べられないレア物ならば、このリアクションもしょうがない。
「サイトさん、わたしのせいでごめんなさい」
「まぁここまで喜んでくれたなら、こっちも満足だよ。作ってくれたマスターにもいい報告が出きるしね」
「ありがと」
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