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しおりを挟む「久しぶりに美味しい魔力をもらったから、出てきちゃった」
水の精霊を名乗る少女は俺の手のひらで更なる魔力のおかわりをしながら、そう言った。
精霊というのは、古来よりその存在を認知されながらも人前には姿を表さない寓話的存在とされてきた。
たまに人類史の中に現れては、ときの人物を導き偉業の手助けをする存在であり、一種の信仰対象でもある。
また万物の中に精霊が宿るとされ、その力を借りることで魔法を発動すると信じられており、魔法を使う人にとっては、馴染みのある概念でもある。
その精霊という神秘の存在が、今目の前に姿を現している。
しかも、天真爛漫な少女のような人格を持っており、先ほどから好き放題にしゃべっている。
久方ぶりの人間との会話らしく、テンションが上がっているようだ。
正直、前世の記憶持ちでもなければ、未だにこの状況を受け入れることはできなかっただろう。
「ところであなたはなにものなの?」
精霊は訪ねる。
「なにもの、とは?」
「ふたつの魂が重なっているように見えるわ」
「!?」
この神秘的な存在は、どうやら俺の現状が見えているらしい。
「実はつい先日から、前世の記憶が目覚めまして――」
隠してもしゃあないので、転生の件についてしゃべる。一応、畏れ多い存在なので、敬語。
精霊はふんふんと頷きながら、俺の話を聞いている。
なおその間も魔力供給は続けたままだ。
「要はあの人と同じってことね!」
そういって精霊は、うんうんと納得した。
「あの人、とは?」
「ていうか、そーゆーかたい言い方やめてくんない?」
「ですが……」
「いーからいーから。良い魔力いっぱいくれたし、マブってことで」
「はぁ、わかりま――、わかったよ」
たしかにこんな感じの彼女に、ずっと堅苦しいのもやりづらい。
彼女の望むとおりに、自然体でやらしてくらおう。
「ちょっと前のことなんだけどね。ウチの地元にすげーセンパイがいたの。そのひとの彼ピがイセカイからきたって言ってた」
もしかして、ケーラルに移り住んだ伝説の勇者のことかな。
ハーレム築いて、その中には精霊の女王もいたとされてるし。
ただ、ちょっと前って、人間と時間感覚違いすぎる。
そして何気に、勇者異世界人説が確定である。
「私はさ、ちょい前にパイセンに言われてこっちに引っ越してきたわけ」
なんかギャルっぽい感じで語る精霊。
「でもさー、ここ狭いし、なんもすること無いしヒマなんだよねー」
確かにここは、奥ケーラルの豊かな自然と比べると、多少見劣りする風景である。
まるで、水源地を造り出すために、周囲から地力を集めているかのような。
「たまに手入れをしてくれる人がくるけど、話も出来ないし。それで段々飽きちゃって……。でも、そんなところにお兄さんが来てくれたの。マジでよかった~」
「そっか」
きっと人恋しかったのだろう。彼女の相手もまたメンテナンスのうちか。
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