83 / 96
82
しおりを挟む「お米の方はこっちから言うことないんで、もう完全にお任せするね。串の方はたまにひっくり返しながら、じっくり焼いておいて」
「解りました」
「わかったー」
「じゃあ俺はかまどの方を手伝ってくるから」
そういって、焚き火のそばから離れる。
竈の前では、マリーが鍋を混ぜている。
「あっ、サイトさん。イイ感じに煮えてますよ!」
こちらに気づいたマリーがお玉片手に嬉しそうに言う。
「ホントだ。もう味付けしても良さそうだね」
鍋の中は肉はホロホロ、根菜類も透き通って、火がしっかり通っている。時短魔法のおかげで、これぐらいの時間でも十分柔らかくなっている。
「なに味にするんですか?」
「やっぱり、煮込みといえば味噌でしょう」
煮込んだモツやスジからでる脂と味噌のコンビネーションといったら、もう。
トマト系とかももちろんアリだけど、郷に入っては郷に従えというし、ケーラルの味がいいだろう。米もあるし。
「いいですねぇ。暖まるんですよね」
ホントはここにケーラル酒もいきたいんだけど、彼女らは依頼遂行中なのでさすがに自重。
若い冒険者にワルい遊びを教えちゃいかんでしょ。
「てか、サイトさんって。ケーラル文化に馴染みすぎじゃないですか? 楽しみ方が地元のおっさんたちと一緒ですよ」
「お、おっさん……」
ナチュラルにグサッとくる若者の言葉。
まぁ、前世含めたらけっこういい年なので、おっさんでも仕方ないのかもしれないが。
「前に一度、仕事でケーラルに来たんだけどさ。そのときにビビッときてね。それからだいぶはまっちゃったよ」
「へぇ~、そうだったんですね」
「王都とかでケーラル料理食べようとしても、あんまない上に、値段が高いしね。しまいには、どうしても食べたくなって、つい旅行の日程を立ててたんだ」
だから今回の旅行を目一杯楽しんでいるのだ。
「まぁきっと、前世はケーラル人だったのかもね。それくらいビビッときたんだ」
正確には日本人、だけどね。
■
煮込みに溶かした味噌のいい香りが鼻をくすぐる。
「ん~、いい匂い~」
少しだけ自分の器によそい、味見をする。
「ん、いい味」
肉の脂から溶け出したうま味に負けない味噌のガツンとした塩気。
ここにさらに野菜の甘味も加わり、奥深い味になっている。
「やっぱり、煮込みは濃いめがうまいな」
山登りの疲れた身体に濃いめの味が効く。
「サイトさん、私にも、ヒトクチ」
俺のリアクションをみて我慢できなくなったのか、マリーが自分の容器を差し出してくる。
「ふふっ。はい、どーぞ」
必死なマリーに、煮込みをお玉で掬ってやる。小さめな肉もおまけにつけてやろう。
「あざまーす」
冒険者流のお礼をしながら、ごくりといくマリー。
「おいしーい!!」
「いいなー」
遠くから腹ペコの声がしている気がするが気にしない。
「味はこれで大丈夫そうだね」
「はい、すごく美味しいです」
やっぱ味噌の煮込みはみんな好きだよな。
食材のカットさえ事前にやっとけば、後は素人だって美味しくできる野外料理の主役だよ。
「後は食べる直前に香草類を入れて、完成だ」
0
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる