母ちゃんとオレ

ヨッシー

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母ちゃんと父さんとオレ

7話

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オレは翌日、ユウトくんと一緒に塾に行き、一緒に授業を受けた

塾が終わるとユウトくんが『ちょっとレベルが高くて、オレには内容がわからなかったw』と言うので、うちに連れてきて、その日の塾での授業内容のわからないところを教えた

ユウトくんは、いつもオレが勉強を教えている時は、驚くほど真面目に取り組む

元々頭は良いので、オレも教えるのが楽しいし、ユウトくん的にもオレから教わるのが一番わかりやすいらしくて、楽しいとの事だった

「ユウトくんは勉強頑張って、何が目標なの?」
「んー…今のところはわからねえ…ただ、何かやりたいと思った時に、すぐに手を出せるようにしときたいってのと、ハルにちゃんと勉強教えてあげたいからかな」
「そっか…ハルちゃんに教えるには十分だと思うけど、何になりたいかは考えてた方がいいよ」
「だな…けど、オレみてえなガキの人生経験で、何がやりたいなんて、そうはわからねえよ…」
「…たしかにね…高校はやっぱり、ハルちゃんと同じとこ?…ユウトくんならもっと良いとこ入れるよ?」
「…甘い考えだと思うよな…けど、オレはやっぱりハルが大事だ…」
「ううん…人は大事だよ…自分の人生を作るのは、大切な他人って言ってた…だから、その作ってくれる人を間違ってはいけないと思う…ハルちゃんなら大丈夫だとオレも思うよ」
「…ありがとw…オレには甘いなw」
「うんw…まあ、たしかにレベルの高い学校に行ってた方が、その先の簡単さとか可能性の大きさは有利だけど、どこ行っても自分次第だよ」
「ああ…だから今頑張ってるつもりだよ」
「うん…たしかにw…ごめんね、なんか…生意気言ったねw」
「いいって別にw…オレはカオくんには世話になりっぱなしだよ」
「そんなことないw…もしそうだとしても、オレは前回のユウトくんに世話になりっぱなしだったから、おあいこw」
「そんなにオレ、優秀だったんだなあ」
「うんw…オレなんかバカすぎたw」
「全然今のカオくん見てると、そうは思えねえw」
「でもホントにそうだったんだよw…16歳になっても『履歴書』って文字が読めなかったんだからw」
「マジ?!w」
「うん…それがユウトくんとハルちゃんとの出会い」
「そうなの?」
「うん…ハルちゃんちのセブンでね、バイト募集のポスターに、履歴書持参って書いてあってね…それが読めなかったから、すぐそばにいたユウトくんたちに聞いたんだよw…ユウトくんもハルちゃんもチャラかったけど、優しく教えてくれたんだよ」
「チャラかったんか、オレw」
「うん、一見ねw…あ、でも、そういえばハルちゃんも『アタシ、ふくれきしょだと思ってた』とか言ってたww」
「ゲラゲラwww…ハルの頭は筋金入りにわりぃじゃねえかw」
「かもねw…でも、別にそんなの問題ない…心が素晴らしいから」
「うん…まあ、ぶっちゃけ専業主婦がちゃんと出来りゃいいしな」
「ハルちゃんは働くの嫌だって言ってたしね」
「ならオレは、やっぱり勉強しておく」
「うん…ユウトくんは優秀だから大丈夫」
「ありがと…カオくんに言われると自信が出るよ」
「オレも、ユウトくんが居ると、なんでも出来る気がする」
「よそうぜw…照れくせえよ」
「うんw」
「カオくんよ…」
「ん?」
「高校違ってもさ…オレに付き合えよな」
「当たり前だよ…親友!…ギュ」
「照れくせえってw…親友!…ギュ」

そんな話をして、ユウトくんは帰っていった
ユウトくんを見送っていると、ちょうど父さんが帰ってきた

「あ、カオくんパパさん…こんばんは…おじゃましてました」
「おお!…ユウトくん!…いや、相変わらず立派だねw…久しぶりだけど、会えて嬉しいよ」
「ありがとうございますw…こちらこそです!…今度またおじゃまします」
「うん、いつでもいらっしゃいw」
「はいw…じゃ、カオくん、また明日学校でな」
「うん、またね!…ギュ」
「おう…ギュ」

「仲良しだなw…ハグまでして」
「うんw」
「良い友達だなあ…羨ましいよ」
「オレもさ、最高にラッキーだと思う」
「いや違うよ…良い意味での因果応報だよ」
「そっかな///」
「ああ…ナデナデ」
「父さん、明日は父さんのとこ遊びに行くね」
「ああw…なるべく早く帰るよ」
「うん…これから母ちゃんと桃鉄する」
「大変だな…忙しいなw」
「いいんだ、楽しいから」
「そうかw」

それから母ちゃんとまた桃鉄をする

「おおう…ぐへへw…たいらのまさカード」
「やべえw…刀狩りねえw」

たいらのまさカードってのは各プレイヤーの所持金を平均にしてしまうやつ
オレが一番所持金多くて、母ちゃんとさくまはほとんどないから、オレだけ損しちゃう
嫌なカードだけど、決算の収益が多いオレには実は大した痛手じゃない
それでも母ちゃんの復活のキッカケになるのはたしかだから、むしろ良かった
でも痛手を受けた演技はしとこうw

「知ってる~w…よーし…」
「うわw…やられたw…けど、さくまも調子づいちゃうよ」
「じゃあ、まずは一緒にさくま潰そうよ」
「いいねえw」
「おーし、さくま潰し協定をここに結びました」
「おーし」

そして翌日、オレは学校から帰宅後、父さんのアパートに行った
早く帰ると言っていたけど、仕事の帰りなので早くても6時は過ぎる
オレは玄関ドアの前で、勉強をして待った

「ただいまw…こんなとこで勉強か…すごいなw」
「うん…六法全書、覚えておかないとね」
「いや、我が子ながらすごいw」
「父さんの子だからだよw」
「お前…クゥ…と、とりあえず中に入ろうか…ウル」
「うん」

「カオくん…このアパートの鍵…預けておくよ」
「…ありがと!」
「母ちゃんが寂しくならない程度においで」
「うんw…ところでさ、そのヨドバシの袋は?」
「ふふふw…見ろ」
「ベイブレードww」
「最新の奴だw」
「おお~…やろうやろう」
「父さん、ベイブレードについて、少しは勉強したからな」
「おお!w」
「そこでカオくん、オレたちのルールを作らないか?」
「どんな?」
「アタックタイプ以外使用禁止」
「マジ?w」
「うんw…父さん、あの持久の回り終わるの待つのじれったいし、なんかセコいだろ」
「うんw…強いけどねw…バランスもダメ?」
「んー…それはいいよ…ただ、ディフェンスとスタミナはなし」
「拒否権は?」
「なしw」
「わかったw」
「バーストしてなんぼよ」
「ブフww」

そんな感じで、オレは母ちゃん、父さん、ユウトくんと、どうにかこうにかバランスをとって付き合った

塾もあるし、忙しいけど、頑張るしかない
受験勉強もろくに出来てないけど、それは大丈夫だと思う

そして、父さんとベイブレードをやり始めてから二ヶ月が経った

父さんはミニ四駆のコースも買って、2人でミニ四駆でも遊んだ

「オレ、子供の頃は勉強しろってうるさくてさ…あんまり遊んでなかったんだよ…だからなんか嬉しいわ」
「勉強ばっかり?」
「うん、そうだな…別に嫌いってわけじゃないからやってたわ…」
「父さん、オレね…物事って絶対に『良い塩梅』ってあると思う…1でも10でもダメになる…だから何やるでも、塩梅を見極めてやるのが良いんだと思う」
「すごいなカオくんw…その歳でさw…それはでも本当にそうだよな…ミニ四駆だってスピード遅かったらつまらないし、上げすぎたらコースアウトするもんな」
「うん…コースアウトしないギリギリを安定して走れるのが、きっと『良い塩梅』なんだと思う」
「よーし…じゃあ、対戦するより、一緒にその『良い塩梅』マシンを作るかw」
「うんw…楽しそう」

そんなこんなでオレは、ついにかねてから考えていた計画を実行に移す事にした

と言っても、大した事ではなく
ただ母ちゃんを、父さんのアパートに連れて来るだけだ

父さんも、オレと遊ぶようになってからは、出来る限り早く帰るようになった

オレはその日、学校から帰宅後、自転車でスーパーに行き、食材を買って、父さんのアパートに食材を置いてから、家に帰って母ちゃんを連れ出した

「どこ行くの?」
「いいからいいから」
「どこ~?」
「黙ってついてきなさい」
「あうあ~」
「ブフw…静かにしなさいw」
「おうお~」
「こら!」
「カオくんが怒った~」
「母ちゃんw」

2人で自転車で、父さんのアパートに着く

「ここだよ、母ちゃん」
「え?…ここ?」
「うん…着いてきて、2階だよ」
「う、うん…」

そして、父さんの部屋に合鍵を使って入った

「入って、母ちゃん」
「わ…何ここ…カオくんの遊び場?」
「違うよ…違くもないけどw…ここはね…父さんの秘密基地だよ」
「え?…父さんの?」
「そう…母ちゃんは浮気してると思ってたでしょ?」
「…う、うん…少し…」
「全然だよw…父さんはここで1人で居たんだよ…たった1人で」
「そうなの…」
「母ちゃんも寂しがりだから、1人で居る辛さ…わかるよね?」
「うん…」
「でもどうして父さんがこうして、部屋を借りてまで1人で居たかわかる?」
「…どうして?」
「母ちゃんはオレの事好きでしょ?」
「うん!」
「オレも好き…だからオレは母ちゃんを大事にする…それは当たり前」
「うん///」
「母ちゃんもオレを好きだから、大事にするよね?」
「うん…当たり前」
「でも、母ちゃんはそのせいでオレばっかりだ」
「…え」
「オレはね…母ちゃんが好きだからそれが嫌なわけじゃないよ?…でもね、父さんから見たらどう映ると思う?…父さんは自分の家で、自分の妻にほったらかしにされて…息子とばっかり話して…それを母ちゃんが逆にされたらどう思う?」
「…やだ…グス」
「うん…ギュ…母ちゃん、『孤独』ってのはね、周りに人が居れば孤独にならないわけじゃないんだよ…周りに人が居るから孤独を感じるの…居場所がないって思うくらい孤独を感じるなら…こうして最初から1人で過ごす方が楽なの…だから父さんはここに1人で居たんだよ」
「うう…母ちゃん…酷いね…グス」
「…そう…酷いこと…残酷な事をしたね…でもいいんだよ…母ちゃんだって孤独だったんだからさ…仕方ない事」
「…カオく~ん!…ギュ」
「でもね…それでも母ちゃんと父さんとオレは、家族なんだ…だからこれからだってきっと支え合っていける…ギュ…母ちゃん、父さんへ心を向けて?」
「…うん…」
「うん…約束する?」
「うん!」
「じゃあ指切り」
「うん…ギュ」
「オレはさ、母ちゃんと父さんがまた仲良しになって…見たくはないけど、セクロスもして欲しいよw」
「え~w…もう///…そんな事カオくんが言うなんて思わなかったよw」
「あははw…正直言ってさ…息子のオレとしては母ちゃんは『母』であって欲しいけど…母ちゃんも『女』として生きていいんだ…母ちゃんはまだキレイだからさ…ね?…幸せはたくさんあっていい」
「うん…グス」
「でも、なるべくはオレに隠してよ?w」
「うんw…けどまだやり直せるかわかんない」
「だねw…でもそれは、やらない理由にはならない」
「…大人だなあ…カオくん」
「母ちゃんが子供だからねw…ここは一つオレもたいらのまさカード使わせてもらうよ」
「…?…」
「家族の愛にね」
「ああw…うん…なんか…父さんに会いたくなってきた」
「あははw…もうすぐ帰ってくるよ」
「…なんか緊張してきた…」
「それでいいよ…」

そして少し待つと
『ただいま』という声と同時に、玄関のドアが開いた
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