【夢小説】夢まち 「痛みは消せない。忘れるしかないんだよ」記憶の奥の物語によって

ロボモフ

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まどろみ皇帝

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 推敲に次ぐ推敲は破壊に近づいていく。宿題をとき終えてからでなければ、悪夢はより濃いものとなるだろう。グリップがおぼつかない。微動する指先から、引かれ始めている。海月道、猫落ち葉、バナナ竜。歪んだ風景が、罫線の縁から介入してくる。恐ろしくもあり心地よくもある。誰の使いだ?

「まどろみ皇帝だ」
 邪悪な奴め。金魚、キャラメル、ちりとり、バームクーヘン、くさりかたびら、岩石、毛虫、消し屑。横殴りのノイズが、覚醒の邪魔をする。皇帝は、余計なものばかりをよこすもの。

「あなたが呼んだのでしょう」
「うるさい!」
 幻聴に抗って僕はまだ留まれる。夢の浅瀬こそは現の絶頂期なのだ。ここにいたい。先へ進みたい。この決戦は、引き裂かれそうなほどの高揚の中にある。反逆者の残党がペン先を奮い立たせる。掌編の構図が歪み、世界観が荒れている。グリップは現の淵に生の執着をみせてしがみついていた。

 まどろみ皇帝の押すブランコが揺れている。土埃を上げながら少年はボールを蹴っていた。木が少年を止める。猫が少年から奪おうとする。どこでどこに触れてもいい。それを全面幸福と少年は呼んだ。
「ここにあったの」
 少年の足下に素晴らしいタッチはあった。
「何を探すことがある?」
 既に見つけてしまったあとで。

 ブランコは夢と現を行き来している。
 この風だ。空間だ。重力だ。
 ここでつかめ!と本能が叫んでいる。
 ここにあるものはここにしかない。ここで手にしたものが次の夢を決めるだろう。僕の宿題は、何にもならないことを取っておくことだ。(それは未来の下敷きとなる)死を忘れながら生きられる人間にならできること。
 強まるまどろみ皇帝の攻勢。僕は風に手を伸ばす。
 ここでつかめなければ、この先ではもっとつかめないだろう。

 ここでつかめ!

 ここで最後の仕事(わるあがき)をするのだ。
 日曜、ペンギン、幸福、ロールケーキ、革靴、エルモ……。
 ブランコの軋む音が消えた。

 僕は泡の中にいる。海? 雨か。
 飛んだのかな。(負けたのか)
 落ち葉をつれた猫が、楽しげに泳いでいる。
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