【ショートショート】ひとつまみ シュールにドアをノックして

ロボモフ

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まずーい話

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「せめてお名前を」
「名乗るほどの者じゃござんせんぜ」
「いいえ、せめてお名前だけでも」
 別に名を売りたくて助けてるわけじゃない。
 時に不可解なリクエストが俺の足を引っ張る。

「どうせ忘れんだろ」
「ええっ」
「教えたところで明日には忘れちまう」
「そんなことは……」
「だったら教え損じゃねえか」
「私は忘れません」
「忘れないって言う奴ほど忘れんだよ」
「絶対に忘れません」
「じゃあな」
 振り切って帰るくらいには俺は冷酷にできている。

「ここに書いてください!」
「あーん?」
「ほら、ここに。ここに書いて! だったら忘れない」
「そうかあ」
「書いて! ちゃんと書いて!」
 俺は奴の懇願に負けた。
 本当は忘れられてこそ粋なのかもしれない。

 次の週から俺の家にまとまって青汁が届くようになった。
 ちっ!
 奴め。
「俺の名前を売りやがったな」

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