半透明人間

知識人と僕

504.砂_SUNA

新月で一番暗い夜に、
見晴らしの良すぎる畑を通り過ぎて、
どうにかじいちゃんの家の裏門まで辿り着いた。

待ってくれていたからか、
門の鍵も家の鍵もかかっておらず、簡単に開いた。

まずは弟が家に入って、様子を確認しに行ってくれた。

俺はドアの近くで見張りをして待った。


しばらくして、弟は少し成長した半透明な幼馴染と共に二階から降りてきた。

「待ってたよ」

そう言って、彼は足音を立てすぎないように、屋根裏部屋まで案内してくれた。

もちろん鍵は閉めた。


久しぶりで積もる話もあるが、
それより一つ気になることがあった。

じいちゃんがいなかったのだ。

幼馴染は手短に状況を教えてくれた。



あのじいちゃんからの返事は半透明の幼馴染が似せて送ってくれたものだったそうだ。
もうじいちゃんも長くない。

だからこそ、じいちゃんは勝負に出た。

そしてちょうど僕の手紙をみた彼も僕らの命に勝負をかけた。


じいちゃんは最近、新月の夜
お手伝いという名目で父と母がいる都市と反対側にある都市に定期的に行ってるらしい。

でも本当は半透明人間の無害性を主張する集まりのために行ってるらしい。

そこには、政治家や軍人、じいちゃんみたいな医師や先生など、さまざまな立場の不透明人間が集まるらしい。

その共通点はただ一つ、半透明人間の家族を守って自由にしたいと。


そして、夜が更に深まった頃、
無線がなった。

「そこにいるのか。
早速で悪いが、あの日の包帯を巻いた男の話を聞かせてくれないか」

機械越しに聞こえるじいちゃんの声は昔より少し丸くなった気がする。

幼いながらに理解した記憶。
曖昧にしか覚えていない、忘れられない記憶。