〇が多い冒険書

雪桜 snow

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最悪な一日

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朝、俺が目覚めると、玄関に一つの箱が置いてあった。

「何だ、あの箱?」

俺は、少し寝ぼけながら布団からはい出て、箱の前まで行った。届け間違いか、とか思いながら重い目をあけ、宛先を確認した。

「黒澤 時雨」

俺の名前だ。何度見ても俺の名前だ。
確かに俺は極度の引きこもりで、親に家から追い出され、この小さな家で独り暮らしをしてるけど、それをいい事に必ず一週間に二回は本を十冊以上ヒマゾンで頼むから、届け間違いがあってもおかしくはないが、この前頼んだ本は昨日全て届いてる。届け間違いしてもおかしくない程、ヒマゾンにはお世話になっているが、何度見ても俺の名前だ。

落ち着け、俺。日本語が変になってきてる。
普段の俺は、何にも関心がなく、静かで冷静で口数が少ないが、本の事になると何故かテンションが高くなり、日本語が変になってくる。
まあ、そんな事はどうでもいい。俺は、恐る恐る箱を持ち上げた。

「何が入ってるんだ?箱のサイズ的には本なんだろうけど、重いな。」

取り敢えず、ついてるガムテープを剥がし、箱を開けた。

「〇が多い冒険書」

何だこれ?箱の中に手を入れ、分厚い本を取り出した。

「うわっ、思ってたより重いな。っつ、痛っ!」

あまりの重さに、本を足の上に落としてしまった。

角が刺さったあぁぁぁぁ!
何だよもう、こんな運の悪い朝は初めてだよ!
俺は足をおさえながら、変な本の表紙をめくった。

その時、パアァと本が光り、一匹の妖精が飛び出てきた。お約束の事ながら、勢いよく飛び出てきた妖精は、俺の頭に激突。

痛っ!!!!!!

激突の衝撃で、床に座っていた俺は、後ろに倒れ思いっきり頭を打った。ほんと、今朝はついてないな。足の次は頭か。額は痛いし、後ろの方も痛いし、一体何が起きてるんだ?頭を抑えながらゆっくりと起き上がり、辺りを見渡した。

「さっき、妖精が飛び出てきた気がしたんだけど、何処だ?」

その時、テーブルの下に光っている物を見てけた。これか。俺は、そっと妖精を摘んだ。

「おい、大丈夫か?起きろ。」

「うぅ、痛いですぅ。あれ、浮いてるですぅ?」

妖精は、自分が浮いてる事に気付いたらしく、ゆっくりと顔をあげた。

「あぁぁぁ、人間ですぅ!!」

「うるさい。」

俺は、妖精の額にデコピンした。


「で、君は誰?何であの変な本の中から飛び出してきたの?」

「そうでしたぁ、私は妖精のアミルと申します。宜しくですぅ。」

切り替え早いなおい。ぱぁっと笑顔になった妖精アミルは話を続けた。

「黒澤 時雨って人は何処ですかぁ?」

「お前の前にいる奴だけど?」

「え?」

「ん?」

「あなたですかぁ?」

「そうだけど。まさか、知らずに本の中から飛び出してきたのか?!」

「えぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「うるさい!」

「うぅぅ、痛いですぅ。」

「お前が悪い。で、何で出てきたんだ?」

「えっと、黒澤 時雨様を迎えに来たんですぅ!」

「俺を迎えに?何処に?」

「はい、時雨様には、私と一緒に異世界に行ってもらいますっ。」

「え?」


いきなり飛び出してきた妖精アミルの口から出てきた、突然のとんでもない言葉。
俺の人生はこれからどうなるんだ?!
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