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幽霊部に入部なんて聞いてない。
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絶対に破って欲しくない約束。これは約束をした、と証明できる物的証拠がない限り、破って構わないものと見なしてもいいのではないだろうか。
社会に出ると、何らかの重要な取り決めをする機会が必ず訪れるはずだ。その取り決めは全て、何らかの書面に残される。例えば誓約書。例えば契約書。例えば確約書。例えば確認書。それはなぜか。重要だからである。絶対に破ってはならないからである。
では、重要な取り決め、約束をしたということを目に見える物として残すのが社会通念なのであれば、逆説的に目に見えるものとして残していない約束事は、重要でないと言えるだろう。
だから俺の考えも、この行動も、間違っていない。だって明日教室で待っていろなんて契約書、無かったし。
そんなことを考えながら俺は、窓からぼんやりと差す夕日によって仄かに赤く染まった廊下を、かつてない速さで駆けていた。
クラスの誰よりも教室を早く出たことが功を奏したようだ。我が覇道に一点の曇りなし。
勢いを殺さずに昇降口にて下足をかっさらい、洗練された無駄のない動きで校舎を飛び出す。残念だったな大仏。部活に行かねえ奴は帰るのが速いことを知らねえのかよ。中学でも俺の下校の速さは群を抜いていたしな。逃げさせてもらうぜ。
ハハハハハハハハハハハハっっやばい。
調子に乗った人間は、そのほとんどが破滅の道を歩むものである。だが、ごく稀に調子に乗っても破滅しない。そんな人が存在する。いわゆる天才のことだ。天才は失敗とは無縁である。故に調子に乗ろうが乗らまいが、成功するという結果はなんら変わりないのだ。
俺は自分のことを速攻下校の天才だと、俺の下校を阻むことができる者は存在しないと、失敗など有り得ないと自負していた。
だが、この高校に俺を捉える者が現れるとは。大仏が、自分は天才だという俺のプライドを無残に打ち壊した。
「お前が俺との約束を守る訳がないからな。校庭で待っていて正解だった。さあ白崎。楽しい部活の始まりだ」
「なんでここにいんだよ。止めて。ストーカーで訴えますよ」
「やれるもんならやってみろ。とにかく部活に行くぞ」
そう言いながら、大仏は俺の首根っこを掴みにかかってくる。
「止めて。本当に止めて。暴力反対。全部拳で解決すんの?GTOなの?」
適当にはぐらかしながらヌルヌル避けていても、運動不足の男子高校生の体力は非常に低い。一分と保たずに捕まってしまった。
「痛い~折れる~」
「白々しいにも程があるぞ。いいから黙って付いて来い」
迫真の演技をするも、虚しく失敗に終わってしまう。
これ以上の抵抗はカロリーの無駄になってしまう。せっかくの放課後を無駄に使ってしまうが仕方ない。断腸の思いに耐えながら、大仏に引きずられるままに、来た道を取って返す。
「これから向かうのは君のような変わった者が集まった、変人の巣窟という表現が妥当に思えるような部だ。少なくとも前の部よりは過ごしやすい筈だぞ」
「部活である時点でそこは俺の居場所じゃないですよ。それに、俺は変わった奴じゃない。変わった奴なのはこの学校だ」
「いんや。十分変わってるよ。変人の巣窟でも1、2を争うほどに。
君の部活嫌いはそこまでいくと称賛に値するな」
「称賛するなら自由をください」
さほど意味のないやり取りを交わしながら、大仏が言う、変人の巣窟へと歩を進めていく。
青葉台高校の校舎は、カタカナのエのような形を取っている。校門側、校庭側の踊り場がある面をエの下中央部と見るのであれば、俺が今向かっているのはエの左上の部分だろうか。そこは、今は使われていない空き教室が点々とあるだけの閑散とした場所だったはずだ。地味だからか、文化部の部室にも使われていない。
そんな場所にある部室。それは隔離病棟のような印象を俺に与えた。腐ったみかんは腐ったみかん用の箱に入れておこうとでも言うのだろうか。
なんとも言えない感情に俺が苦笑いを浮かべているうちに、目的地についたようだ。
大仏は引き戸をノックし、返事を待たずに部屋へと入っていった。
ようやく解放された襟元をさすりながら大仏に続くと、4人の男女が一斉に俺に視線を向けた。一人は野菜を品定めするように。一人は檻の中にいる動物を眺める小学生のように。一人は路肩の小石を見るように。一人は子に愛情を注ぐ母親のように。全員俺とは面識がない。
俺は彼らにどんな視線を彼らに送っているのだろうか。彼らはそれをどう受け止めているのだろうか。そんなことを考えていると、隣で大仏が咳払いをして口を開いた。
「顔合わせはもういいな。紹介しよう。今日から幽霊部の部員になる。白崎柊治だ。ほら白崎。挨拶挨拶」
「いや聞いてないんすけど。幽霊部?変な名前っすね。変人部としか聞いてないんすけど」
オカルト関係の部だなんて聞いてないんすけど。
「変人部も相当に変な名前だと思うが・・・・・・。
選びたまえ。茶道部に居続けるか、この部に入るかだ。この部に入るなら転部届をお前にやろう」
「入ります」
この学校では、なんらかのやむを得ない事情がない限り、転部することは許されていない。継続的に物事に取り組む姿勢を身につけるためらしい。続けたから何かを成せるなんてのは、単なる妄想でしかない。それが全てに当てはまるだなんて、だから続けることを強要するなんて、傲慢だ。続けても何にもならないことだって世の中にごまんとあるだろう。今の場合、抵抗とか。茶道部から転部したかったってのもあるけど。
思い通りに行ったことに機嫌を良くしたのか、大仏は「じゃあ転部届けもってくるは」なんて言いながら鼻歌交じりで部屋を出て行ってしまった。
地味に今の俺、宙吊り状態なんだが。超心細いんだが。こんな気持ち、部活に行ってない件で職員室に呼ばれた以来なんだが。
何をすればいいのか伝えられていないので帰ります、とはここまで来てしまっては言えない。唐突に訪れた試練に冷や汗を流しながら、とりあえず部屋を熟視する。
普通の教室くらいの広さで、やや薄暗い。中央に何スチール机が無造作に置かれており、机の上には、字がびっしりと敷き詰められたノートや、マグカップが散乱している。その周りに4人は椅子を並べていた。壁際には、木製の物置棚や本棚が並んでいる。置いてあるものは、テディベアから美少女フィギュアまで、漫画から教科書までと、多種多様だ。
見ているうちに楽しくなり、あれレア物のフィギュアじゃね?と一人ぼそぼそつぶやいていた俺を見かねて、一人の女生徒に声をかけられた。
「白神、だったな。歓迎しよう。ここが幽霊部だ。ちなみに私は3年B組。部長の藤咲葉月だ。よろしくな」
藤咲先輩、か。これだけ綺麗な顔立ちであれば人生がどれだけ楽だろうか。少なくとも、初対面の俺が圧倒されるだけの美しさを彼女は持っていた。今時珍しい、絹織物のような艶やかさを持つ深黒の髪。髪の美しさを際立たせてなをそれ一つでも神々しい、きめ細やかな純白の肌。切れ長の大きな目に、筋の通った形のいい鼻。鴇色の薄い唇。全体的にほっそりとした印象を受ける体。でも安心してください。出るとこはちゃんと出てます。男らしい口調とのギャップがすんげえ。守ってあげたい。というか守られたい。さらに言えば養って欲しい。
あまりの美しさに無くしていた言葉を必死で手繰り寄せ、なんとか挨拶する。
「よ、よろしくお願いします。2Aの白崎柊治です」
柔和な笑顔で答えてくれた。は~。尊い。優しい。尊い。
俺と藤咲先輩とのやりとりを封切りに、他の3人も口を開いた。
「私は3Aの榎並六花。好きな食べ物は~コンビニスイーツ。よろしくね」
向日葵のような人だ。表情豊かで、快活な印象を受ける。梓実と似てるな。いや、雰囲気が。大きなことを夢見ているかのように煌きを放つまんまるな瞳をはじめとして、顔のパーツがまだあどけなさを帯びているため、美人というよりは美少女と言うべきだろう。何やら運動でもしていたのだろうか。髪は短く、程よく筋肉がついている。決め手は胸がない。っていうか「六花」っぽくないっす。雪っぽくないっす。向日葵でいいじゃん。
「2Cの松崎歩夢。よろしく」
ぶっきらぼうな彼は、俺と同じ2年らしい。知らんかった。メガネに坊ちゃんヘアー。細い体つき。校則に則った服装。睨めつけるような視線がちょっと怖い、完全な優等生風、あるいはオタク風男子。容姿端麗な人が2人来た後に俺と同じ平凡な人が来ると安心するね。
「どうも、1A霞暁です。よろしくお願いします。先輩」
朗らかな笑みを頬に讃えながらこちらを見上げて来るのは後輩らしい。整った輪郭を持つ顔の上に、彼のミケランジェロがノミで丁寧に掘ったのではと見まごうほど左右対称な美しいパーツが乗っている美少年。憎らしい。見ていたら気持ち悪くなるような美少年。決して比喩ではない。現に、その均整のとれた顔の、これまた美しい黒曜石の目には、吸い込まれそうな危うさがあった。
一癖も二癖もありそうな人達だ。差し出された椅子に座りながら、早速どうやって自然に消えようかと、思いを巡らせた。
社会に出ると、何らかの重要な取り決めをする機会が必ず訪れるはずだ。その取り決めは全て、何らかの書面に残される。例えば誓約書。例えば契約書。例えば確約書。例えば確認書。それはなぜか。重要だからである。絶対に破ってはならないからである。
では、重要な取り決め、約束をしたということを目に見える物として残すのが社会通念なのであれば、逆説的に目に見えるものとして残していない約束事は、重要でないと言えるだろう。
だから俺の考えも、この行動も、間違っていない。だって明日教室で待っていろなんて契約書、無かったし。
そんなことを考えながら俺は、窓からぼんやりと差す夕日によって仄かに赤く染まった廊下を、かつてない速さで駆けていた。
クラスの誰よりも教室を早く出たことが功を奏したようだ。我が覇道に一点の曇りなし。
勢いを殺さずに昇降口にて下足をかっさらい、洗練された無駄のない動きで校舎を飛び出す。残念だったな大仏。部活に行かねえ奴は帰るのが速いことを知らねえのかよ。中学でも俺の下校の速さは群を抜いていたしな。逃げさせてもらうぜ。
ハハハハハハハハハハハハっっやばい。
調子に乗った人間は、そのほとんどが破滅の道を歩むものである。だが、ごく稀に調子に乗っても破滅しない。そんな人が存在する。いわゆる天才のことだ。天才は失敗とは無縁である。故に調子に乗ろうが乗らまいが、成功するという結果はなんら変わりないのだ。
俺は自分のことを速攻下校の天才だと、俺の下校を阻むことができる者は存在しないと、失敗など有り得ないと自負していた。
だが、この高校に俺を捉える者が現れるとは。大仏が、自分は天才だという俺のプライドを無残に打ち壊した。
「お前が俺との約束を守る訳がないからな。校庭で待っていて正解だった。さあ白崎。楽しい部活の始まりだ」
「なんでここにいんだよ。止めて。ストーカーで訴えますよ」
「やれるもんならやってみろ。とにかく部活に行くぞ」
そう言いながら、大仏は俺の首根っこを掴みにかかってくる。
「止めて。本当に止めて。暴力反対。全部拳で解決すんの?GTOなの?」
適当にはぐらかしながらヌルヌル避けていても、運動不足の男子高校生の体力は非常に低い。一分と保たずに捕まってしまった。
「痛い~折れる~」
「白々しいにも程があるぞ。いいから黙って付いて来い」
迫真の演技をするも、虚しく失敗に終わってしまう。
これ以上の抵抗はカロリーの無駄になってしまう。せっかくの放課後を無駄に使ってしまうが仕方ない。断腸の思いに耐えながら、大仏に引きずられるままに、来た道を取って返す。
「これから向かうのは君のような変わった者が集まった、変人の巣窟という表現が妥当に思えるような部だ。少なくとも前の部よりは過ごしやすい筈だぞ」
「部活である時点でそこは俺の居場所じゃないですよ。それに、俺は変わった奴じゃない。変わった奴なのはこの学校だ」
「いんや。十分変わってるよ。変人の巣窟でも1、2を争うほどに。
君の部活嫌いはそこまでいくと称賛に値するな」
「称賛するなら自由をください」
さほど意味のないやり取りを交わしながら、大仏が言う、変人の巣窟へと歩を進めていく。
青葉台高校の校舎は、カタカナのエのような形を取っている。校門側、校庭側の踊り場がある面をエの下中央部と見るのであれば、俺が今向かっているのはエの左上の部分だろうか。そこは、今は使われていない空き教室が点々とあるだけの閑散とした場所だったはずだ。地味だからか、文化部の部室にも使われていない。
そんな場所にある部室。それは隔離病棟のような印象を俺に与えた。腐ったみかんは腐ったみかん用の箱に入れておこうとでも言うのだろうか。
なんとも言えない感情に俺が苦笑いを浮かべているうちに、目的地についたようだ。
大仏は引き戸をノックし、返事を待たずに部屋へと入っていった。
ようやく解放された襟元をさすりながら大仏に続くと、4人の男女が一斉に俺に視線を向けた。一人は野菜を品定めするように。一人は檻の中にいる動物を眺める小学生のように。一人は路肩の小石を見るように。一人は子に愛情を注ぐ母親のように。全員俺とは面識がない。
俺は彼らにどんな視線を彼らに送っているのだろうか。彼らはそれをどう受け止めているのだろうか。そんなことを考えていると、隣で大仏が咳払いをして口を開いた。
「顔合わせはもういいな。紹介しよう。今日から幽霊部の部員になる。白崎柊治だ。ほら白崎。挨拶挨拶」
「いや聞いてないんすけど。幽霊部?変な名前っすね。変人部としか聞いてないんすけど」
オカルト関係の部だなんて聞いてないんすけど。
「変人部も相当に変な名前だと思うが・・・・・・。
選びたまえ。茶道部に居続けるか、この部に入るかだ。この部に入るなら転部届をお前にやろう」
「入ります」
この学校では、なんらかのやむを得ない事情がない限り、転部することは許されていない。継続的に物事に取り組む姿勢を身につけるためらしい。続けたから何かを成せるなんてのは、単なる妄想でしかない。それが全てに当てはまるだなんて、だから続けることを強要するなんて、傲慢だ。続けても何にもならないことだって世の中にごまんとあるだろう。今の場合、抵抗とか。茶道部から転部したかったってのもあるけど。
思い通りに行ったことに機嫌を良くしたのか、大仏は「じゃあ転部届けもってくるは」なんて言いながら鼻歌交じりで部屋を出て行ってしまった。
地味に今の俺、宙吊り状態なんだが。超心細いんだが。こんな気持ち、部活に行ってない件で職員室に呼ばれた以来なんだが。
何をすればいいのか伝えられていないので帰ります、とはここまで来てしまっては言えない。唐突に訪れた試練に冷や汗を流しながら、とりあえず部屋を熟視する。
普通の教室くらいの広さで、やや薄暗い。中央に何スチール机が無造作に置かれており、机の上には、字がびっしりと敷き詰められたノートや、マグカップが散乱している。その周りに4人は椅子を並べていた。壁際には、木製の物置棚や本棚が並んでいる。置いてあるものは、テディベアから美少女フィギュアまで、漫画から教科書までと、多種多様だ。
見ているうちに楽しくなり、あれレア物のフィギュアじゃね?と一人ぼそぼそつぶやいていた俺を見かねて、一人の女生徒に声をかけられた。
「白神、だったな。歓迎しよう。ここが幽霊部だ。ちなみに私は3年B組。部長の藤咲葉月だ。よろしくな」
藤咲先輩、か。これだけ綺麗な顔立ちであれば人生がどれだけ楽だろうか。少なくとも、初対面の俺が圧倒されるだけの美しさを彼女は持っていた。今時珍しい、絹織物のような艶やかさを持つ深黒の髪。髪の美しさを際立たせてなをそれ一つでも神々しい、きめ細やかな純白の肌。切れ長の大きな目に、筋の通った形のいい鼻。鴇色の薄い唇。全体的にほっそりとした印象を受ける体。でも安心してください。出るとこはちゃんと出てます。男らしい口調とのギャップがすんげえ。守ってあげたい。というか守られたい。さらに言えば養って欲しい。
あまりの美しさに無くしていた言葉を必死で手繰り寄せ、なんとか挨拶する。
「よ、よろしくお願いします。2Aの白崎柊治です」
柔和な笑顔で答えてくれた。は~。尊い。優しい。尊い。
俺と藤咲先輩とのやりとりを封切りに、他の3人も口を開いた。
「私は3Aの榎並六花。好きな食べ物は~コンビニスイーツ。よろしくね」
向日葵のような人だ。表情豊かで、快活な印象を受ける。梓実と似てるな。いや、雰囲気が。大きなことを夢見ているかのように煌きを放つまんまるな瞳をはじめとして、顔のパーツがまだあどけなさを帯びているため、美人というよりは美少女と言うべきだろう。何やら運動でもしていたのだろうか。髪は短く、程よく筋肉がついている。決め手は胸がない。っていうか「六花」っぽくないっす。雪っぽくないっす。向日葵でいいじゃん。
「2Cの松崎歩夢。よろしく」
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「どうも、1A霞暁です。よろしくお願いします。先輩」
朗らかな笑みを頬に讃えながらこちらを見上げて来るのは後輩らしい。整った輪郭を持つ顔の上に、彼のミケランジェロがノミで丁寧に掘ったのではと見まごうほど左右対称な美しいパーツが乗っている美少年。憎らしい。見ていたら気持ち悪くなるような美少年。決して比喩ではない。現に、その均整のとれた顔の、これまた美しい黒曜石の目には、吸い込まれそうな危うさがあった。
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