5 / 5
妹のターン。 2
しおりを挟む
「はあ……」
夕食後、梓実が俺の部屋にずけずけと上がり込んで来た。別に今日の俺はさほど不味いことをしてないはずだけど……お兄ちゃんと話したいのかな?そうかな?きっとそうだ。いや、それ以外考えられない。それしかないな。うん。
妹の願いには最大限の協力を惜しまないのが兄たる者の務め。仕方ないが読書時間を返上して、付き合ってやろう。だって俺、お兄ちゃんだし。
だから話した。幽霊部について。もちろん幽霊部にいた変なやつらについても。
こうなるよな……。
俺の話を聞いた梓実の表情は、口を半開きにした、それはそれは無防備なものへと変わっている。小動物のような愛くるしさがあってとても可愛いと思う今日この頃。
「残念ながら事実なんだなこれが」
「はあ……」
「お兄ちゃん部活から消えるまでちょっと時間かかると思うから、しばらく家帰るの遅くなると思うから」
「はあ……」
「そこんとこよろしく」
「はあ……」
さっきから「破ァ」しか言ってねえなこいつ。寺生まれか?悪霊と戦ってんの?お兄ちゃん心配。まあ、それよりも心配なのが、梓実の視線が宙を漂い続けていることなんだけど。戻ってこいよ。
数秒間念を送り続けていると、ようやく梓実は我に返ったようだ。もしかして俺が寺生まれなんじゃねぇの。
「はっ。その部活って宗教系?それだったらやめたほうがいいよ。よくわかんない壷とかよくわかんないお香とか買わされるよ」
「学校の部活だぞ?壷?それはねぇだろ。まあ、アンチ校則って名前の宗教かもしれんけど」
「なにそれ、うわっ。危なそう」
梓実は眉をひそめながら俺を見てくる。
ふっ、回りくどいな。普通に言えばいいのに。おそらくこの場合、梓実が言いたいこと。それは、
「じゃあ幽霊部、見にくる?」
これだろ。
お兄ちゃんが心配だから見にきたいんだね。いい子だ。本当にいい子だ。幸いうちの学校は放課後だけは手続きを踏めば、校内に入っていいことになっている。よかったね。
感涙にむせぶ俺を見る梓実の目が、若干引いているように見えるのは気のせいでしょうか。
「まぁ、見に行くぐらいなら。明後日空いてるからその時で。どうせ馴染めてないんでしょ?助けてあげるよ」
どうせあれだろ。ちょっと尖った感じのその口調もツンデレの証ってやつだろ?いい子だ。本当にいい子だ。素晴らしい。
「了解。明後日な」
目尻をぬぐいながら答えると、梓実は腰に手を当てながら頷いた。
夕食後、梓実が俺の部屋にずけずけと上がり込んで来た。別に今日の俺はさほど不味いことをしてないはずだけど……お兄ちゃんと話したいのかな?そうかな?きっとそうだ。いや、それ以外考えられない。それしかないな。うん。
妹の願いには最大限の協力を惜しまないのが兄たる者の務め。仕方ないが読書時間を返上して、付き合ってやろう。だって俺、お兄ちゃんだし。
だから話した。幽霊部について。もちろん幽霊部にいた変なやつらについても。
こうなるよな……。
俺の話を聞いた梓実の表情は、口を半開きにした、それはそれは無防備なものへと変わっている。小動物のような愛くるしさがあってとても可愛いと思う今日この頃。
「残念ながら事実なんだなこれが」
「はあ……」
「お兄ちゃん部活から消えるまでちょっと時間かかると思うから、しばらく家帰るの遅くなると思うから」
「はあ……」
「そこんとこよろしく」
「はあ……」
さっきから「破ァ」しか言ってねえなこいつ。寺生まれか?悪霊と戦ってんの?お兄ちゃん心配。まあ、それよりも心配なのが、梓実の視線が宙を漂い続けていることなんだけど。戻ってこいよ。
数秒間念を送り続けていると、ようやく梓実は我に返ったようだ。もしかして俺が寺生まれなんじゃねぇの。
「はっ。その部活って宗教系?それだったらやめたほうがいいよ。よくわかんない壷とかよくわかんないお香とか買わされるよ」
「学校の部活だぞ?壷?それはねぇだろ。まあ、アンチ校則って名前の宗教かもしれんけど」
「なにそれ、うわっ。危なそう」
梓実は眉をひそめながら俺を見てくる。
ふっ、回りくどいな。普通に言えばいいのに。おそらくこの場合、梓実が言いたいこと。それは、
「じゃあ幽霊部、見にくる?」
これだろ。
お兄ちゃんが心配だから見にきたいんだね。いい子だ。本当にいい子だ。幸いうちの学校は放課後だけは手続きを踏めば、校内に入っていいことになっている。よかったね。
感涙にむせぶ俺を見る梓実の目が、若干引いているように見えるのは気のせいでしょうか。
「まぁ、見に行くぐらいなら。明後日空いてるからその時で。どうせ馴染めてないんでしょ?助けてあげるよ」
どうせあれだろ。ちょっと尖った感じのその口調もツンデレの証ってやつだろ?いい子だ。本当にいい子だ。素晴らしい。
「了解。明後日な」
目尻をぬぐいながら答えると、梓実は腰に手を当てながら頷いた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる