112 / 290
巨塊討伐編 第三章:セレナの役目、店主の役目
客じゃない客の置き土産 7
しおりを挟む
セレナが調査員二名と共に、大きな魔物『巨塊』が引き起こした爆発事故のこの日の調査を終えて『法具店アマミ』に帰って来た。
この日の調査で得た物を店主に見せ、調査員たちからも協力を願われる店主。
店主は拾得した石を鑑別し、その結果と感想を述べる。
依頼客の顔と名前を覚えることに無気力な店主っぷりは健在。
それでも作った防具については決して忘れない店主は、改めてスウォードに作った防具の解説をする。
「七種類の属性をつけたってのは、ありゃ正反対の力を持たせたんじゃなくて、正反対の力を発揮できる調整ができる能力をつけたってことだ。だがこの三つの石は正反対かもしくはそれに近い二種類の力っぽいのを宿してる。だが一つは先天性、もう一つは後天性と判断すりゃ納得はいく。だがどちらも傾向が見当たらない。七個すべての力の系列も順列もな」
チュレガーナは力を落としながら店主に尋ねる。
「石の成り立ちまでは分からないと聞きました。その後天的な力もいつついたかまでは……」
「分からねぇ。その力も先天性に比べて限度もあるようだな。ただ石の価値だけ見ればかなり貴重だ。こいつで作った道具は、この店の中で同じ物を作ったら、俺なら一番高値で売る」
「商売の話は置いといて……ほかに何かわかること、ある?」
店主は石を置くと、地図を手にして気の乗らない目で見つめる。
「爆発ってのは四本のトンネル全部で起きたのか?」
「はい、四か所同時で」
ギャッカーからの答えも、店主にとってはあまり興味深い内容ではなかった。
「そういや、討伐隊ってどれくらいの人数が参加したんだ? 被害が相当あるって言ってたよな?」
「一部隊十人。それぞれのトンネルに先陣に一部隊ずつ。その後方には縦に隊列を組んだ隊が三っつ横に並び、それが七つ編成されて……」
「二百二十人ずつ四つのトンネルに……意外とトンネル広く掘ったんだな」
「えぇ。詰めれば横に七部隊くらい並べるくらいには」
店主は二人から聞かされる話を頭の中で再現している。
「つまり中で混雑することはなかったってことか」
「さらにトンネルの入り口で待機していた部隊が、一か所に付き左右に八部隊」
「八かける八の六百四十人? 二千人足らずで国の軍事力半分以上って」
「その周囲や住民の警護や避難にも関わってますからね。住民の被害はゼロに抑えられた甲斐はありましたが」
調査員二人からの説明を受けて納得する店主だが、今一つ頭の中で整理がつかない。
「あぁ、石の事だけで見ていただければ十分ですよ。我々の事を案じていただかなくても結構です。我々はトンネルごとに十人程度で調査を担当しますし、危ないと思われるところには絶対足を向けることはありませんしね」
「特に他に目新しい結果が出なければ、今日はそろそろ戻ります。お手数おかけしました」
「あ、あぁ……うん、まぁ、気になることがありゃまた来りゃいいさ」
「テンシュが気遣ってる……」
「明日槍が降るかも」
ミールの言葉を聞くと店主は急に立ち上がり、調査員に危機感を煽るような口調で話しかける。
「だそうです。明日の天気は槍。盾を上にかざしながらお出かけするとよろしいかと」
「「そこ拾うの?!」」
双子に店主がうつるのはまだだいぶ先のよう。調査員二人は苦笑いをしながらお辞儀をし退店した。
「テンシュ、今日もお土産あるよ。カウンターの上の石は採掘した物だけど、これは拾ったものだから調査の参考にはならないかなって。ならお土産になるなって思って」
手のひらよりも大きい宝石が八個、さらにカウンターに乗せられた。
へぇと横目で見る店主だが、一瞬にして顔色が変わる。急に立ち上がり、食い入るようにその石一つ一つを覗き込む。
その剣幕に三人は怯える。
「な、何かあったの?」
「危険物……ならそんなに触りはしないよね?」
「あ、いや、俺の思い過ごしかもしれんが……」
一つ一つを手に取りじっくり見る。
そして考え込む店主のいつにないその真剣さに三人は息をのむ。
「セレナ!」
突然立ち上がり怒鳴る店主に全員が飛び上がるほど驚く。
「な、何なのよテンシュ! いつもと違うよ? 何があったの?」
「あ、いや、調査用の石も欲しいが、こういう転がった石があったら持てるだけ持って帰ってきてほしいなと」
その後に続く店主の言葉がありきたりの願い事。
三人は、間違いなくその言葉に裏があるという疑念を持った。
この日の調査で得た物を店主に見せ、調査員たちからも協力を願われる店主。
店主は拾得した石を鑑別し、その結果と感想を述べる。
依頼客の顔と名前を覚えることに無気力な店主っぷりは健在。
それでも作った防具については決して忘れない店主は、改めてスウォードに作った防具の解説をする。
「七種類の属性をつけたってのは、ありゃ正反対の力を持たせたんじゃなくて、正反対の力を発揮できる調整ができる能力をつけたってことだ。だがこの三つの石は正反対かもしくはそれに近い二種類の力っぽいのを宿してる。だが一つは先天性、もう一つは後天性と判断すりゃ納得はいく。だがどちらも傾向が見当たらない。七個すべての力の系列も順列もな」
チュレガーナは力を落としながら店主に尋ねる。
「石の成り立ちまでは分からないと聞きました。その後天的な力もいつついたかまでは……」
「分からねぇ。その力も先天性に比べて限度もあるようだな。ただ石の価値だけ見ればかなり貴重だ。こいつで作った道具は、この店の中で同じ物を作ったら、俺なら一番高値で売る」
「商売の話は置いといて……ほかに何かわかること、ある?」
店主は石を置くと、地図を手にして気の乗らない目で見つめる。
「爆発ってのは四本のトンネル全部で起きたのか?」
「はい、四か所同時で」
ギャッカーからの答えも、店主にとってはあまり興味深い内容ではなかった。
「そういや、討伐隊ってどれくらいの人数が参加したんだ? 被害が相当あるって言ってたよな?」
「一部隊十人。それぞれのトンネルに先陣に一部隊ずつ。その後方には縦に隊列を組んだ隊が三っつ横に並び、それが七つ編成されて……」
「二百二十人ずつ四つのトンネルに……意外とトンネル広く掘ったんだな」
「えぇ。詰めれば横に七部隊くらい並べるくらいには」
店主は二人から聞かされる話を頭の中で再現している。
「つまり中で混雑することはなかったってことか」
「さらにトンネルの入り口で待機していた部隊が、一か所に付き左右に八部隊」
「八かける八の六百四十人? 二千人足らずで国の軍事力半分以上って」
「その周囲や住民の警護や避難にも関わってますからね。住民の被害はゼロに抑えられた甲斐はありましたが」
調査員二人からの説明を受けて納得する店主だが、今一つ頭の中で整理がつかない。
「あぁ、石の事だけで見ていただければ十分ですよ。我々の事を案じていただかなくても結構です。我々はトンネルごとに十人程度で調査を担当しますし、危ないと思われるところには絶対足を向けることはありませんしね」
「特に他に目新しい結果が出なければ、今日はそろそろ戻ります。お手数おかけしました」
「あ、あぁ……うん、まぁ、気になることがありゃまた来りゃいいさ」
「テンシュが気遣ってる……」
「明日槍が降るかも」
ミールの言葉を聞くと店主は急に立ち上がり、調査員に危機感を煽るような口調で話しかける。
「だそうです。明日の天気は槍。盾を上にかざしながらお出かけするとよろしいかと」
「「そこ拾うの?!」」
双子に店主がうつるのはまだだいぶ先のよう。調査員二人は苦笑いをしながらお辞儀をし退店した。
「テンシュ、今日もお土産あるよ。カウンターの上の石は採掘した物だけど、これは拾ったものだから調査の参考にはならないかなって。ならお土産になるなって思って」
手のひらよりも大きい宝石が八個、さらにカウンターに乗せられた。
へぇと横目で見る店主だが、一瞬にして顔色が変わる。急に立ち上がり、食い入るようにその石一つ一つを覗き込む。
その剣幕に三人は怯える。
「な、何かあったの?」
「危険物……ならそんなに触りはしないよね?」
「あ、いや、俺の思い過ごしかもしれんが……」
一つ一つを手に取りじっくり見る。
そして考え込む店主のいつにないその真剣さに三人は息をのむ。
「セレナ!」
突然立ち上がり怒鳴る店主に全員が飛び上がるほど驚く。
「な、何なのよテンシュ! いつもと違うよ? 何があったの?」
「あ、いや、調査用の石も欲しいが、こういう転がった石があったら持てるだけ持って帰ってきてほしいなと」
その後に続く店主の言葉がありきたりの願い事。
三人は、間違いなくその言葉に裏があるという疑念を持った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~
月神世一
ファンタジー
紹介文
「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」
そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。
失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。
「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」
手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。
電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。
さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!?
森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、
罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、
競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。
これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。
……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」
女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
『勇者道化師ベルキッド、追放される』
『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる