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法王依頼編 第六章:異世界にも日本文化の対戦競技があるらしい
店主、セレナと異世界の温泉に行く 1
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「皺の数が増えてねぇ。むしろ減った? 髪の毛も白髪や抜け毛もねぇ。体力はむしろついた気がする……」
天流法国の田舎、ベルナット村。その中にいくつかある道具屋の一つ、『法具店アマミ』の二階で鏡を見ながらつぶやく人間の男。
この村の隣のバルダー村で起きた、巨塊と呼ばれる巨大な魔物の第二次討伐騒動。
それに巻き込まれた『天美法具店』の店主は、その被害に遭ったセレナ=ミッフィールの強引な誘いからの新たな騒動の顛末で『法具店アマミ』の経営に関わることになった。その騒動が一応の解決を見たのをきっかけとなり、この世界の住人の一人となった。
国のトップである法王から、その住民となるのにふさわしい力と寿命を授かった。
しかしその実感が湧かない店主。とは言え、セレナが作った結界の外でも他の住民達との言語や意思疎通ができるようになったことから、法王の力は本物かもしれないという思いを持った。
ある日店主は鏡で自分の顔を見る。
自分の仕事である宝石加工の作業は、その間中ほとんど顔をゆがめる。
力は必要だし、細かい粒子が宙を舞う。
この仕事を始めてから額に皺を寄せることは当たり前。何本か深く皺が刻まれるようになった。
その皺が消えかかっている。
店主の顔が次第に若々しくなっていく。
それに気付いた日から毎日鏡を見るのが日課になった。
毎日見ていれば、前日とのわずかな違いには気付きにくくなるものだが、ある日突然違いに気付くことになる。
額に見える皺による影が薄らいだことに。
寿命と、それに伴う健康を維持する力も授かった証しであった。
「法王ともなればそんなこと簡単に出来ちゃうわよ。あ、法王だからってわけじゃないよ? 天流教の大司教だからね。教祖ほどの力はないと思うけど」
セレナからそんな話を耳にする。
「ますます人外じみてきたな。まぁ向こうの世界とはほとんど行き来しなくなったしなぁ」
「それでも私、あのヴェイコーダのことは気がかりなのよ。私としてはホントに何とかするつもりだったんだから」
『天美法具店』のショーウィンドウの前に、その窓を隠すほどの大きいトルマリンの一種、アクロアイトが置かれたまま。ヴェイコーダとは、この世界でのその石の名称である。
セレナが店主の世界に飛ばされた時、その現象に彼女と共に巻き込まれて飛ばされた。
落ち着いて思い返してみれば、よくぞ窓にぶつからなかったものである。
店主は今更ながら胸を撫で下ろす。
「さて……今日のお仕事はっと……気分が乗らねぇ。俺、今日休み」
「テンシュ……ほんっと気まぐれは相変わらずよねぇ」
宝石加工の仕事はとても気に入っている。宝石に限らず、石に手を加えて身につけることで役立つ物に変えていく作業である。
それを身につけた者は、自分の持つ力の補助となったり、装備する者の力の一部になることもある。
他の道具屋でもそのような物の製造販売をしているが、『法具店アマミ』はその追随を許さない。
店主には石、特に宝石の中にある力を見ることが出来る能力がある。
そのような力を持つ者はこの世界にも存在しない。
本人はそれを特別なものとは思ってはおらず、普通にその力を診断する。
宝石を加工するという仕事上、装飾品を作るため宝石と共に素材となる様々な物の力も見ることが出来るようになり、そのついでか、人の持つ力を診ることが出来るようになった。
依頼を受けたなら、まず依頼人の中にある力を見極める。そして依頼の道具作製に入るが、制約がなければ、依頼人の相性のいい素材を選び、道具作りに入る。
この場合は何の問題もなく完成に至るが、依頼人が使ってほしい素材を持ち込んだ時はやや手が込むことがある。
素材の力と依頼人の持つ力の相性が悪い場合、仲を取り持つ役目を果たす素材が必要になる。
それらを上手く調和させて道具を完成させるのだが、他の店では出来ないことであり、『法具店アマミ』の人気を揺るがないものとしている。
ベルナット村は年々ゆっくりと過疎化が進んでいる。
冒険者になるための養成所と鍛錬所、そして仕事の依頼の斡旋所を有するこの村は、それ以外は隣のバルダー村同様、農業と林業、そして鉱業が盛ん。
しかし盛んであり続けるには常に若い世代は必要である。だが仕事の現場は限られているため、人数が多くいればいいというものではない。
それでも国中から注文が殺到し何年も順番待ちをしている客もいるほど、この店は繁盛していた。
そんな中で、緊急の仕事が入ればその仕事を割り込ませる必要はあるし、宝石加工の本職自体後回しにする事態も起きたりする。
好きな仕事をしていても、知らず知らずのうちに無理をしてしまえば疲労は出てくるし、度を超すと風邪をひいたり病気になったりする。痛みも感じれば辛い思いも生まれるものである。
いくら法王から力を授かったとは言え、睡眠や食事、健康管理はこれまで通りである。
そしてこの世界の住民となったため、店主は自分の世界との縁も薄くなったため、それらのことがこの世界で賄わなければならなくなった。
つまり今までのような気まぐれを起こしても、それが通用しなくなったところもある。その最たるものはお金。
仕事を拒否すればその分収入も減る。今までは店主の世界の『天美法具店』の経営が健全であれば、この店の仕事を不定期で休んでいても問題はなかったが、それからはそうも言っていられなくなった。
セレナは兼業冒険者だが、実力派の中でも強すぎるため、斡旋してもらえる依頼のレベルが低すぎて仕事が見つからなくなってしまったのである。
店主とセレナの生活に直接響くようになった、店主のこの世界での生活。
そういうことで、今までのように気まぐれが時々許される気楽な環境ではなくなってしまった。
ところが幸いにも、今では『天美法具店』を気にする必要がなくなった。これまでの店主は、普段の態度は不真面目な部分が目立ったが、それでも『法具店アマミ』での仕事ぶりは真剣そのもの。
それが、仕事に対する姿勢や集中力は今までの倍どころではない。それもこの店の評判を高める一因でもあった。
しかし店主の「すごくどうでもいい」、「めんどくせ」などの口癖だけは相変わらずである。
天流法国の田舎、ベルナット村。その中にいくつかある道具屋の一つ、『法具店アマミ』の二階で鏡を見ながらつぶやく人間の男。
この村の隣のバルダー村で起きた、巨塊と呼ばれる巨大な魔物の第二次討伐騒動。
それに巻き込まれた『天美法具店』の店主は、その被害に遭ったセレナ=ミッフィールの強引な誘いからの新たな騒動の顛末で『法具店アマミ』の経営に関わることになった。その騒動が一応の解決を見たのをきっかけとなり、この世界の住人の一人となった。
国のトップである法王から、その住民となるのにふさわしい力と寿命を授かった。
しかしその実感が湧かない店主。とは言え、セレナが作った結界の外でも他の住民達との言語や意思疎通ができるようになったことから、法王の力は本物かもしれないという思いを持った。
ある日店主は鏡で自分の顔を見る。
自分の仕事である宝石加工の作業は、その間中ほとんど顔をゆがめる。
力は必要だし、細かい粒子が宙を舞う。
この仕事を始めてから額に皺を寄せることは当たり前。何本か深く皺が刻まれるようになった。
その皺が消えかかっている。
店主の顔が次第に若々しくなっていく。
それに気付いた日から毎日鏡を見るのが日課になった。
毎日見ていれば、前日とのわずかな違いには気付きにくくなるものだが、ある日突然違いに気付くことになる。
額に見える皺による影が薄らいだことに。
寿命と、それに伴う健康を維持する力も授かった証しであった。
「法王ともなればそんなこと簡単に出来ちゃうわよ。あ、法王だからってわけじゃないよ? 天流教の大司教だからね。教祖ほどの力はないと思うけど」
セレナからそんな話を耳にする。
「ますます人外じみてきたな。まぁ向こうの世界とはほとんど行き来しなくなったしなぁ」
「それでも私、あのヴェイコーダのことは気がかりなのよ。私としてはホントに何とかするつもりだったんだから」
『天美法具店』のショーウィンドウの前に、その窓を隠すほどの大きいトルマリンの一種、アクロアイトが置かれたまま。ヴェイコーダとは、この世界でのその石の名称である。
セレナが店主の世界に飛ばされた時、その現象に彼女と共に巻き込まれて飛ばされた。
落ち着いて思い返してみれば、よくぞ窓にぶつからなかったものである。
店主は今更ながら胸を撫で下ろす。
「さて……今日のお仕事はっと……気分が乗らねぇ。俺、今日休み」
「テンシュ……ほんっと気まぐれは相変わらずよねぇ」
宝石加工の仕事はとても気に入っている。宝石に限らず、石に手を加えて身につけることで役立つ物に変えていく作業である。
それを身につけた者は、自分の持つ力の補助となったり、装備する者の力の一部になることもある。
他の道具屋でもそのような物の製造販売をしているが、『法具店アマミ』はその追随を許さない。
店主には石、特に宝石の中にある力を見ることが出来る能力がある。
そのような力を持つ者はこの世界にも存在しない。
本人はそれを特別なものとは思ってはおらず、普通にその力を診断する。
宝石を加工するという仕事上、装飾品を作るため宝石と共に素材となる様々な物の力も見ることが出来るようになり、そのついでか、人の持つ力を診ることが出来るようになった。
依頼を受けたなら、まず依頼人の中にある力を見極める。そして依頼の道具作製に入るが、制約がなければ、依頼人の相性のいい素材を選び、道具作りに入る。
この場合は何の問題もなく完成に至るが、依頼人が使ってほしい素材を持ち込んだ時はやや手が込むことがある。
素材の力と依頼人の持つ力の相性が悪い場合、仲を取り持つ役目を果たす素材が必要になる。
それらを上手く調和させて道具を完成させるのだが、他の店では出来ないことであり、『法具店アマミ』の人気を揺るがないものとしている。
ベルナット村は年々ゆっくりと過疎化が進んでいる。
冒険者になるための養成所と鍛錬所、そして仕事の依頼の斡旋所を有するこの村は、それ以外は隣のバルダー村同様、農業と林業、そして鉱業が盛ん。
しかし盛んであり続けるには常に若い世代は必要である。だが仕事の現場は限られているため、人数が多くいればいいというものではない。
それでも国中から注文が殺到し何年も順番待ちをしている客もいるほど、この店は繁盛していた。
そんな中で、緊急の仕事が入ればその仕事を割り込ませる必要はあるし、宝石加工の本職自体後回しにする事態も起きたりする。
好きな仕事をしていても、知らず知らずのうちに無理をしてしまえば疲労は出てくるし、度を超すと風邪をひいたり病気になったりする。痛みも感じれば辛い思いも生まれるものである。
いくら法王から力を授かったとは言え、睡眠や食事、健康管理はこれまで通りである。
そしてこの世界の住民となったため、店主は自分の世界との縁も薄くなったため、それらのことがこの世界で賄わなければならなくなった。
つまり今までのような気まぐれを起こしても、それが通用しなくなったところもある。その最たるものはお金。
仕事を拒否すればその分収入も減る。今までは店主の世界の『天美法具店』の経営が健全であれば、この店の仕事を不定期で休んでいても問題はなかったが、それからはそうも言っていられなくなった。
セレナは兼業冒険者だが、実力派の中でも強すぎるため、斡旋してもらえる依頼のレベルが低すぎて仕事が見つからなくなってしまったのである。
店主とセレナの生活に直接響くようになった、店主のこの世界での生活。
そういうことで、今までのように気まぐれが時々許される気楽な環境ではなくなってしまった。
ところが幸いにも、今では『天美法具店』を気にする必要がなくなった。これまでの店主は、普段の態度は不真面目な部分が目立ったが、それでも『法具店アマミ』での仕事ぶりは真剣そのもの。
それが、仕事に対する姿勢や集中力は今までの倍どころではない。それもこの店の評判を高める一因でもあった。
しかし店主の「すごくどうでもいい」、「めんどくせ」などの口癖だけは相変わらずである。
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