『九州男児の明日はどっちだ?!』なし崩し連合異世界開拓史

トンカツうどん

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プロローグ

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博多の銃槍使いと、壁ば壊す可憐な「処刑台」
​1. 異世界は、ちかっぱ世知辛い
​「……あー、つまらん。マジでつまらんバイ」
​ 石造りの街並みが並ぶ、いかにも「異世界」といった風情の王都。その路地裏で、俺——カズヤは一人、愛銃のシリンダーを回しながら溜息をついた。
​ 手に持っているのは、かつての世界で愛用されていた名銃「H&K USP」をモデルに特注した、細身のガンランスだ。
 モンハンに出てくるような、あぎゃん(あんな)バカでかい盾や槍は持たん。重たいし、肩の凝るし、何よりスマートじゃなか。俺の相棒は、スリムな黒のボディに、6連装のリボルバー、そして先端に鋭い「先刃(ブレイド)」を備えた、機動力重視の「博多式カスタム」たい。
​「ラーメンもなか、明太子もなか、あるのは堅っ苦しいパンと、妙に酸っぱいエールだけ……。どげんかせんといかん、とは思うたけど、冒険者稼業も楽じゃなかね」
​ 俺はUSP型ガンランスの排気ポート(エジェクションポート)をチェックする。魔力の残滓が詰まっとらんか確認し、カチリとシリンダーを戻した。
 この世界に転生して数ヶ月。俺は「効率」と「安全」をモットーに、小銭を稼いでは安宿で寝る生活を繰り返しとる。無茶なクエストは受けん。死んだら元も子もなか。
​ そんな俺が、今日に限って少しだけ街の奥まで足を伸ばしたのは、単に「安い薬草」がその先の森に生えとるって聞いたからやった。
​ ……それが、あんな「化け物」に出会う理由になるとは、夢にも思っとらんやった。
​2. 異変と、黒髪の少女
​「……なん、この音?」
​ 街外れの「黄昏の森」に入ってすぐ、異様な音が聞こえてきた。
 
 ドゴォォォォン!!
​ という爆発音じゃなか。もっとこう、**「ミチミチッ、ベキィッ!」**という、硬いものが理不尽な圧力で粉砕されるような、えげつない音。
​「……しゃーしか(騒々しい)ね。魔物同士の喧嘩か? よかよか、関わらんとが一番たい」
​ 俺は踵を返そうとした。カズマさん譲りの「トラブル察知能力」が、脳内で全力の警報を鳴らしとる。
 ばってん(だが)、好奇心に勝てんやったわけじゃなか。ただ、帰り道の方がその「音」の方向に近かっただけたい。
​ 茂みをそっと覗き込んだ俺の目に飛び込んできたのは、あまりにもミスマッチな光景やった。
​ そこにいたのは、一人の少女。
 艶やかな黒髪を低い位置で二つに結び、真っ赤なリボンで止めた、可憐という言葉がぴったりの女の子。見た目は10代半ば。フリルのついたメイド服のような、可愛らしい格好をしとる。
​ ばってん。
​「……あ、これ。まだ、動けます……? 困ります、もっと、頑丈じゃないと……♪」
​ 少女の足元には、この界隈では「新人殺し」と恐れられとるランクBの魔物、オーガの成体が三体、文字通り「ひしゃげて」転がっとった。
​ 少女の格好は、いつの間にか戦闘用の黒いボディスーツ……いや、レオタードのような、脚のラインを極限まで強調した衣装に変わっとる。
 彼女がゆっくりと右脚を上げると、それは何の予備動作もなく、垂直——いや、それ以上の角度まで跳ね上がった。
​「テコンドー……いや、カポエラか?」
​ 思わず声が漏れそうになった。
 少女は、逆立ちをするような姿勢から、独楽のように回転した。**「ジンガ」**のステップ。踊るようなリズム。
 そこから繰り出された回し蹴りが、残っていた最後の一体のオーガの頭部を捉える。
​ ベキィィィィン!!
​ オーガの巨体が、まるでピンボールの玉みたいに吹き飛び、太い大樹を二本ぶち折ってようやく止まった。
​「……ば、バリ yabaka(凄まじくヤバい)。なんねあの脚力。人間じゃなかろ……」
​ 少女はふぅ、と小さく息を吐き、乱れたおさげ髪を整えた。
 さっきまでの凶悪な動きが嘘のように、今は「お花摘みに来ました」みたいな清純な顔ばしとる。
 
 ……あかん。関わったら死ぬ。
 俺は「見ていない」ことに決めた。
 
 足音を消し、気配を殺し、ゆっくりと、ゆっくりと後ずさりする。
​「(よし……このまま街に戻って、今日は美味い酒ば飲んで寝る。あの女の子のことは、夢やったと思うことにしよう……)」
​3. おみ足の壁ドン
​ あと数歩で茂みを抜ける。そう確信した時やった。
​「……あの、すみません。そこの、珍しい得物を持ったお兄様?」
​ 心臓が止まるかと思った。
 声は鈴を転がすように可愛い。ばってん、その背後に感じる「圧」は、さっきのオーガ以上たい。
​「……あ? ああ、俺のことね? いやぁ、道に迷うてから。今から帰るとこやけん、気にせんでよかよ」
​ 俺は一度も振り返らず、博多弁全開でまくし立てた。顔ば見られたら最後、面倒なことに巻き込まれるのがこの世界のルールたい。
​「待ってください。私の『お掃除』、見ていましたよね……?」
​「見とらん見とらん! 俺、乱視やけん! 何もかも二重に見えとって、何が何だかさっぱりたい! さいなら!」
​ 俺はUSP型ガンランスを抱え、全力でダッシュしようとした。
 が。
​ ドガァァァァァン!!
​ 俺の目の前。逃げ道の先にあった巨大な岩が、上から降り下ろされた「脚」によって、真っ二つに叩き割られた。
​ ……目の前に、真っ白な太ももがある。
 少女が、俺の行く手を阻むように足を振り下ろしたまま、静止しとる。
 いわゆる「Y字バランス」の状態で、踵が岩にめり込んどる。……これが巷で噂の、おみ足壁ドンか。
​「ひっ……!」
​「……逃げるのは、感心しません。マスター……じゃなくて、お兄様。私、恥ずかしがり屋なんです。見ていたなら、ちゃんと責任、取ってくれますよね……?」
​ 少女——リズが、ゆっくりと足を下ろし、顔を近づけてきた。
 頬を赤らめ、上目遣いで、モジモジしながら。
​「(嘘つけ! どこが恥ずかしがり屋か! 岩ば粉砕しといてから!)」
​ 俺は心の中で叫んだ。ばってん、口から出たのは別の言葉やった。
​「……責任って、なんね。俺、金はなかぞ? あと、面倒なことは大嫌いやけんね」
​「ふふ、お金はいりません。ただ……お兄様のその武器、面白い音がしました。今の私の蹴り、防げますか……?」
​ リズの瞳からハイライトが消える。
 こいつ、戦闘狂(バーサーカー)たい。それも、タチの悪い方の。
​「……はぁ。しゃーな(仕方ない)ね」
​ 俺は諦めて、USP型ガンランスのトリガーに指をかけた。
 リボルバーが、チチチッ……と小気味よい音を立てて回転する。
​「よかろうもん。博多の武器職人が泣いて喜ぶような、特製のリボルバー弾、拝ませてやるバイ。ばってん、怪我しても知らんけんね?」
​「……はい、期待しています。お兄様♪」
​ リズがカポエラのステップで地を蹴る。
 俺はガンランスの排気ポートから、真っ白な蒸気を噴射した。
​ 「プシュゥゥッ!!」
​ 高圧排気を利用した高速サイドステップ。リズの回し蹴りが、俺の鼻先をかすめる。
​「……ほーら、当たらんバイ! 逃げ足だけは自信のあるけんね!」
​「……っ!? 面白い……。あは、あははは! お兄様、やっぱり最高です!」
​ 可憐な少女の笑い声と、ガンランスの排気音、そして肉体が空気を切り裂く音が、夕暮れの森に響き渡った。
​ これが、俺とリズの——最悪で、最高に「しゃーしか」出会いやった。
​【プロローグ・完】
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