孤影の旅路

琉斗六

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9.いと高き者【2】

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「聞け! 俺の真名コニングはフィグネル。今から、オマエは俺の契金翼エヴンハールだっ!」

 顔を間近に近づけて、ウェスは囁くような、それでいて決意を込めた力強い口調でそう言った。
 途端に、レッドの意識は、上下も左右も分からない、真っ白な空間へと引き込まれる。
 意識の中に、過去にあった最も幸せだったと記憶が蘇り、レッドはラトゥフの言葉を思い出していた。
 魄融術ハミンガは、神耶族イルン契金翼エヴンハールにふさわしいと選んだ対象者と、あるじたる神耶族イルン魂魄ヴェッテイルを、決して切れない絆で結ぶ。
 その絆の回廊が完全に確立されるまでの時間、二つの魂魄ヴェッテイルは完全に精神的スピリチュアルな世界へ、隔絶される。
 そして契金翼エヴンハールとなるものは、得も言われぬ至福の時間を味わい、神耶族イルンは掌中の珠となるものが見る世界を垣間見るのだ。

「……なんだ……、これは……? オマエは一体、どこから来た……?」

 レッドの記憶を垣間見たウェスは、レッドの言うワケアリ・・・・の真の意味、異世界から流れてきた魂魄ヴェッテイルが、その記憶を持ったまま転生した存在であることを知った。
 その未知の文明や記憶に、ウェスはただひたすらに戸惑う。
 しかし魂魄ヴェッテイルの回廊が繋がる、永遠にして一瞬のときが過ぎ去り、二人は再び、窮地に置かれた物理的マテリアルな世界へと戻った。

「はっ、ははっ! これは、すごいな」

 未だ未知なる記憶に混乱しているウェスをそのままに、レッドは右手を握ると周囲に向けてなにかを放つように、腕を振った。
 途端に、木々がざわわっと大きく揺らぎ、空気の振動が同心円状に広がった。
 取り囲んでいた魔族ディアブロたちは、だれかに突き飛ばされでもしたかのように、後方へと吹き飛ばされ、それぞれが木や地面、そこにあった石などに打ち付けられる。

「な……何をしたんだ?」
魔法ガルズは、イメージだと言ったろ。簡単に言えば、音で相手をぶっ飛ばした……ってところか? グランヴィーナの透晶珠リーヴィに癒やされた時も衝撃だったが、これはその比じゃないな」

 レッドはすっと立ち上がり、ウェスを抱き上げて歩き出す。
 行く手には、気を失ったり、衝撃でひどい目眩に悩まされ、頭を振っている魔族ディアブロたちがいた。

「おい。私のあるじに、そう気安く触れられると思うな。次は、命がない。仲間にもそう言っておけ」
「くそっ……、子供ガキじゃなかったのか……。分かった。もう、お前ら手出しはしない」

 レッドの言葉に、魔族ディアブロたちは頷く。
 森の中に、漂う緊張感が一瞬にして変わった。
 魔族ディアブロたちは、這々のていで仲間同士をかばい合い、逃げるようにその場を去っていった。
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