30 / 89
第二部:ハリー
14
しおりを挟む
いくつかの書類を持って、ハリーが家にたどり着くと、我が家の前にはパトカーが止まり、小さな人垣が出来ていた。
「すいません、ちょっと通して…」
ハリーは車を降りて、人垣をかき分ける。
「あっ、先輩」
「マクセル、どうしたんだ?」
人垣の向こうには、ハリーの後輩のマクセル巡査が立っていた。
「銃声がしたって言う通報がありまして、自分とビクターが近くにいたんで回ってきたんですよ。そしたら先輩の家からあやしい人影が飛び出してきて…」
「それで、リサとリズは!?」
「無事でした。あっ先輩! あ~あ」
マクセルの説明もそこそこに、ハリーは家の中に飛び込んだ。
「リサッ!」
「あなたっ」
巡査に事情を話していたリサは、駆け込んできたハリーに思わず抱きついてしまう。
「リ、リサ…?」
「ごめんなさい。…私、恐くて…」
「あ、先輩。おかえりなさい。災難でしたね」
リサに状況を尋ねていたビクター巡査は、リサの行動に戸惑うような表情を浮かべ、ハリーに声をかけた。
「それで、一体どうしたんだ?」
「奥さんのお話しからすると、ただの物取りだったみたいですね。奥さんが護身用の銃を持って、賊の侵入した部屋に入った途端に、賊は吃驚して一発発砲した後に逃げ出した…と、そうですよね? 奥さん」
「はい」
確かめるように訊ねてきたビクターに向かって、リサは小さく頷いた。
「それで、犯人は?」
「俺達が到着した時、丁度裏手から怪しい人影が出てきたんで追っかけたんですケド。それがえらく身の軽い奴で、アッという間にまかれちまいましてね、見失っちまったんですよ」
「オマエとマクセルでか? それ、本当にただの物取りなのか?」
ハリーの問いに、巡査は肩を竦めてみせる。
「でも、そうなんす」
「リサは、その犯人を見たの?」
納得できかねる表情で、ハリーはリサに問いかけた。
「それが…」
リサは、ハリーから目を逸らすよう顔を俯けてしまう。
本来なら、あの少年の事をきちんと話さなければならないのだが…。
リサは、少年の不可解な行動の意味を知りたかった。
その為には、彼の事を警官に告げては不味いような気がして。
自分が一番信頼している夫をも欺くのは、少しばかり良心の呵責を感じたけれど…。
「どうしたの?」
「暗くて、よく見えなかったのよ」
結局リサは嘘をついてしまった。
「すいません、ちょっと通して…」
ハリーは車を降りて、人垣をかき分ける。
「あっ、先輩」
「マクセル、どうしたんだ?」
人垣の向こうには、ハリーの後輩のマクセル巡査が立っていた。
「銃声がしたって言う通報がありまして、自分とビクターが近くにいたんで回ってきたんですよ。そしたら先輩の家からあやしい人影が飛び出してきて…」
「それで、リサとリズは!?」
「無事でした。あっ先輩! あ~あ」
マクセルの説明もそこそこに、ハリーは家の中に飛び込んだ。
「リサッ!」
「あなたっ」
巡査に事情を話していたリサは、駆け込んできたハリーに思わず抱きついてしまう。
「リ、リサ…?」
「ごめんなさい。…私、恐くて…」
「あ、先輩。おかえりなさい。災難でしたね」
リサに状況を尋ねていたビクター巡査は、リサの行動に戸惑うような表情を浮かべ、ハリーに声をかけた。
「それで、一体どうしたんだ?」
「奥さんのお話しからすると、ただの物取りだったみたいですね。奥さんが護身用の銃を持って、賊の侵入した部屋に入った途端に、賊は吃驚して一発発砲した後に逃げ出した…と、そうですよね? 奥さん」
「はい」
確かめるように訊ねてきたビクターに向かって、リサは小さく頷いた。
「それで、犯人は?」
「俺達が到着した時、丁度裏手から怪しい人影が出てきたんで追っかけたんですケド。それがえらく身の軽い奴で、アッという間にまかれちまいましてね、見失っちまったんですよ」
「オマエとマクセルでか? それ、本当にただの物取りなのか?」
ハリーの問いに、巡査は肩を竦めてみせる。
「でも、そうなんす」
「リサは、その犯人を見たの?」
納得できかねる表情で、ハリーはリサに問いかけた。
「それが…」
リサは、ハリーから目を逸らすよう顔を俯けてしまう。
本来なら、あの少年の事をきちんと話さなければならないのだが…。
リサは、少年の不可解な行動の意味を知りたかった。
その為には、彼の事を警官に告げては不味いような気がして。
自分が一番信頼している夫をも欺くのは、少しばかり良心の呵責を感じたけれど…。
「どうしたの?」
「暗くて、よく見えなかったのよ」
結局リサは嘘をついてしまった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる