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ep.2:追われる少年
5:神にも等しい種族【1】
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「アルバーラ? 知り合いか?」
『このサウルスは、アルバーラを知らんのか!』
「一体、誰だ?」
『蒸しまんじゅうのようななりをした稀代の毒婦! 悪魔の如き魔導士じゃ。儂とジェラートを、ずっと付け狙っておってな』
「ジェラートというのがあの子供の名前なんだな」
『ああ忌々しいっ! あんな詐欺師のような毒まんじゅうに追い回されなければ、こんなヘタレとサウルスに、我らの仮名を教える必要もなかったに!』
「けにんぐ、とは、なんだ?」
マハトの問いに、クロスは突然 "そのこと" に気付いて、ハッとした。
タクトの言った単語に感じた違和感と、そこに捕らえられている賊。
その引っ掛かりを、マハトが口にした疑問がきっかけとなって、全て解き明かされたような気分だ。
「通名みたいな、もんだよ!」
クロスは、マハトにかなり適当な説明をした。
仮名とは、決して変えることが出来ない真名の代わりに使う、表向きの名称であり、仮名を名乗っていると言った時点で、自分は真名を持つと、暗に示唆してしまっているということになる。
そして、真名とは、祝福にも呪いにもなるために、その名を打ち明けるのはもちろん、持っていることを気軽に誰にも話して良いものではない。
とはいえ、タクトの場合は種族的な特徴故に、さほど気にもしてないのだろう。
『なんじゃ、このサウルスは仮名も知らぬのか?』
と、サラッとその話を続けようとする。
クロスは狼狽えた。
元のタクトは強者で、真名持ちであることをひけらかしたところで、通常ならばなんの問題もないのであろうが。
今のタクトは "非常事態" に陥っていて、容易く他者から害される危険が常に付きまとっている状況と言える。
そこでこんな危機感のない発言をするのは、あまりに軽率と考えたからだ。
「そんなことはどうでもいいよっ! とにかくその賊から、ジェラートの行く先を聞き出さないと!」
一方で、マハトはクロスが話をはぐらかそうとしていることに気づき、その態度を訝しみはしたが、自分もそんな些末な話題よりもそちらの方が気になる話でもあった。
「確かに、子供が攫われたなんて穏やかじゃないし、俺も救出に手を貸すのはやぶさかではないと思うが。しかし状況次第では、手伝いたくても手伝えないぞ」
『なぜじゃ? なにが気に食わぬ?』
「気に食わないって話じゃない。先刻クロスさんが言っていたが、飛ぶ敵を追うことは出来ない。そういう依頼なら、手の貸しようがないと言っている」
『このあんぽんたんのぼんくらサウルス! この儂が、貴様らの力量をはかれないようなウスノロと思うてかっ! サウルスは黙って、儂の指図に従っておれ!』
「俺は追える相手として、この賊を捕らえたが、先程のクロスさんの様子だと、おまえはそれが気に入らなかったようじゃないか。だが、空を飛ぶ敵を、飛べない俺にどうしろと言うんだ?」
『こンの…人間のサウルス風情が…』
「ちょっ…ちょ…ちょっと!」
言い争いになりかけるタクトとマハトの間に、今度はクロスが割って入った。
「焦ってるのは解るけど、マハさんの言い分のほうがもっともだろう?」
『なにを言うか! そちらの方が格下なのだから、言うことを聞くのが当たり前ではないかっ!』
「そこまでめちゃめちゃな……。てか、どう言ったところで、今は俺らに協力を仰がないと、手も足も出ないんだし、もうちょっとこう……」
『なんだと? 貴様一体、どういうつもりで "手も足も…" などという単語を口にした?!』
ガンガンと問い詰められて、クロスはだんだん、言葉を選びながらの会話ができなくなってきた。
「や、だって、そちらサン、核化されてるし……」
『貴様、核化がなにか解っておるのかっ? さては、貴様も禁忌破りの仲間かっ!』
「な…仲間なんかじゃ無いしっ! 俺は古代魔法が記された、古文書の解読をしてただけで…っ!」
『古代語が読めない奴らにも読めるようにしたのなら、同じ穴の狢ではないかっ!』
しどろもどろのクロスに向かって、激昂したタクトは更に言い募った。
「自分が読み解いてただけで、他の誰にも説明なんてしてないしっ! てか、こんなくだらない言い争いをしてる時間ナイんじゃないのっ!? ココにカービンが居るってコトは、ジェラートを攫ったのはルミギリスだってコトだろう? 早く手を打たないと、ジェラートはアルバーラの弟子の後継者抗争に巻き込まれちゃうんだぞっ!」
『そんなことは貴様に言われんでも、百も承知じゃっ! そもそも貴様ら人間如きの下等な輩が、禁忌をコソコソ嗅ぎ回って掘っくりかえすから、こちらがこんな迷惑を被るのではないかっ! このバカ野郎どもめっ!』
「あーもうっ! 俺は少なくとも先刻まで、神耶族ってのは崇高で高潔だと思ってたのに、アンタの所為で、高慢ちきでめちゃめちゃってイメージになっちゃったじゃないかっ!」
『……てっ!』
「二人とも、聞いてくれ。俺には二人の言ってることがあまり理解出来ていないが、ジェラートが攫われて、状況が逼迫していることは判っている。俺は、あの子を助けに行くのに力を貸すことに同意するが、クロスさんは?」
「俺も、そこは同意する」
タクトは一瞬黙ったあとに『てっ!』と、あの舌打ちに似た音を吐いた。
『このサウルスは、アルバーラを知らんのか!』
「一体、誰だ?」
『蒸しまんじゅうのようななりをした稀代の毒婦! 悪魔の如き魔導士じゃ。儂とジェラートを、ずっと付け狙っておってな』
「ジェラートというのがあの子供の名前なんだな」
『ああ忌々しいっ! あんな詐欺師のような毒まんじゅうに追い回されなければ、こんなヘタレとサウルスに、我らの仮名を教える必要もなかったに!』
「けにんぐ、とは、なんだ?」
マハトの問いに、クロスは突然 "そのこと" に気付いて、ハッとした。
タクトの言った単語に感じた違和感と、そこに捕らえられている賊。
その引っ掛かりを、マハトが口にした疑問がきっかけとなって、全て解き明かされたような気分だ。
「通名みたいな、もんだよ!」
クロスは、マハトにかなり適当な説明をした。
仮名とは、決して変えることが出来ない真名の代わりに使う、表向きの名称であり、仮名を名乗っていると言った時点で、自分は真名を持つと、暗に示唆してしまっているということになる。
そして、真名とは、祝福にも呪いにもなるために、その名を打ち明けるのはもちろん、持っていることを気軽に誰にも話して良いものではない。
とはいえ、タクトの場合は種族的な特徴故に、さほど気にもしてないのだろう。
『なんじゃ、このサウルスは仮名も知らぬのか?』
と、サラッとその話を続けようとする。
クロスは狼狽えた。
元のタクトは強者で、真名持ちであることをひけらかしたところで、通常ならばなんの問題もないのであろうが。
今のタクトは "非常事態" に陥っていて、容易く他者から害される危険が常に付きまとっている状況と言える。
そこでこんな危機感のない発言をするのは、あまりに軽率と考えたからだ。
「そんなことはどうでもいいよっ! とにかくその賊から、ジェラートの行く先を聞き出さないと!」
一方で、マハトはクロスが話をはぐらかそうとしていることに気づき、その態度を訝しみはしたが、自分もそんな些末な話題よりもそちらの方が気になる話でもあった。
「確かに、子供が攫われたなんて穏やかじゃないし、俺も救出に手を貸すのはやぶさかではないと思うが。しかし状況次第では、手伝いたくても手伝えないぞ」
『なぜじゃ? なにが気に食わぬ?』
「気に食わないって話じゃない。先刻クロスさんが言っていたが、飛ぶ敵を追うことは出来ない。そういう依頼なら、手の貸しようがないと言っている」
『このあんぽんたんのぼんくらサウルス! この儂が、貴様らの力量をはかれないようなウスノロと思うてかっ! サウルスは黙って、儂の指図に従っておれ!』
「俺は追える相手として、この賊を捕らえたが、先程のクロスさんの様子だと、おまえはそれが気に入らなかったようじゃないか。だが、空を飛ぶ敵を、飛べない俺にどうしろと言うんだ?」
『こンの…人間のサウルス風情が…』
「ちょっ…ちょ…ちょっと!」
言い争いになりかけるタクトとマハトの間に、今度はクロスが割って入った。
「焦ってるのは解るけど、マハさんの言い分のほうがもっともだろう?」
『なにを言うか! そちらの方が格下なのだから、言うことを聞くのが当たり前ではないかっ!』
「そこまでめちゃめちゃな……。てか、どう言ったところで、今は俺らに協力を仰がないと、手も足も出ないんだし、もうちょっとこう……」
『なんだと? 貴様一体、どういうつもりで "手も足も…" などという単語を口にした?!』
ガンガンと問い詰められて、クロスはだんだん、言葉を選びながらの会話ができなくなってきた。
「や、だって、そちらサン、核化されてるし……」
『貴様、核化がなにか解っておるのかっ? さては、貴様も禁忌破りの仲間かっ!』
「な…仲間なんかじゃ無いしっ! 俺は古代魔法が記された、古文書の解読をしてただけで…っ!」
『古代語が読めない奴らにも読めるようにしたのなら、同じ穴の狢ではないかっ!』
しどろもどろのクロスに向かって、激昂したタクトは更に言い募った。
「自分が読み解いてただけで、他の誰にも説明なんてしてないしっ! てか、こんなくだらない言い争いをしてる時間ナイんじゃないのっ!? ココにカービンが居るってコトは、ジェラートを攫ったのはルミギリスだってコトだろう? 早く手を打たないと、ジェラートはアルバーラの弟子の後継者抗争に巻き込まれちゃうんだぞっ!」
『そんなことは貴様に言われんでも、百も承知じゃっ! そもそも貴様ら人間如きの下等な輩が、禁忌をコソコソ嗅ぎ回って掘っくりかえすから、こちらがこんな迷惑を被るのではないかっ! このバカ野郎どもめっ!』
「あーもうっ! 俺は少なくとも先刻まで、神耶族ってのは崇高で高潔だと思ってたのに、アンタの所為で、高慢ちきでめちゃめちゃってイメージになっちゃったじゃないかっ!」
『……てっ!』
「二人とも、聞いてくれ。俺には二人の言ってることがあまり理解出来ていないが、ジェラートが攫われて、状況が逼迫していることは判っている。俺は、あの子を助けに行くのに力を貸すことに同意するが、クロスさんは?」
「俺も、そこは同意する」
タクトは一瞬黙ったあとに『てっ!』と、あの舌打ちに似た音を吐いた。
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