イルン幻想譚

琉斗六

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ep.2:追われる少年

7.おかしなコンビ【3】

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 クロスは、意を決したように口元を引き結ぶ。

「タクト。アンタ、ホントは物理的に何も出来ないワケじゃないんだよな?」
『いきなり何じゃ?』
「アンタにマハさんを任せられるなら、俺がジェラートを追う!」
『なにぃ!? この状態の儂に、あのサウルスをどうせいとっ!?』
「今の状況は、それぞれがそれぞれに心配している相手の面倒は見られないケド、仕事を交換すれば対応出来る…って、ワカッテるんでしょ」

 タクトは、その美しい顔にとんでもなく不快な表情をのせて、クロスの顔を見上げていたが、数秒ののちに諦めたように大きな溜息をいた。

『よかろう。あの残念サウルスの身柄は儂が預かる。だが! そこまで言うのだから、そちらもきちんと責任を持ってもらうぞっ! ジェラートの身になにかあったら、貴様の身を八裂やつざきにしてくれるから、そう思え!』
「解ってる、絶対に取り戻す!」
『では、儂を上手くあの残念サウルスのところへ投げるのじゃ! それと、ジェラートには、狙われたのは儂が迂闊だったという話で、最後まで押し通すのだぞ!』
「うん、それはもちろん…」

 答えて、それからクロスはなにか物言いたげな顔で黙り込んだ。

『なんじゃ? 時間が惜しいのじゃ、言いたいことがあるなら早く言え』
「…うん…、あの、俺がアルバーラと組合ギルドでしのぎを削ってた…とかいう話のことだけど…」

 言いかけたクロスに対して、タクトは『てっ!』と一言で黙らせる。

『貴様、自分で言い訳しておったではないか。おおかた、その性格で本当に "奉り上げられて" しまったんじゃろ?』
「ホントに、信じてくれてるの?」
『なんらかの下心が全く無かった…とは言えないといった顔じゃな。だが、儂は正直、人間フォルク如きの微細な権力闘争なぞ、どうでもいい。こちらに迷惑を及ぼさない限りは、殺し合いでもなんでも好きにせえ』
「アンタから見たら、俺とアルバーラは同類なんだろうけど…」
『そんなことは、思っておらんと言っておるに。貴様が "高慢ちきでめちゃめちゃ" な儂に力を貸すと言った時から、ヘタレの小心者だが性根は善良と見極めておるわ』
「なんか、めっちゃけなされてるようにしか聞こえない…」

 口の中でブツブツと文句を言うクロスを、タクトはチラッと見やった。

『ではこちらも、ひとつだけ訊きたいんじゃが…?』
「え、なに?」
『貴様、本当に人間フォルクなのだよな?』

 タクトの問いに、クロスは微かに顔を歪めた。

「なんで、そんなこと聞くのさ?」
『禁忌のじゅつを紐解いたからと言って、そうそう簡単に結界フルンドが使える人間フォルクがおるとは思えぬ』

 諦めたように、クロスはため息と共に言った。

「正真正銘、そんじょそこらの人間フォルクだよ。ただ、魔力ガルドルが少々多めってだけで…」
『少々…とは?』
気量計ガルドメーターが、白光輝石フィルトスヴァリンになるぐらい?」
『それはちょっとではなく、ケタハズレ・・・・・じゃろ』

 タクトの返しに、クロスはもう一度深々とため息をく。

「言っとくけど、ホントのホントに骨の髄まで生粋の人間フォルクだから! そりゃ親の顔は知らないけど、魔導士セイドラーらしく馬鹿げた身長なだけで、他に身体的特徴は無いし。魔力ガルドルの量のことは昔から色々言われたけど、マジでそれ以外無いから!」
『ふーむ。先祖返り…と言うこともあるからの。まぁ、とりあえずはそういうことにしておくほかに、なさそうじゃな』

 納得しかねる顔をしつつも、タクトは頷いた。

『あいわかった。では、時間もない。儂をあのサウルスの元へと投げ、貴様はジェラートのあとを追ってくれい』
「判った」

 力の限りにタクトを放り投げ、クロスは怪鳥が飛び去った方角に向かう。

『このノーコン非力のヘタレ野郎めがー!』

 後ろからタクトの苦情が聞こえたが、今はそれに構っている余裕は無い。
 クロスは自分の合切袋の中から、ビンを取り出した。
 飛翔能力を持たない人間リオンが、砂漠で空を飛んで行く怪鳥を見失わずに追い続けることなど出来るはずもない。
 それは分かりきっていたから、クロスは使い魔スレイブのカマキリに命令を与えて空へと放った。
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