89 / 122
ep.2:追われる少年
21.旅立ち【3】
しおりを挟む
「ところで、クロスさん。アルバーラはあの四人以外にも、ヒトや幻獣族も食べていたんだろう? それはどうなったんだ?」
「いや、俺もこの四人が元の姿に戻って驚いてるぐらいだし…」
「そうか。蘇らせたのがジェラートとタクトなら、クロスさんには判らないのか…」
「だけど、せっかくこうして蘇生させてもらえたんなら、魔導士の誓いの通りに、人間に貢献するようになってもらいたいな」
「あ、それなら良いな! 俺には関係ねぇとこで、勤勉に働いてもらうのはアリよりのアリじゃねっ?」
クロスの呟きに、ジェラートが乗ってきた。
「まずはコイツらを小微羽にして、メッシュを魔導組合のトップに立たせて、伝説はただの伝説ですって言わすんだ。そんでもって、こっちの解読マニアには核化とか宴の食卓とかの術式を破棄させて…」
「術式の破棄は、儂も賛成したいが。しかし小微羽なぞにしたら、爆上がりした能力値を、どう説明させるつもりじゃ? このカボチャ頭めがっ」
「師匠が人間離れした能力値だったんだから、弟子が少々すごくたっていいじゃん。頑張ればこれくらい上がるっつっとけば」
「では、残りの二人の使い道は?」
くっつきあって目を回しているルミギリスとカービンを見てから、ジェラートはクロスの顔を見る。
「なぁクロス、なんか使い途あるかな?」
「えっ…そりゃ、一応アンリーのライヴァルとして、ルミギリスだって同じぐらい能力値が上がってないと…ちょっと、…すごく? バランス悪い…とか?」
焦り顔で言い繕うクロスを、微妙に冷めた目線でタクトは眺めてきたが。
「まあよい。成人を済ませた者の行動に、儂がこれ以上口を出す謂れもないわな。そやつらのことも含めて、ここから先は己が思う通りにせえ。儂もこれにて、ようやく子守から開放されたのじゃしな」
「俺もよーやく小姑から開放だー!」
「誰が小姑かっ! さんざん手間と心配かけさせた、この口が言うのか!」
「イテェっつーの! もう実体になってんだから、気軽にヒトの頬を引っ張んなー!」
「ちょっとジェム、小姑は似合い過ぎでしょ」
ジェラートの頬を引っ張っていたタクトが、怖い顔をしてクロスに振り返る。
「そのヘタレた口も、命の恩人に対してそういうことを言うか!」
「いだだだだだっ!」
「ジェラート、開放ってどういうことだ?」
「俺が免許皆伝されたから、タクトはもう俺の守護者をしなくていいのさ」
「そうだ、聞きそびれてたんだが、その "けるゔぃむ" とかいうのは、なんなんだ?」
「神耶族は人間と違って、子育ては最も能力のある者に託すのじゃ。守護者とはすなわちその託された者の名称であり、子の師匠となる者じゃな」
「なるほど。でジェラートは、これからどうするんだ?」
ようやくタクトが手を離したので、クロスが頬を押さえて逃げていく。
「どうもせん。神耶族は基本、単独で気ままに生きる者じゃ。伴をするのは契眷属のみ。ジェラートはあのヘタレを契金翼にしたので、貴様は儂が可愛がってやろうぞ」
「可愛がる? 誰が? なぜ?」
「まったく鈍いサウルスじゃの。貴様を、儂の契金翼にしてやろうと言っておるのじゃ」
「冗談じゃない! おまえのようなトラブルメーカーと同行するのは懲り懲りだし、契約なんてお断りだ! クロスさん、縁があればまた逢いましょう、ジェラートも元気でな。じゃあ俺はこれで!」
言うなり、マハトはダッと駈け出した。
「おいマハ! 砂漠で気を失っている時に、既に仮契約は済ませてある! どこへ行こうと、儂には居場所が解るのじゃぞ!」
「あーあ、大変だ。あんな半裸のまま、行っちゃって…」
呟きながらジェラートが、走り去るマハトの背中を目で追っていると、一緒にそれを見ているタクトが、ご馳走を前にした猫のような顔で顎をしゃくる。
「ふふ、走っていくヤツの尻臀、そそると思わんか?」
「あ~、確かにマハはタクトの好みだナ。でも逃げちゃったぜ?」
「この儂が見初めたのだぞ。断る選択肢なぞ、与えはせんわ。それではジェラート、達者でやれ。さすればまたどこかで、巡り合うこともあるだろう」
「うん、タクトも上手くやれよな」
マハトのあとを追っていくタクトに、ジェラートは手を振った。
「ねェ、ジェム。俺が契金翼になった…ってのは、ホントなんだろうケド…」
「なんだよ? なんかモンダイ?」
「いや、その、魂融術ってのは、一体なんだったの? 夢みたいだけど、夢じゃないみたいだし…」
「あ~、アレかぁ」
ジェラートがちょっと真面目な顔で考えるような素振りを見せたので、クロスは黙って答えを待った。
「夢のよーな、夢じゃないよーな? どっちでもいーじゃん」
「なんなの、それ…」
「だぁってクロスは、俺のモンになるの嬉しいって思ってたじゃん。俺もオマエと冒険三昧するの、スッゲェ嬉しいンだぜっ!」
そう言って、ジェラートはクロスの頬にキスをする。
その瞬間、クロスは自分の顔が音を立てて赤く染まるのを感じ、自分はもうすっかりジェラートの虜になってしまったのだと理解したのだった。
*追われる少年:おわり*
「いや、俺もこの四人が元の姿に戻って驚いてるぐらいだし…」
「そうか。蘇らせたのがジェラートとタクトなら、クロスさんには判らないのか…」
「だけど、せっかくこうして蘇生させてもらえたんなら、魔導士の誓いの通りに、人間に貢献するようになってもらいたいな」
「あ、それなら良いな! 俺には関係ねぇとこで、勤勉に働いてもらうのはアリよりのアリじゃねっ?」
クロスの呟きに、ジェラートが乗ってきた。
「まずはコイツらを小微羽にして、メッシュを魔導組合のトップに立たせて、伝説はただの伝説ですって言わすんだ。そんでもって、こっちの解読マニアには核化とか宴の食卓とかの術式を破棄させて…」
「術式の破棄は、儂も賛成したいが。しかし小微羽なぞにしたら、爆上がりした能力値を、どう説明させるつもりじゃ? このカボチャ頭めがっ」
「師匠が人間離れした能力値だったんだから、弟子が少々すごくたっていいじゃん。頑張ればこれくらい上がるっつっとけば」
「では、残りの二人の使い道は?」
くっつきあって目を回しているルミギリスとカービンを見てから、ジェラートはクロスの顔を見る。
「なぁクロス、なんか使い途あるかな?」
「えっ…そりゃ、一応アンリーのライヴァルとして、ルミギリスだって同じぐらい能力値が上がってないと…ちょっと、…すごく? バランス悪い…とか?」
焦り顔で言い繕うクロスを、微妙に冷めた目線でタクトは眺めてきたが。
「まあよい。成人を済ませた者の行動に、儂がこれ以上口を出す謂れもないわな。そやつらのことも含めて、ここから先は己が思う通りにせえ。儂もこれにて、ようやく子守から開放されたのじゃしな」
「俺もよーやく小姑から開放だー!」
「誰が小姑かっ! さんざん手間と心配かけさせた、この口が言うのか!」
「イテェっつーの! もう実体になってんだから、気軽にヒトの頬を引っ張んなー!」
「ちょっとジェム、小姑は似合い過ぎでしょ」
ジェラートの頬を引っ張っていたタクトが、怖い顔をしてクロスに振り返る。
「そのヘタレた口も、命の恩人に対してそういうことを言うか!」
「いだだだだだっ!」
「ジェラート、開放ってどういうことだ?」
「俺が免許皆伝されたから、タクトはもう俺の守護者をしなくていいのさ」
「そうだ、聞きそびれてたんだが、その "けるゔぃむ" とかいうのは、なんなんだ?」
「神耶族は人間と違って、子育ては最も能力のある者に託すのじゃ。守護者とはすなわちその託された者の名称であり、子の師匠となる者じゃな」
「なるほど。でジェラートは、これからどうするんだ?」
ようやくタクトが手を離したので、クロスが頬を押さえて逃げていく。
「どうもせん。神耶族は基本、単独で気ままに生きる者じゃ。伴をするのは契眷属のみ。ジェラートはあのヘタレを契金翼にしたので、貴様は儂が可愛がってやろうぞ」
「可愛がる? 誰が? なぜ?」
「まったく鈍いサウルスじゃの。貴様を、儂の契金翼にしてやろうと言っておるのじゃ」
「冗談じゃない! おまえのようなトラブルメーカーと同行するのは懲り懲りだし、契約なんてお断りだ! クロスさん、縁があればまた逢いましょう、ジェラートも元気でな。じゃあ俺はこれで!」
言うなり、マハトはダッと駈け出した。
「おいマハ! 砂漠で気を失っている時に、既に仮契約は済ませてある! どこへ行こうと、儂には居場所が解るのじゃぞ!」
「あーあ、大変だ。あんな半裸のまま、行っちゃって…」
呟きながらジェラートが、走り去るマハトの背中を目で追っていると、一緒にそれを見ているタクトが、ご馳走を前にした猫のような顔で顎をしゃくる。
「ふふ、走っていくヤツの尻臀、そそると思わんか?」
「あ~、確かにマハはタクトの好みだナ。でも逃げちゃったぜ?」
「この儂が見初めたのだぞ。断る選択肢なぞ、与えはせんわ。それではジェラート、達者でやれ。さすればまたどこかで、巡り合うこともあるだろう」
「うん、タクトも上手くやれよな」
マハトのあとを追っていくタクトに、ジェラートは手を振った。
「ねェ、ジェム。俺が契金翼になった…ってのは、ホントなんだろうケド…」
「なんだよ? なんかモンダイ?」
「いや、その、魂融術ってのは、一体なんだったの? 夢みたいだけど、夢じゃないみたいだし…」
「あ~、アレかぁ」
ジェラートがちょっと真面目な顔で考えるような素振りを見せたので、クロスは黙って答えを待った。
「夢のよーな、夢じゃないよーな? どっちでもいーじゃん」
「なんなの、それ…」
「だぁってクロスは、俺のモンになるの嬉しいって思ってたじゃん。俺もオマエと冒険三昧するの、スッゲェ嬉しいンだぜっ!」
そう言って、ジェラートはクロスの頬にキスをする。
その瞬間、クロスは自分の顔が音を立てて赤く染まるのを感じ、自分はもうすっかりジェラートの虜になってしまったのだと理解したのだった。
*追われる少年:おわり*
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~
fuwamofu
ファンタジー
魔力量ゼロの落ちこぼれとして勇者パーティを追放された少年リアン。
絶望の果てに始めた自由な旅の中で、偶然助けた少女たちが次々と彼に惹かれていく。
だが誰も知らない。彼こそが古代勇者の血を継ぎ、世界を滅ぼす運命の「真なる勇者」だということを──。
無自覚最強の少年が、世界を変える奇跡を紡ぐ異世界ファンタジー!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる