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第八話
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数日が過ぎ、クロスは巣から離れた場所でジェラートの為の蜜を集めていた。
ヴェレノは野草なので、森の中を探せば採取は可能だ。
王都で、高額で売買されているのは、一つの花から取れる量が微量であるために、野草で集めようとすると酷く手間が掛かるからだ。
更にヴェレノは蜜腺の位置が特殊で、一般的なヒトガタの手では、採取がし辛い構造になっている。
手足がほっそりとしているオメガは、むしろ蜜の採取には向いていた。
「よう、そろそろ来るんじゃないかと思ってたぜ」
振り返ると、コートが数人のオメガを連れて立っている。
「わざわざアンタがそんなコトしなくても、一言声を掛けてくれりゃあ俺ンとこのをいくらもやるって言ってんのにさ」
「暇な身体だ。手間でもない」
呆れたように肩を竦めて見せたが、それでもコートはそこで蜜を集めているクロスの側を離れる気配もない。
壺の中をのぞき、コートは指で掬って蜜を舐めてみた。
「こんな慣れない作業までして……。ずいぶん上等な蜜ばかり採取しているようじゃないか?」
クロスは返事をせずに、黙々と作業を続けている。
「よっぽど気に入ったのか? アンタが一人のオメガに執心するなんて、あるワケもないと思うが。ますます興味がそそられるな。…アンタが紹介してくれるって言うなら、イロイロ手伝っても良いんだぜ?」
「オマエに手間を掛けて貰う程の事もない」
「はいはい。ホントにアンタは強情な男だよ…」
コートが合図をすると、オメガ達は胡蝶の翅を広げて散り散りに飛び、ヴェレノの蜜を集めに行った。
「構わなくていいと言ったはずだが?」
「アンタの調子じゃ、夜まで掛かったって壺いっぱいの蜜は集められねぇよ」
皮肉っぽく笑い、コートは柔らかな葉が生い茂る草地に腰を降ろした。
「まぁ、エキスパートで働き者の仕事を見るってのも、結構面白いモンだぜ?」
フワフワと空を舞うオメガ達は、ヴェレノを見つけては、手際よく蜜を集めてくる。
コートは己の隣の場所を手で叩いて、クロスに座るように勧めてきた。
「俺はアンタのコトが好きなんだ。そのうち、美味い酒でも持ってきてくれりゃ、それだけでイイさ」
「オマエの親切は、時々押し売りも顔負けだ」
クロスは迷惑げに、溜息を吐いた。
ヴェレノは野草なので、森の中を探せば採取は可能だ。
王都で、高額で売買されているのは、一つの花から取れる量が微量であるために、野草で集めようとすると酷く手間が掛かるからだ。
更にヴェレノは蜜腺の位置が特殊で、一般的なヒトガタの手では、採取がし辛い構造になっている。
手足がほっそりとしているオメガは、むしろ蜜の採取には向いていた。
「よう、そろそろ来るんじゃないかと思ってたぜ」
振り返ると、コートが数人のオメガを連れて立っている。
「わざわざアンタがそんなコトしなくても、一言声を掛けてくれりゃあ俺ンとこのをいくらもやるって言ってんのにさ」
「暇な身体だ。手間でもない」
呆れたように肩を竦めて見せたが、それでもコートはそこで蜜を集めているクロスの側を離れる気配もない。
壺の中をのぞき、コートは指で掬って蜜を舐めてみた。
「こんな慣れない作業までして……。ずいぶん上等な蜜ばかり採取しているようじゃないか?」
クロスは返事をせずに、黙々と作業を続けている。
「よっぽど気に入ったのか? アンタが一人のオメガに執心するなんて、あるワケもないと思うが。ますます興味がそそられるな。…アンタが紹介してくれるって言うなら、イロイロ手伝っても良いんだぜ?」
「オマエに手間を掛けて貰う程の事もない」
「はいはい。ホントにアンタは強情な男だよ…」
コートが合図をすると、オメガ達は胡蝶の翅を広げて散り散りに飛び、ヴェレノの蜜を集めに行った。
「構わなくていいと言ったはずだが?」
「アンタの調子じゃ、夜まで掛かったって壺いっぱいの蜜は集められねぇよ」
皮肉っぽく笑い、コートは柔らかな葉が生い茂る草地に腰を降ろした。
「まぁ、エキスパートで働き者の仕事を見るってのも、結構面白いモンだぜ?」
フワフワと空を舞うオメガ達は、ヴェレノを見つけては、手際よく蜜を集めてくる。
コートは己の隣の場所を手で叩いて、クロスに座るように勧めてきた。
「俺はアンタのコトが好きなんだ。そのうち、美味い酒でも持ってきてくれりゃ、それだけでイイさ」
「オマエの親切は、時々押し売りも顔負けだ」
クロスは迷惑げに、溜息を吐いた。
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