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Untitled:バーテンダーとの会話
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「あははっ! 確かにそうだね。ごめん、ごめん。この店にいると…つい…」
言い掛けて、文雄の胸中に再び失った夢の残骸が蘇ってくる。
「つい、なんすか?」
「うん…、自分でも解ってるんだ。未練だってね…。だけどそこに立って、カウンターの向こう側にいるお客様に、俺に話して気が晴れたって言ってもらえたり、自分が作った料理やカクテルで、お客様が笑顔になったりするのを、見るのが、スゴク好きなんだ」
「俺には、よくワカリマセン」
「そうでもないよ?」
「どこがっすか?」
「うん…、そうだな…。俺と話をしてくれてるところとか…かな」
「そりゃ、俺しかいないから…」
「だけど、最初は迷惑そうだっただろ? でも今は普通に話をしてる。キミはちゃんと、バーテンだ」
微笑んだ文雄の表情に、到流は奇妙な感覚を感じた。
端正な顔に浮かぶ、人懐っこい笑みは、どこか安堵感を覚える。
「中途半端だから、ちっともなにも上手く行かないって、分かってる。店を継ぐのが、まるで義務みたいに言われているから、子供みたいに反抗してるだけだってね」
「そんな真っ当な仕事場と、真っ当な店を継げるなら、俺なら大歓迎っすけどね」
「恵まれた環境にいるって、分かってる。この気持ちが甘えだってコトもね。だけどあの日から、どうしても…」
それは、中学三年の時、進路希望を決める用紙をもらって帰った日だった。
文雄の通っていた学校は公立だったから、進路希望と言うよりは、どこの学校を受験するのかを下調べする程度の、アンケートに近い調査だった。
当時の文雄は、その年齢の子供にありがちな反抗期で、意味も無く父とは疎遠気味で、言葉を交わすと喧嘩になったものだ。
だが、それだけだったら、たぶん一過性に終わり、文雄の気持ちが父や店からここまで離れてしまう事は無かったのかもしれない。
だがあの日、夕食の場で進路相談の話を出したところで、突然父が怒り出した。
ヘラヘラしながら、時間を無駄にしている。
相談するまでもなく、進学先は工業高校に決まっているはずだ。
電気技師の資格を取るのは当然で、それ以上に店に貢献する資格を自分で見つけるぐらいの行動を示せ。
店を継ぐ以外の、進路は許さない。
立て続けに、そんなような事を怒鳴り散らされた。
とりなそうとした母を突き飛ばし、オマエがちゃんと面倒を見ないから、こんな我儘になってしまったと、母の事まで罵倒した。
母にまで暴力を振るう事は無いだろうと割って入った文雄は、初めて父に殴られた。
確かにあの晩、父はしたたか飲んでいた。
反抗期の息子が、口を利かなくなった事でストレスも募っていたかもしれない。
だが、ただ一言「進路相談」と言っただけで、キレて怒鳴った父の姿は、ティーンエイジだった文雄の心にあった「尊敬する父」とは真逆の存在だった。
後になって、母が「お父さん、ちょっと体調良くないのよ」と言っていたが、文雄は納得出来なかった。
言い掛けて、文雄の胸中に再び失った夢の残骸が蘇ってくる。
「つい、なんすか?」
「うん…、自分でも解ってるんだ。未練だってね…。だけどそこに立って、カウンターの向こう側にいるお客様に、俺に話して気が晴れたって言ってもらえたり、自分が作った料理やカクテルで、お客様が笑顔になったりするのを、見るのが、スゴク好きなんだ」
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「そうでもないよ?」
「どこがっすか?」
「うん…、そうだな…。俺と話をしてくれてるところとか…かな」
「そりゃ、俺しかいないから…」
「だけど、最初は迷惑そうだっただろ? でも今は普通に話をしてる。キミはちゃんと、バーテンだ」
微笑んだ文雄の表情に、到流は奇妙な感覚を感じた。
端正な顔に浮かぶ、人懐っこい笑みは、どこか安堵感を覚える。
「中途半端だから、ちっともなにも上手く行かないって、分かってる。店を継ぐのが、まるで義務みたいに言われているから、子供みたいに反抗してるだけだってね」
「そんな真っ当な仕事場と、真っ当な店を継げるなら、俺なら大歓迎っすけどね」
「恵まれた環境にいるって、分かってる。この気持ちが甘えだってコトもね。だけどあの日から、どうしても…」
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だがあの日、夕食の場で進路相談の話を出したところで、突然父が怒り出した。
ヘラヘラしながら、時間を無駄にしている。
相談するまでもなく、進学先は工業高校に決まっているはずだ。
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確かにあの晩、父はしたたか飲んでいた。
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だが、ただ一言「進路相談」と言っただけで、キレて怒鳴った父の姿は、ティーンエイジだった文雄の心にあった「尊敬する父」とは真逆の存在だった。
後になって、母が「お父さん、ちょっと体調良くないのよ」と言っていたが、文雄は納得出来なかった。
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