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「先生、さよ~なら~」
子供たちが手を振りながら散っていく。
「ああ、気を付けて帰れよ~」
「かれしさんもさよ~なら~」
意味を分かって言ってるのかどうかも怪しいが、思わずガクッとなった。
「いや、違うから!」
友達同士で走り出した子供たちに、俺の弁解が聞こえたかどうか……。
「ところで、ちょっと離れてくれないか?」
「せっかく再会出来たのに……」
俺の背中にべったり張り付いていた超絶美青年は、名残惜しそうに離れてくれた。
全く、意味が分からない。
「それで……えっと、どちらさまでしたっけ?」
俺の問いに、超絶美青年はなんだかしょんぼりした顔になった。
「お別れした時より背が伸びましたから、覚えてないのかもしれませんが。セオドア・アシュワースです」
「ええっ! テオか?」
「はい、僕です!」
俺が名を思い出したのがさもさも嬉しいみたいに、テオの背景に幻覚の花が咲き乱れて見える。
花粉症が再発して鼻がモゾモゾしそうな、満面の笑みだった。
「そのテオが、どうして……」
と言いかけて、ふと周囲から微妙な視線が集まっていることに気付いた。
「ねえセンセ、それセンセのイイヒト?」
ニヤニヤしながら、雑貨屋のおばちゃんが言った。
「違うから」
「あら~、違うの! 残念ねぇ!」
「センセのイイヒトなら、村に住んでくれると思ったのに!」
「いーい目の保養になったのにねぇ!」
どんどん、おばちゃんの数が増えてくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと! 勝手なこと言わない! 勝手な憶測はしない! 勝手な流言は禁止!」
と、俺が必死に訂正をしている横で、なぜかテオが「僕、トキオミさんのイイヒトに見えますか?」などと火に油を注いでいる。
慌ててテオの手を掴んで、俺は逃げるようにその場を去った──が。
「きゃーーーー!」
テオの手を掴んで小走りに移動を始めた途端に、おばちゃんの黄色い悲鳴が上がった。
「センセにも春が来たわ~」
「赤くなってるわよ、センセ~!」
ああ、もう、おばちゃんってのは、どうしてこうもノリが強引なんだ。
「ここを見つけるの、とても大変でしたよ」
「大変というか……。それ以前に、なんで俺を……?」
「もちろん、お慕いしているからです」
「おひたしがどうしたって?」
「お慕いです。フフフ、相変わらずトキオミさんは面白いですね」
にこりと笑うテオに、俺は引きつった笑みを返す。
初対面の時からピッカピカの美少年だと思っていたが、今のテオは完全に "溢れるような色気" をまとった美青年だ。
優しげな目元はアラン・ドロンかジェラール・フィリップかってぐらいの二枚目っぷりで、にこりと微笑めばおばちゃんじゃなくたって黄色い悲鳴の一つも上げたくなる。
──異世界の美形って、破壊力ありすぎだろ……。
正面から見ると、その気がない俺ですらぞわぞわしてくる。
村のおかみさんたちがキャーキャー言うのも道理ってもんだ。
──しかし "お慕い" って、なんだよ……?
俺は、自我もないただの能力である "翻訳" スキルに向かって問いかけていた。
子供たちが手を振りながら散っていく。
「ああ、気を付けて帰れよ~」
「かれしさんもさよ~なら~」
意味を分かって言ってるのかどうかも怪しいが、思わずガクッとなった。
「いや、違うから!」
友達同士で走り出した子供たちに、俺の弁解が聞こえたかどうか……。
「ところで、ちょっと離れてくれないか?」
「せっかく再会出来たのに……」
俺の背中にべったり張り付いていた超絶美青年は、名残惜しそうに離れてくれた。
全く、意味が分からない。
「それで……えっと、どちらさまでしたっけ?」
俺の問いに、超絶美青年はなんだかしょんぼりした顔になった。
「お別れした時より背が伸びましたから、覚えてないのかもしれませんが。セオドア・アシュワースです」
「ええっ! テオか?」
「はい、僕です!」
俺が名を思い出したのがさもさも嬉しいみたいに、テオの背景に幻覚の花が咲き乱れて見える。
花粉症が再発して鼻がモゾモゾしそうな、満面の笑みだった。
「そのテオが、どうして……」
と言いかけて、ふと周囲から微妙な視線が集まっていることに気付いた。
「ねえセンセ、それセンセのイイヒト?」
ニヤニヤしながら、雑貨屋のおばちゃんが言った。
「違うから」
「あら~、違うの! 残念ねぇ!」
「センセのイイヒトなら、村に住んでくれると思ったのに!」
「いーい目の保養になったのにねぇ!」
どんどん、おばちゃんの数が増えてくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと! 勝手なこと言わない! 勝手な憶測はしない! 勝手な流言は禁止!」
と、俺が必死に訂正をしている横で、なぜかテオが「僕、トキオミさんのイイヒトに見えますか?」などと火に油を注いでいる。
慌ててテオの手を掴んで、俺は逃げるようにその場を去った──が。
「きゃーーーー!」
テオの手を掴んで小走りに移動を始めた途端に、おばちゃんの黄色い悲鳴が上がった。
「センセにも春が来たわ~」
「赤くなってるわよ、センセ~!」
ああ、もう、おばちゃんってのは、どうしてこうもノリが強引なんだ。
「ここを見つけるの、とても大変でしたよ」
「大変というか……。それ以前に、なんで俺を……?」
「もちろん、お慕いしているからです」
「おひたしがどうしたって?」
「お慕いです。フフフ、相変わらずトキオミさんは面白いですね」
にこりと笑うテオに、俺は引きつった笑みを返す。
初対面の時からピッカピカの美少年だと思っていたが、今のテオは完全に "溢れるような色気" をまとった美青年だ。
優しげな目元はアラン・ドロンかジェラール・フィリップかってぐらいの二枚目っぷりで、にこりと微笑めばおばちゃんじゃなくたって黄色い悲鳴の一つも上げたくなる。
──異世界の美形って、破壊力ありすぎだろ……。
正面から見ると、その気がない俺ですらぞわぞわしてくる。
村のおかみさんたちがキャーキャー言うのも道理ってもんだ。
──しかし "お慕い" って、なんだよ……?
俺は、自我もないただの能力である "翻訳" スキルに向かって問いかけていた。
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