時の情景

琉斗六

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11-1.バランサー

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「貴様! よくもおめおめとの前に顔を出せたものだな!」

 突然、怒声が聞こえて、振り返るとレオンが俺に向かって指さしながらズカズカと歩み寄ってくるところだった。

「やっかましいわっ! このくされち……」

 如月が、とんでもない怒声で怒鳴り返している途中で、テオが口をふさぐ。

「凛様、淑女として口にしてはならない単語です」
「もううううっ!」

 如月が地団駄を踏むと、なぜかレオンはよろめいて後ろに下がった。

の寛大な心に甘えて、追放処分の男を王城に引き入れるとは、なにごとぞっ!」
「断りもなく、いきなり他人を拉致するよーな男の、どこが寛大だよあんぽんたん!」
「国を思っての処置である! 多くの国民の安寧を願うのが、国政を司る王たるものの器であろうがっ!」
「それなら未成年の誘拐も許されますってかっ! ご都合主義も甚だしい、お花畑かよっ!」
「貴様のような無分別の女、后に選ばなくて良かったわっ!」
「ぃやっかましいわっ、この強姦魔がっ!」

 如月は、レオンをビシッっと指さした。
 瞬間、レオンの体がなにかに弾き飛ばされたみたいに廊下に飛び、壁に叩きつけられてる。

「あ……あれ?」

 如月は、自分の人差し指を不思議そうに見つめた。

「おい、なにしたんだ?」
「この無礼者めが、一体になにを……」
「えいやっ!」

 如月は今度、手のひらを正面に向けた──ジャッキー・チェンみたいなポーズを取る。

「うぐぐぐぐぐ……」

 レオンが、顔を真赤にして体を前傾ぜんけいさせた。
 まるで、前に進もうとしてもなにかがあって進めない……みたいだ。

「お~!」
「おい、なにをやらかしてんだ、おまえ……」

 一人で大喜びの如月に、俺が問うた。

「ん~、エノセンがいなくなってから、消防車のホースみたくぶわんぶわんしてたんだけど、エノセンが来たら、後ろでホースを支えてくれるマッチョな消防士さんが来てくれたみたいな感じ?」
「なんだそれ?」
「つーまーりー! 強姦魔があたしに失礼なことをしようと傍に寄ってきてても……」

 如月は、親指の腹を人差し指の先でピンッと弾く。
 途端にレオンは部屋の外へポイッと追い出された。
 続いて、側近やら近衛やらに向かって同じ動きを繰り返すと、部屋から順にポイポイッと放り出されてしまった。

「こうやって、弾き飛ばすことが出来るってわけ」
「全然わからん」
「あたしもよくわかんないんだけど、エノセンが通訳出来るのと同じように、エノセンがあたしの魔力の調節してくれてるんだと思う」
「根拠は?」
「体感でぇ~す」

 キャハっと、如月が笑う。

「おまえ……もうそろそろ二十歳ハタチだろ? 少しは落ち着きってもんを身につけろ……」

 俺は深いため息をきながら、眉間をもんだ。
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