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43、あなたが来てくれて、よかった
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適性検査・基礎学力テスト当日。
具視は払霧師大学の教室で1人、筆記試験を受けていた。国語、数学、理科、社会、英語。どれも教本で勉強した通りの内容で、ペンを動かす手がスラスラ動いた。これも払霧師になるために必要なことの一つだ。5教科全てが終わることには午後4時を回っていた。也草は先に帰ったので、具視は電車で帰ることにした。試験の結果は後日郵送されるので、あとはおとなしく家で待つだけだ。
「お姉ちゃん」
具視は誰もいないことを確認してから呼び掛けた。しばらくすると、スーッと自分の影から聴具が姿を現した。
「きょうの朝もお願いしましたが、あらためて。今から人通りが多い大学の外に行きます。その祭、絶対に外に出てきては駄目ですよ。守護影は、払霧師関係者以外の人目に触れてはいけない。そういう決まりがありますから」
聴具はつまらなそうな顔をしながら、1回うなずいて影に戻った。これが也草や龍太郎だったら「はぁい」だなんて甘ったるい声で言うのに。とはいえ、行きの移動中もその忠告は守ってくれたし、しっかりと理解してくれている。
「ねぇ」
透き通るような女性の声が後ろで聞こえ、具視は振り返った。
小柄な少女が1人、廊下の壁に寄り掛かってこちらを見ていた。垂れた目尻に、小動物を思わせる小鼻、深い緑色の目、艶のある黒髪は肩にかかるくらい。ワインレッド色の制服。胸元にあるエンブレムを見て、彼女がここの学生であることはすぐに分かった。
少女は腕を組んだまま歩み寄ると、具視の目をまじまじとのぞき込んだ。
「俺の顔に、何か?」
少女は身を引いた。
「やっぱり、うわさで聞いた通り」
「うわさ?」
「年齢は12か13歳くらい。紫と青に近い不思議な目の色をした、かわいい顔の少年くん」
具視は自分の目にコンプレックスを抱いていたので、こうも目の前で言われると嫌な気分になった。それに”かわいい顔”なんて。
「3年前、霧に襲われたマンションでただ1人生き残った奇跡の子。地方に移住していたけど、最近戻ってきて、払霧師になるため審査に通い始めたって」
「よくご存じで」
「私、あなたに会いたいと思ってたの。波江具視くん」
具視はピクリと眉を動かした。
「あなたが来てくれて、よかった」
意味深な言葉に具視は眉をひそめた。
「私は三平陽」
笑顔でそう語る彼女の顔を見て、具視はゆっくりと手を伸ばした。2人は握手を交わし、お互いの顔を見つめた。手が離れたのと同時に、陽は背中を向けて歩きだした。
「ばいばい、具視くん。また会いましょう」
具視は去っていく彼女の後ろ姿をいつまでも見ていた。
具視は払霧師大学の教室で1人、筆記試験を受けていた。国語、数学、理科、社会、英語。どれも教本で勉強した通りの内容で、ペンを動かす手がスラスラ動いた。これも払霧師になるために必要なことの一つだ。5教科全てが終わることには午後4時を回っていた。也草は先に帰ったので、具視は電車で帰ることにした。試験の結果は後日郵送されるので、あとはおとなしく家で待つだけだ。
「お姉ちゃん」
具視は誰もいないことを確認してから呼び掛けた。しばらくすると、スーッと自分の影から聴具が姿を現した。
「きょうの朝もお願いしましたが、あらためて。今から人通りが多い大学の外に行きます。その祭、絶対に外に出てきては駄目ですよ。守護影は、払霧師関係者以外の人目に触れてはいけない。そういう決まりがありますから」
聴具はつまらなそうな顔をしながら、1回うなずいて影に戻った。これが也草や龍太郎だったら「はぁい」だなんて甘ったるい声で言うのに。とはいえ、行きの移動中もその忠告は守ってくれたし、しっかりと理解してくれている。
「ねぇ」
透き通るような女性の声が後ろで聞こえ、具視は振り返った。
小柄な少女が1人、廊下の壁に寄り掛かってこちらを見ていた。垂れた目尻に、小動物を思わせる小鼻、深い緑色の目、艶のある黒髪は肩にかかるくらい。ワインレッド色の制服。胸元にあるエンブレムを見て、彼女がここの学生であることはすぐに分かった。
少女は腕を組んだまま歩み寄ると、具視の目をまじまじとのぞき込んだ。
「俺の顔に、何か?」
少女は身を引いた。
「やっぱり、うわさで聞いた通り」
「うわさ?」
「年齢は12か13歳くらい。紫と青に近い不思議な目の色をした、かわいい顔の少年くん」
具視は自分の目にコンプレックスを抱いていたので、こうも目の前で言われると嫌な気分になった。それに”かわいい顔”なんて。
「3年前、霧に襲われたマンションでただ1人生き残った奇跡の子。地方に移住していたけど、最近戻ってきて、払霧師になるため審査に通い始めたって」
「よくご存じで」
「私、あなたに会いたいと思ってたの。波江具視くん」
具視はピクリと眉を動かした。
「あなたが来てくれて、よかった」
意味深な言葉に具視は眉をひそめた。
「私は三平陽」
笑顔でそう語る彼女の顔を見て、具視はゆっくりと手を伸ばした。2人は握手を交わし、お互いの顔を見つめた。手が離れたのと同時に、陽は背中を向けて歩きだした。
「ばいばい、具視くん。また会いましょう」
具視は去っていく彼女の後ろ姿をいつまでも見ていた。
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