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57、守護影の始まり
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守護影基礎科では、前回の続きである「守護影の誕生」という項目を学んだ。教授の解説を聞くうちに、今まで具視が想像していた守護影とはまた違った角度からものを見られるようになってきた。
まず、簡単に説明すると、守護影は霧の誕生と同時に生まれた。
今から80年以上も前、東京湾で謎の漂流物が漂着。それは、左右二つが連なり、呼吸する臓器「肺」だった。中心都大学(今は廃校)はその両肺に「生命体Bオリオゼット」と名付け研究を始めたが、なぜ臓器単体で呼吸ができるのかは解明されないまま月日が過ぎ、10数年後、同大学の研究室で肺から大量の霧が湧き起こった(霧の1次爆発)。
霧を吸った者は溶けてなくなり、被害は甚大に。両肺は人体を形成し、現在の紫奇霧人の母体である紫奇霧人大王が誕生。同時に人間と表裏一体の影世界が開かれ、守護影なるものが確認された。
当時、爆発が起こった研究室で働いていた研究員の山本金次が霧の研究を始め、守護影による光反影リズムというメカニズムを解明し、その光で霧をはじくことができることを発表。同時に、その光は紫奇霧人の核(コア)を破壊する力があることが分かり、紫奇霧人に一切太刀打ちできなかった人間が光を利用して戦うすべを生み出した。
金次は、大王を殺すためには1次爆発の原因となった両肺を破壊する必要があると分析し、光を武器に戦う者として最初の払霧師になり、大王と戦った。その際、金次は大王から右肺を奪い取って東京のどこかに隠した。右肺を失った大王は弱体化し、今も完全復活をもくろんで右肺を探しているという。右肺の存在は、紫奇霧人が地方へ行かないための抑止力となっている。
具視はこの話を聞いても、「なるほどね」とはならなかった。まったく科学的には説明できない生命体とも言えるからだ。そもそも、紫奇霧人の元凶となった両肺が、どこから流れ着いたのか、最初から最後まで謎に包まれている。それを今、学問として勉強しているのだから、人生とは不思議なものである。
5月に入って2週目の10日、背筋も凍るお達しが具視に言い渡された。
「なんですって?」
具視は目の前でアイスを食べる龍太郎に聞き返していた。
「――だから、今週の金曜、お前も会議に出ろ。なんで正座してんの?」
「いえ……ただ俺、何かやらかしたかなぁって」
「ないない、大丈夫だって!」
「現役の払霧師が勢ぞろい。どうして大学生の俺が、その中に交じらなくちゃいけないんですか」
「いいじゃん、いいじゃん! 俺もいるし?」
「そういう問題じゃありません。理由を聞かせてください」
具視はチラッと縁側を見た。ミケンズを腹にのせて爆睡する也草の横で、聴具が体を丸めている。しかし、具視にとってはちっともリラックスできる状態ではない。
「理由ねぇ」
龍太郎は最後の一口をペロリと平らげ、棒をくわえながら寝そべった。
「うちには早期実戦って言葉がある。早いうちから研修生として協会で鍛錬を積み、大学を卒業してからスムーズに払霧師活動ができるように。誰でもそれができるわけじゃない。頭首や他の払霧師たちに引き抜かれるような、才能がないとな。お前にはその才能があるだろ」
「もしかして、橋本さんですか」
「そうそう、南薺からの言伝だ」
龍太郎は笑った。
「払霧師としての知識だってまだペーペーだって言うのに」
「よかったじゃんか。ありがたーく参加しておけ。その時に、早期実戦については言われるはずだ。前にも言ったけど、上位三座の頭首3人。御三家って呼ばれる協会の要だ。研修生でも、いずれかの流派に仮所属する必要がある」
「龍太郎さんはどこの流派なんですか?」
「俺は南薺の米沢流だ」
「そうだったんですか?」
「そういや、言ってなかったもんな。也草も研修生で月に数回協会で鍛錬を受けている」
「えぇ? 也草さんも?」
「研修生には師っていう、いわゆる指導者の払霧師が割り当てられる」
「ってことは、龍太郎さんが俺の指導者になるってことも……」
「也草は俺の弟子なんだ。師弟関係は原則1人までだから、お前には別の誰かが割り振られるはずだ。確か、明日師弟選考委員会ってのが開かれる。そこで決められて、会議当日に発表される」
「あの、二十三座の中からってことですよね」
「俺も推選しておいた。いい人をな」
「誰です?」
「それは秘密。とにかく、会議には絶対出ろよ」
「分かりました」
具視はしぶしぶという感じで言った。
「鍛錬のことだけど、払霧具の扱い方から、守護影による移動まで、基本的なことから習っていく。一つだけ気掛かりだっていうのが、そうだな、お前のその刀、まだ抜けないんだろ? だったら何か一つでもいいから適当な武器一つ借りた方がいいかもな」
龍太郎は適切にアドバイスしてくれたが、どうやら具視に拒否権はないようだ。具視としてはこれからゆっくりと時間をかけて勉強をしていくつもりだっただけに、こうも早く実戦的なことをするとは思ってもいなかった。
「分かりました」
具視は腹を決めて言った。
まず、簡単に説明すると、守護影は霧の誕生と同時に生まれた。
今から80年以上も前、東京湾で謎の漂流物が漂着。それは、左右二つが連なり、呼吸する臓器「肺」だった。中心都大学(今は廃校)はその両肺に「生命体Bオリオゼット」と名付け研究を始めたが、なぜ臓器単体で呼吸ができるのかは解明されないまま月日が過ぎ、10数年後、同大学の研究室で肺から大量の霧が湧き起こった(霧の1次爆発)。
霧を吸った者は溶けてなくなり、被害は甚大に。両肺は人体を形成し、現在の紫奇霧人の母体である紫奇霧人大王が誕生。同時に人間と表裏一体の影世界が開かれ、守護影なるものが確認された。
当時、爆発が起こった研究室で働いていた研究員の山本金次が霧の研究を始め、守護影による光反影リズムというメカニズムを解明し、その光で霧をはじくことができることを発表。同時に、その光は紫奇霧人の核(コア)を破壊する力があることが分かり、紫奇霧人に一切太刀打ちできなかった人間が光を利用して戦うすべを生み出した。
金次は、大王を殺すためには1次爆発の原因となった両肺を破壊する必要があると分析し、光を武器に戦う者として最初の払霧師になり、大王と戦った。その際、金次は大王から右肺を奪い取って東京のどこかに隠した。右肺を失った大王は弱体化し、今も完全復活をもくろんで右肺を探しているという。右肺の存在は、紫奇霧人が地方へ行かないための抑止力となっている。
具視はこの話を聞いても、「なるほどね」とはならなかった。まったく科学的には説明できない生命体とも言えるからだ。そもそも、紫奇霧人の元凶となった両肺が、どこから流れ着いたのか、最初から最後まで謎に包まれている。それを今、学問として勉強しているのだから、人生とは不思議なものである。
5月に入って2週目の10日、背筋も凍るお達しが具視に言い渡された。
「なんですって?」
具視は目の前でアイスを食べる龍太郎に聞き返していた。
「――だから、今週の金曜、お前も会議に出ろ。なんで正座してんの?」
「いえ……ただ俺、何かやらかしたかなぁって」
「ないない、大丈夫だって!」
「現役の払霧師が勢ぞろい。どうして大学生の俺が、その中に交じらなくちゃいけないんですか」
「いいじゃん、いいじゃん! 俺もいるし?」
「そういう問題じゃありません。理由を聞かせてください」
具視はチラッと縁側を見た。ミケンズを腹にのせて爆睡する也草の横で、聴具が体を丸めている。しかし、具視にとってはちっともリラックスできる状態ではない。
「理由ねぇ」
龍太郎は最後の一口をペロリと平らげ、棒をくわえながら寝そべった。
「うちには早期実戦って言葉がある。早いうちから研修生として協会で鍛錬を積み、大学を卒業してからスムーズに払霧師活動ができるように。誰でもそれができるわけじゃない。頭首や他の払霧師たちに引き抜かれるような、才能がないとな。お前にはその才能があるだろ」
「もしかして、橋本さんですか」
「そうそう、南薺からの言伝だ」
龍太郎は笑った。
「払霧師としての知識だってまだペーペーだって言うのに」
「よかったじゃんか。ありがたーく参加しておけ。その時に、早期実戦については言われるはずだ。前にも言ったけど、上位三座の頭首3人。御三家って呼ばれる協会の要だ。研修生でも、いずれかの流派に仮所属する必要がある」
「龍太郎さんはどこの流派なんですか?」
「俺は南薺の米沢流だ」
「そうだったんですか?」
「そういや、言ってなかったもんな。也草も研修生で月に数回協会で鍛錬を受けている」
「えぇ? 也草さんも?」
「研修生には師っていう、いわゆる指導者の払霧師が割り当てられる」
「ってことは、龍太郎さんが俺の指導者になるってことも……」
「也草は俺の弟子なんだ。師弟関係は原則1人までだから、お前には別の誰かが割り振られるはずだ。確か、明日師弟選考委員会ってのが開かれる。そこで決められて、会議当日に発表される」
「あの、二十三座の中からってことですよね」
「俺も推選しておいた。いい人をな」
「誰です?」
「それは秘密。とにかく、会議には絶対出ろよ」
「分かりました」
具視はしぶしぶという感じで言った。
「鍛錬のことだけど、払霧具の扱い方から、守護影による移動まで、基本的なことから習っていく。一つだけ気掛かりだっていうのが、そうだな、お前のその刀、まだ抜けないんだろ? だったら何か一つでもいいから適当な武器一つ借りた方がいいかもな」
龍太郎は適切にアドバイスしてくれたが、どうやら具視に拒否権はないようだ。具視としてはこれからゆっくりと時間をかけて勉強をしていくつもりだっただけに、こうも早く実戦的なことをするとは思ってもいなかった。
「分かりました」
具視は腹を決めて言った。
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勿論二世だ。
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