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67、オリバスの箱
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いつものように千代田線で電車を待っていると、遅延を知らせるアナウンスが流れた。23日、この日は朝から小雨が降っており、具視と也草はじめじめした地下鉄の中人であふれるホームにいた。
この日は、午前11時からオリバスの箱で移動の練習をする予定だ。魚ノ神に言われた通り事前に予約も済ませてあるし、也草が練習に付き添ってくれることにもなっている。きょうは2人とも練習用のジャージを入れた体育袋を肩にかけている。
「少し遅れそうだな」
也草が時計を見ながら言った。
「3駅くらいなら移動で飛んでいくか」
(えっ?)
具視はギョッとして也草を見た。
(い、移動ってあれか? 払霧三技の……)
具視は龍太郎に抱えられてビルの谷間を飛んだ時を思い出した。自分で飛ぶならまだしも、人に抱えられて飛ぶというのはめちゃくちゃ怖い。
「外雨降ってますし、もう少し待ちましょうよ」
2人は大手町で待つことにし、也草は事務局に遅れる旨を電話で伝えた。ようやく遅延した電車が到着したのは30分後で、2人は思いきり遅刻して大学にたどり着いた。事務局に寄ると事務員の坂井美代が出てきて、オリバス入館証を手渡してくれた。具視は案内してくれる也草についていき、広い構内にある白い大きな建物の前まで来た。
【払霧師大学 オリバスの箱実習施設】
そう記された白い看板を通り過ぎ、具視たちは自動ドアをくぐった。
ウィーン。
じめっとした空気を一瞬で吹き飛ばす空調。
天井の高いエントランスの中央に立つ、日本とアメリカの国旗が掲げられた巨大なモニュメントが出迎えた。
(うわぁ、まるでどこかの宇宙開発基地みたいだ)
也草は受付にいる事務員の女性へ歩み寄り、入館証を提示した。
「本日1時まで予約の藤原さん、2名ですね。今、手続きしますからお待ちください」
(なんだかドキドキするなぁ)
近未来的な白い床、壁には英語で書かれた文章が飾られている。待っている間に読んでみると――
Michael J. Olivas
文の最後にそう記されていた。
(この人が、魚ノ神さんが言っていたオリバスの箱の開発者……)
「行くぞ」
後ろから声を掛けられてはっとした。也草がパスカードを手に持って先を歩いていた。
「受付の人はいいんですか?」
「俺が説明する」
それは心強い。具視は頼る気満々で彼の後ろについて歩いた。2人は更衣室で練習用のジャージに着替え、大きな自動ドアをくぐった。
体育館ほどもある広々とした空間の真ん中に、奇妙な面体が浮かんでいる。何かに支えられているわけでもなく、床から1メートルの距離に。也草は面体の設定パネルを指で操作し始めた。ほどなくして、さっきまで20面体ほどだった表面が50はある巨大な面体に変化した。その様は、無機質な未知の生物が姿を変えるようだった。
「いつまで突っ立っている。中に入れ」
也草は面体の入り口に続く階段に足をかけていた。言われるがまま也草に続いて面体に入ると、中はぼんやりと薄暗くお互いの顔が薄っすらと見える程度だ。
「これがオリバスの箱、ですか」
声が反響する。
「そうだ。払霧三技の影技練習に使う。まずは俺が実践するから、お前は外のモニタールームで見ていろ。練習条件は50面体、制限時間は5分だ」
さっき入力していたのはその設定らしい。具視は一度オリバスの箱から出て、モニタールームを探した。場内の片隅にガラスで仕切られた部屋がある。あれがそうだろう。
中に入ると、複数のモニターにオリバスの箱内部にいる也草の姿が映し出されていた。守護影の力を使った影技の移動と言われても、この面体内部でいったいどのような練習をするというのだろうか。
「お姉ちゃんも見学しませんか?」
具視は影に呼び掛けた。しばらくして、ふわぁっと眠そうなあくびをかきながら、聴具が具視の影からすーっと出てきた。
「ここ、どこ?」
「大学のオリバスの箱です。影技の練習をしようと思って、也草さんに付き添ってもらいました。今、その手本を見せてくれます」
「え! 見たい見たい!」
聴具は眠気を振り払ってテンションを上げた。
面体の入り口が閉じられ、徐々に薄暗かった内部が白っぽく光っていく。也草は軽く準備体操をすると腕まくりをした。
――開始まであと10秒です。
機械的なアナウンスが始まった。
――3、
――2、
――1、
ブーッというブザー音が場内に鳴り響く。面体内部の壁面一部が赤く光った。也草は目にもとまらぬ早さで飛び出し、あっという間に赤い壁面に着地した。
重力など感じさせない身のこなしで、也草は次々に壁から壁へ高速移動していく。赤く光った壁に触れると光が消え、また別の壁が赤色に光る。一種の反射ゲームだ。具視がこの状況を見ていられるのは、スローモーション用モニターに也草の動きが記録されているからだ。赤色の壁に1回触れると1点のスコアが入る仕組みで、時々出る青い光は2点。藤原也草と表示された表には次々とスコアが加算されていく。
制限時間、残り40秒。
也草はペースを落とすことなく移動を続けている。すごい集中力と速さだ。具視は龍太郎宅で壁まで移動しただけで激突し着地すらままならなかったというのに。
この日は、午前11時からオリバスの箱で移動の練習をする予定だ。魚ノ神に言われた通り事前に予約も済ませてあるし、也草が練習に付き添ってくれることにもなっている。きょうは2人とも練習用のジャージを入れた体育袋を肩にかけている。
「少し遅れそうだな」
也草が時計を見ながら言った。
「3駅くらいなら移動で飛んでいくか」
(えっ?)
具視はギョッとして也草を見た。
(い、移動ってあれか? 払霧三技の……)
具視は龍太郎に抱えられてビルの谷間を飛んだ時を思い出した。自分で飛ぶならまだしも、人に抱えられて飛ぶというのはめちゃくちゃ怖い。
「外雨降ってますし、もう少し待ちましょうよ」
2人は大手町で待つことにし、也草は事務局に遅れる旨を電話で伝えた。ようやく遅延した電車が到着したのは30分後で、2人は思いきり遅刻して大学にたどり着いた。事務局に寄ると事務員の坂井美代が出てきて、オリバス入館証を手渡してくれた。具視は案内してくれる也草についていき、広い構内にある白い大きな建物の前まで来た。
【払霧師大学 オリバスの箱実習施設】
そう記された白い看板を通り過ぎ、具視たちは自動ドアをくぐった。
ウィーン。
じめっとした空気を一瞬で吹き飛ばす空調。
天井の高いエントランスの中央に立つ、日本とアメリカの国旗が掲げられた巨大なモニュメントが出迎えた。
(うわぁ、まるでどこかの宇宙開発基地みたいだ)
也草は受付にいる事務員の女性へ歩み寄り、入館証を提示した。
「本日1時まで予約の藤原さん、2名ですね。今、手続きしますからお待ちください」
(なんだかドキドキするなぁ)
近未来的な白い床、壁には英語で書かれた文章が飾られている。待っている間に読んでみると――
Michael J. Olivas
文の最後にそう記されていた。
(この人が、魚ノ神さんが言っていたオリバスの箱の開発者……)
「行くぞ」
後ろから声を掛けられてはっとした。也草がパスカードを手に持って先を歩いていた。
「受付の人はいいんですか?」
「俺が説明する」
それは心強い。具視は頼る気満々で彼の後ろについて歩いた。2人は更衣室で練習用のジャージに着替え、大きな自動ドアをくぐった。
体育館ほどもある広々とした空間の真ん中に、奇妙な面体が浮かんでいる。何かに支えられているわけでもなく、床から1メートルの距離に。也草は面体の設定パネルを指で操作し始めた。ほどなくして、さっきまで20面体ほどだった表面が50はある巨大な面体に変化した。その様は、無機質な未知の生物が姿を変えるようだった。
「いつまで突っ立っている。中に入れ」
也草は面体の入り口に続く階段に足をかけていた。言われるがまま也草に続いて面体に入ると、中はぼんやりと薄暗くお互いの顔が薄っすらと見える程度だ。
「これがオリバスの箱、ですか」
声が反響する。
「そうだ。払霧三技の影技練習に使う。まずは俺が実践するから、お前は外のモニタールームで見ていろ。練習条件は50面体、制限時間は5分だ」
さっき入力していたのはその設定らしい。具視は一度オリバスの箱から出て、モニタールームを探した。場内の片隅にガラスで仕切られた部屋がある。あれがそうだろう。
中に入ると、複数のモニターにオリバスの箱内部にいる也草の姿が映し出されていた。守護影の力を使った影技の移動と言われても、この面体内部でいったいどのような練習をするというのだろうか。
「お姉ちゃんも見学しませんか?」
具視は影に呼び掛けた。しばらくして、ふわぁっと眠そうなあくびをかきながら、聴具が具視の影からすーっと出てきた。
「ここ、どこ?」
「大学のオリバスの箱です。影技の練習をしようと思って、也草さんに付き添ってもらいました。今、その手本を見せてくれます」
「え! 見たい見たい!」
聴具は眠気を振り払ってテンションを上げた。
面体の入り口が閉じられ、徐々に薄暗かった内部が白っぽく光っていく。也草は軽く準備体操をすると腕まくりをした。
――開始まであと10秒です。
機械的なアナウンスが始まった。
――3、
――2、
――1、
ブーッというブザー音が場内に鳴り響く。面体内部の壁面一部が赤く光った。也草は目にもとまらぬ早さで飛び出し、あっという間に赤い壁面に着地した。
重力など感じさせない身のこなしで、也草は次々に壁から壁へ高速移動していく。赤く光った壁に触れると光が消え、また別の壁が赤色に光る。一種の反射ゲームだ。具視がこの状況を見ていられるのは、スローモーション用モニターに也草の動きが記録されているからだ。赤色の壁に1回触れると1点のスコアが入る仕組みで、時々出る青い光は2点。藤原也草と表示された表には次々とスコアが加算されていく。
制限時間、残り40秒。
也草はペースを落とすことなく移動を続けている。すごい集中力と速さだ。具視は龍太郎宅で壁まで移動しただけで激突し着地すらままならなかったというのに。
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そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。
勿論二世だ。
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注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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