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77、影への呼び掛け
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具視はだらりと下げていた頭を上げ、真っすぐ前を向いた。
「俺は、最強の払霧師に……なる男です」
麻美の姿は見えなかった。濃い霧のせいで、どこにいるのかも把握できない。
「そんな状態で、よく言えるね。具視くん」
右端から声が聞こえた。
「聞いてもいい?」
今度は左側だ。
「あなたが一番尊敬する仏霧師って誰?」
「今も昔も、ずっと変わりません」
具視は静かに言った。
「たった1人、藤原也信さんだけです」
霧の奥が急に静かになった。
「あぁ、あの死んだ人ね」
目の前の霧が急に流動し、麻美は具視の前に姿を見せた。
「せっかく頑張って払霧師になったのにね、最後はあっけなく霧に溶けて死んじゃうなんて。そっか、具視くんにと
ってはその人が尊敬する払霧師なんだね」
「聞き忘れていたことがあります」
「なに?」
「3年前、保護区のマンションを襲った主犯はあなたですか」
「勘違いしてほしくないから言っておくけど、私は彼を殺してない。答えは言わないけど、主犯は私じゃない」
「じゃあ誰が――」
麻美は人差し指を具視の唇に近づけた。
「死にたいの?」
具視はグッと言葉をのみこんだ。
「何でもかんでも話すわけないじゃん。ばかだなぁ、具視くんは。それにしても、具視くんが限界になるのを待っていたら、あっという間に1日がたっちゃいそうだね。どうしようかなぁ、それまで暇だよね。そうだ、ゲームしようよ」
具視は不愉快に眉をひそめたが、相変わらず麻美は子どもじみた笑い声を上げていた。
「やめろ」
「まだ、何も言ってないよ?」
「どうせ、ろくでもないことを考えているのでしょう。このサイコパスが」
「私はただ、あなたのお友達をここに連れてこようと思っただけ」
「話が違います」
具視は焦りを顔ににじませた。
「順番に殺していくと。俺はまだ、死んでいませんよ」
「殺していくとは言ったけど、溶かしていくとは言ってないよ? この椅子にお友達を座らせて、あなたの前で、体が徐々に溶けていくの。大丈夫だよ、指の1本や2本、足の一つ溶かすだけ――」
ガツッと鈍い音が響いた。具視はわずかに動く頭を思いきり前に突き出し、頭突きをかました。麻美はバランスを崩して床に尻をついた。
「この鬼畜!」
具視は低い声で息を吐いて言った。
「彼らを溶かすというなら、俺をまずはどうにかしたらどうですか!」
「嫌だよ」
「なっ」
具視はもがいた。
「手を出すな!」
けれども、麻美は止まらずに隣の部屋へ向かった。やがて――
「この子でいいかな」
麻美はぐったりする天を具視の前に座らせ、ふぅと息をついた。当然、彼女は今霧対策用のマスクもしていない。息をすることは誰にも止められない。目の前で、天は苦しそうにもがき始めた。
パチッと目が開いた。
「あれ? ここっ……うっ」
「おはよう、天ちゃん。よく寝てたね」
「麻美さん?」
自分が拘束され、部屋に満たされた霧を吸わされていると認識した天は、途端にパニックに陥った。
「天さん、今から俺が言うことは守ってください」
具視は努めて冷静に話し掛けた。
「あなたは……」
「冷静になって、呼吸を乱さないでください。なるべく最小限に、息を吸うように」
「でもっ、霧が!」
「大丈夫ですから、落ち着いて」
具視は何度も呼び掛けた。そうするうちに天はようやく冷静さを取り戻し、顔には恐怖を浮かべていたが呼吸を整えた。
「何も話さないでください」
最後にそう言って、具視はこの状況を打破するための考えを巡らせた。天の蒸発はいつ始まってもおかしくない。でも、手足は拘束されている。こうなったら、方法は一つしかない。守護影である聴具を呼び出す。結界を解く方法は分からないが、なんとかこちら側に呼び出せれば、麗一を突き飛ばした時みたいに、相手の動きを封じることができる。
「お姉ちゃん……」
具視は息も絶え絶えに言った。
「出てきてください」
「俺は、最強の払霧師に……なる男です」
麻美の姿は見えなかった。濃い霧のせいで、どこにいるのかも把握できない。
「そんな状態で、よく言えるね。具視くん」
右端から声が聞こえた。
「聞いてもいい?」
今度は左側だ。
「あなたが一番尊敬する仏霧師って誰?」
「今も昔も、ずっと変わりません」
具視は静かに言った。
「たった1人、藤原也信さんだけです」
霧の奥が急に静かになった。
「あぁ、あの死んだ人ね」
目の前の霧が急に流動し、麻美は具視の前に姿を見せた。
「せっかく頑張って払霧師になったのにね、最後はあっけなく霧に溶けて死んじゃうなんて。そっか、具視くんにと
ってはその人が尊敬する払霧師なんだね」
「聞き忘れていたことがあります」
「なに?」
「3年前、保護区のマンションを襲った主犯はあなたですか」
「勘違いしてほしくないから言っておくけど、私は彼を殺してない。答えは言わないけど、主犯は私じゃない」
「じゃあ誰が――」
麻美は人差し指を具視の唇に近づけた。
「死にたいの?」
具視はグッと言葉をのみこんだ。
「何でもかんでも話すわけないじゃん。ばかだなぁ、具視くんは。それにしても、具視くんが限界になるのを待っていたら、あっという間に1日がたっちゃいそうだね。どうしようかなぁ、それまで暇だよね。そうだ、ゲームしようよ」
具視は不愉快に眉をひそめたが、相変わらず麻美は子どもじみた笑い声を上げていた。
「やめろ」
「まだ、何も言ってないよ?」
「どうせ、ろくでもないことを考えているのでしょう。このサイコパスが」
「私はただ、あなたのお友達をここに連れてこようと思っただけ」
「話が違います」
具視は焦りを顔ににじませた。
「順番に殺していくと。俺はまだ、死んでいませんよ」
「殺していくとは言ったけど、溶かしていくとは言ってないよ? この椅子にお友達を座らせて、あなたの前で、体が徐々に溶けていくの。大丈夫だよ、指の1本や2本、足の一つ溶かすだけ――」
ガツッと鈍い音が響いた。具視はわずかに動く頭を思いきり前に突き出し、頭突きをかました。麻美はバランスを崩して床に尻をついた。
「この鬼畜!」
具視は低い声で息を吐いて言った。
「彼らを溶かすというなら、俺をまずはどうにかしたらどうですか!」
「嫌だよ」
「なっ」
具視はもがいた。
「手を出すな!」
けれども、麻美は止まらずに隣の部屋へ向かった。やがて――
「この子でいいかな」
麻美はぐったりする天を具視の前に座らせ、ふぅと息をついた。当然、彼女は今霧対策用のマスクもしていない。息をすることは誰にも止められない。目の前で、天は苦しそうにもがき始めた。
パチッと目が開いた。
「あれ? ここっ……うっ」
「おはよう、天ちゃん。よく寝てたね」
「麻美さん?」
自分が拘束され、部屋に満たされた霧を吸わされていると認識した天は、途端にパニックに陥った。
「天さん、今から俺が言うことは守ってください」
具視は努めて冷静に話し掛けた。
「あなたは……」
「冷静になって、呼吸を乱さないでください。なるべく最小限に、息を吸うように」
「でもっ、霧が!」
「大丈夫ですから、落ち着いて」
具視は何度も呼び掛けた。そうするうちに天はようやく冷静さを取り戻し、顔には恐怖を浮かべていたが呼吸を整えた。
「何も話さないでください」
最後にそう言って、具視はこの状況を打破するための考えを巡らせた。天の蒸発はいつ始まってもおかしくない。でも、手足は拘束されている。こうなったら、方法は一つしかない。守護影である聴具を呼び出す。結界を解く方法は分からないが、なんとかこちら側に呼び出せれば、麗一を突き飛ばした時みたいに、相手の動きを封じることができる。
「お姉ちゃん……」
具視は息も絶え絶えに言った。
「出てきてください」
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注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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