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架鞍の異変
しおりを挟むなんだかこの生活にも、いつの間にか慣れてきた。
朝も昼も夜も、それぞれの時間の時以外は、リビングで霞と禾牙魅さんと話をして、架鞍くんはすぐそばで雑誌を読んでいる。
この夜も、そうだった。
最初よりも三人と仲良くなった気がして、わたしは霞とかなりきわどい話もしていた。
「それにしてもすっかり馴染んじゃったよなあ苺ちゃん。ここら辺で一晩俺と大人の世界を体験してみない?」
「あんな痛いのはもう絶対イヤ」
「相手の男がヘタすぎたんだろ?」
「へー、霞ってスゴイ自信があるんだね」
ソファに座ってテレビのチャンネルを変えていた禾牙魅さんが、口を挟む。
「霞は【鬼精界】でもかなりのワザ師だからな」
わ、ワザ師って。
「霞はやめておけ」
「どうして?」
尋ねるわたしに、禾牙魅さんのかわりに霞が悪戯っぽく笑いながら答えた。
「自分が食っちゃいたいからに決まってんじゃん」
「俺は……」
禾牙魅さんが言いかけたとき、ふいと架鞍くんがリビングを出て行った。
今まで三人で話している間に席を立つなんてことはなかったのに。
「架鞍くん……どうしたんだろう?」
こういう話題、嫌いだったのかな? それとも何かイヤなことでも思い出させたのかも……。
「ガキの考えてることはわかんねえなあ」
霞は呑気にそんなことを言い、禾牙魅さんは無言だ。
「わたし、ちょっと見てくるね」
心配になったわたしは、ソファから立ち上がってリビングを出た。
【鬼精王Side】
苺が去った後。
「気づいてるか?」
いつもよりも真顔で、霞が禾牙魅に問いかける。禾牙魅はうなずいて答えた。
「ああ。苺の中でだいぶ【鬼精虫】が成長しているのが気配で分かる」
「気配でも分かるほどだぜ……成長しきるまであと半分ってとこか……」
◇
【苺Side】
架鞍くんは、どこにもいなかった。
部屋の外から呼んでも返事がなかったし、またお風呂かとも思ったけれど、今まで【鬼精王】達は三人一緒でひとりで急に離れるなんてことはなかったのに。
そうして自分の部屋に戻った時。
突然わたしの身体中を、引っ掻くような痛みが襲った。前の街中での比ではない、あれ以上だ。
「は、っ……!」
たまらずに倒れ込むわたしの視界に、誰かが入ってきて電気を消し、部屋の扉を閉める音がする。
──架鞍くんだった。
「架鞍くん、また……また、わたしの中で……」
架鞍くんは静かにわたしを見下ろしている。
「【鬼精虫】が半分くらいまで成長してくるとね、そうやって勝手に暴れ出したりするようになるんだよ」
「助けて……くれに、きたの……?」
また前のように、助けてくれるのだろうか。
架鞍くんは黙って、倒れているわたしの上に覆いかぶさった。
「そうだよ」
そう言って架鞍くんは、わたしの服をぐっと掴み、胸元を引き裂いた。
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