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決起
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リューク・ライエンに会って以来、サイクスはずっと不機嫌だった。彼はエヴァンスに到着してから、ずっと監視されていた事が気に入らなかった。ロンは、サイクスが暴発しない様にする事に必死だった。そんな精神的困難を乗り越えて、イシュバーン城へ辿り着いたのは、翌日の昼過ぎになってからだった。ここで、遂にサイクスの怒りが爆発した。
直ぐに謁見出来るだろうと思っていたサイクスだが、城内に通すどころか城外で1時間以上も待たされたのである。
「おい、門番!リュークは、本当にレオンハルト殿下に報告してるんだろうな!?城内に入れさえしないとは、一体どう言うつもりだ!?」
門番に詰め寄り、怒声をあげるサイクスをロンは必死に宥めながら、
「なあ、アンタ。ちゃんとレオンハルト殿下に伝わってるか、一度確認して来ちゃくれないか?」
ロンに言われて、門番は足早に城内に走って行った。だが、門番が戻って来るよりも先に、リュークがやって来た。
「長らくお待たせして、申し訳無い。謁見の準備が出来ましたので、殿下の下へご案内する」
リュークに食って掛かろうとするサイクスを抑えながら、ロンが応える。
「宜しくお願いする。しかし、些か時間が掛かり過ぎではないかな?」
「申し訳無い。だが、殿下にお会いすれば、納得頂ける筈だ。ともかく、こちらへ…」
リュークに促されるまま、一行は城内に入って行った。程なくして、大きな扉の前にやって来た。リュークの指示で扉の脇に控えていた兵が、仰々しく扉を開いた。そこは謁見の間だった。左右に別れた兵士達が、一斉に剣を抜き礼を取り、軍楽隊が国歌を吹奏する。そして正面には、正装に身を固めた若者が、まるで国賓でも招き入れる様な佇まいで、彼らが入室するのを待っていた。3人は突然の出来事に呆気に取られたが、ロンとサイクスは共に平静を装いながら礼を失しない様に、謁見の間へ歩みを進める。エリアスも、それに倣って歩きだした。そして、若者の前まで来ると、片膝を付いて礼をした。
「レオンハルト殿下、お久しゅうございます。私共の為に、過分な歓待痛み入ります」
サイクスが顔を伏せたまま言うと、レオンハルトはサイクスの下まで来ると、その肩を叩いて、
「顔を上げてくれ、ラディ・サイクス。余は卿に詫びねばならぬ。5年前、卿の父エアドリックは我が叔父イリアス・ヨーゼフを諌めた為に命を落とした。そればかりか、その一族郎党に到るまで死なせてしまった。とても許しを請える立場ではない」
涙を流しながら、サイクスの前に跪いた。
「何と畏れ多い。臣の方こそ、5年もの長きにわたる雌伏の間参上する事もせず、殿下に苦渋を味わわせてしまいました」
サイクスも流れる涙を拭いもせず、額づいて詫びた。その2人の姿にロンは、行方知れずになっているレオフォルドの嫡男ヒースの事を思い出さずには居られなかった。ヒース殿下と共に行方知れずになっているゲプラー軍師は、きっと共にいるに違いない。ヒース殿下はまだ9歳だが、いずれ大きく成られた時、ゲプラーが擁立する事も有り得るのではないか、と。
「して、卿らがロン・ジャオス殿とエリアス殿か?ロン殿の武勇伝は、しかと耳にしておるぞ」
レオンハルトはロンを誉めちぎったが、ロンは恐縮するばかりで決して功を誇る様な発言はしなかった。新参の他国者である己の立場を、彼は良く理解していた。しかし、レオンハルトがエリアスの手を取りくちづけしようとした瞬間、謁見の間にいた全員が戦慄する程の殺気を放った。
「貴様、何のつもりだ?」
リュークが瞬時に反応し、ロンの喉元に剣を突き付けた為、場の空気は一気に凍り付いた。その状況を変えたのは、レオンハルトだった。
「エリアス殿は、ロン殿の大切な方だったのだな。エリアス殿の可憐さに、思わず忘れてしまった」
赦されよ、ロン殿。屈託のない笑顔で詫びるレオンハルトに、ロンの殺気は氷解した。それを感じ取ると、リュークは静かに剣を収めた。
「さあ、今宵は大事な客人の来訪を祝って会食の場を準備させておる。皆、愉しんでくれ」
レオンハルトの言葉に、一同の緊張は一気に解れた。会食の場は、城の中庭に設けられており、肉に魚介、果物とそれは豪勢なものだった。サイクスは、顔見知りの傭兵仲間がいたらしく、彼らに捕まっていた。エリアスは城の女官達に取り囲まれ、ロンとの馴れ初めやら、イシュタールの将軍達の中では誰が1番の美男子だとか、質問責めに合っている。仕方なく1人で料理を愉しんでいると、レオンハルトとリュークがロンに話し掛けて来た。
「将軍は、我が国に傭兵となる為に来られたとか?その気持ちは、今も変わりませんか?」
「今の俺は、一介の傭兵でしかありません」
レオンハルトの問いに対し、ロンは堂々と答えた。
「将軍の決意は固い様ですな。ですが、敢えてお願いしたいのです。どうか、我が軍の将軍として契約して頂きたい」
「それは俺ではなく、サイクスに頼むべき事です。彼は俺と同じくらいの戦歴がある、充分将軍の職務を全う出来るでしょう」
それは駄目だ、そう言ったのはリュークだった。リュークは更に続ける。
「彼は確かに歴戦の兵だ。しかし、それだけでは将は勤まらない。彼には敵を震え上がらせるだけの武名がない」
それが、俺には有るってのか?ロンの問いに、リュークは無言で頷く。
「買い被りは止してくれ。俺にはジェラード・ロナやカイ・アクシムの様な真似は出来んよ」
「しかし、君には彼らと戦って生き残ったと言う、確固たる実積がある。どうか、我等の精神的支柱になって頂けないだろうか?」
リュークの請願に、ロンは思わず唸った。やがて、
「味方の内、傭兵は1000人程いる筈だな?その隊長って事なら引き受けても良い。勿論、エリアスを副官として就けて貰おう」
レオンハルトとリュークは、顔を見合わせて頷き合うと、ロンの申し出を是とした。そして、サイクスを3000名の正規兵の内、1000名の兵を預かる部将とする事も告げた。
「作戦は3日後、エヴァンスの街を占拠する」
3日後?しかもたった4000足らずの兵力で、6000近い兵を擁するエヴァンスの街を、攻略ではなく占拠するとは?
「自信がお有りの様ですが、一体どんな魔術をお用いになるのですか?」
ロンの疑問に、レオンハルトは、
「それは結果を御覧じろ、ですよ」
満面の笑顔で応えた。
3日後の朝、朝食が済むと全兵が中庭に集められた。
レオンハルトが中庭に面したバルコニーから、一同に向けて演説を行った。
「兵士諸君、今日は我等にとって特別な日になるだろう。我が叔父イリアス・ヨーゼフが王位を簒奪してより5年、皆屈辱の日々に良く堪えてくれた。だが、それも今日で終わる。我等は今日立ち上がる、正統なる王位継承者である余が立ち上がる。そして勝利する、その時は恩賞は思いのままぞ」
兵士達の歓呼の声に応えて、レオンハルトは腰の長剣を抜いて天にかざした。そしてそれを振り下ろして叫んだ。
「先ずはエヴァンスの街を占拠し、イリアス派を追い払うのだ!」
レオンハルト軍は意気揚々とエヴァンスの街を目指して進む。まるで、その存在を敢えて晒しているかの様な陽気な行軍だった。特にそれが顕著なのが、ロンが預かった傭兵隊だった。彼らは士気こそ高いものの、規律はまるで守らず隊列もてんでバラバラである。オマケに喧嘩はするわで、流石のロンもほとほと困り果てていた。小休止の際、ついにロンは傭兵隊の全員を集めて注意を促した。すると、古参の者らしい屈強な傭兵が数人、傭兵達を代表するかの様にロンに絡んで来た。彼らは各々の武器を手に、ロンを脅して来た。
「俺ら全員、昨日今日隊長になったばかりの若僧の命令なんざ聞く気はねぇんだよ」
「要するに、俺の腕試しをしたいって訳だ?」
「話しが早くて良いね?なら、遠慮なく行かせて貰うぜ!!」
大斧を構えた大男が、ロンの背後から襲いかかる。ロンは紙一重で大斧を躱すと、素早い回し蹴りを顔面に喰らわせた。その一撃で、大男は白目を剥いて失神した。
「ロン様!!」
エリアスが血相を変えて叫ぶが、ロンは不敵な笑みを浮かべて応えた。
「大丈夫、エリアス。5分も掛からないから」
「舐めんじゃねぇえ!!」
傭兵達は一斉に斬り掛かって来た。しかし、ロンはそれら全てを見切って、カウンターの拳を喰らわせて行く。拳と言っても鋼の手甲を着けたままである。殴られた傭兵達は、ある者は顎を、またある者は脇腹を抑えながら蹲った。全員、骨が砕けていた。ロンは、急いで回復術師を呼ぶ様に、エリアスに頼んだ。するとどうだろう。エリアスは、既に回復術師の手配を済ませていた。彼女は、ロンがやり過ぎてしまわないかの心配をしていたのだった。結果は彼女の予想通りになってしまった。
「ロン様、幾ら何でもやり過ぎですよ」
「…うん、我ながら反省してる」
だが、これ以降ロンに逆らおうと言う者は、1人としていなくなったのだった。
「ロン殿、傭兵隊の隊士を殴り倒したと言うのは本当か?」
その日の夜、軍議の席で開口一番リュークが尋ねて来た。ロンが口を開くより早く、エリアスが事の一部始終を説明した。それを聞き終えると、リュークは嘆息し、レオンハルトは大声で笑った。
「殿下、笑い事ではありません!ロン殿、軍の規律を何と考えているのか?」
「だから、規律を守る為にやったんだろ?であろう、ロン殿?」
レオンハルトの問いに、ロンは頷いて、
「多少は手加減したつもりだったのですが、少しだけ熱くなってしまった様で…申し訳無い」
「ロン殿が詫びる必要はないぞ。だいたい、アイツら勝手な事ばかりやるから悪いのだ。実戦に入るまでに事が済んだのは、却って好都合と言うものだ」
レオンハルトは、ロンの行いを好意的に受け取ってくれている様だが、リュークはそれを苦々しく思っている様だった。サイクスは、リュークを宥めるのに必死だった。
「それよりも、明日はいよいよエヴァンスの街の占拠を行う。リューク、作戦の内容を説明せよ」
「はっ、では聞いて頂く」
リュークは地図を広げ、敵味方の兵棋を並べると作戦の内容を説明し始めた。
「…と言う作戦だ、各自定められた指示通りに動いて貰いたい」
各将は、納得して各々の陣へ戻って行った。
レオンハルトの本隊1000は、エヴァンス郊外の森を抜けた辺りに布陣した。ここで敵を挑発し続けたのである。この行動は、エヴァンスの守将であるリチャードの誇りを甚く傷付けた。彼は配下のガウェイン・スウェイン兄弟に出撃を命じたが、兄弟は、出撃を拒否した。これは敵の示威行動であり、出撃すれば必ず罠が待っていると言うのがその理由であった。正論である、が故にリチャードは頑なに出撃を命じた。
「敵は僅か1000、例え罠があったとて大した戦力ではない筈だ。それにあれはレオンハルト王子が直接指揮する一軍だ。レオンハルト王子を討てば、それでこの謀反は終わるのだぞ」
「では勝手になされよ、我らは出撃せぬ」
リチャードは思わず耳を疑った。しかし、確かに出撃せぬと言ったのだ。仕方なく、リチャードは直属の兵2000のみを率いて出撃する事となった。
レオンハルトは、間者からリチャードの出撃を聞くと、してやったりと手を打って喜んだ。後は作戦通り兵を動かすだけだ。レオンハルトは、ことさら慌てて見せた。そして、接敵する前に総員退却を命じた。その様子を見たリチャードは、嵩にかかって追撃を命じた。
「レオンハルト王子を捕らえた者は、恩賞は思いのままぞ」
勢いに乗ったリチャードは、先頭に立って追撃を指揮する。そしてそのまま、レオンハルトを追って森の中に入って来た。
「よし、ここまで引き込めば充分だ。全軍懸かれ!」
レオンハルトは頃合い良しと見ると、全軍に突撃命令を下した。すると森の中に伏せていたサイクスの部隊とリュークの部隊が、左右からリチャードの部隊に襲いかかった。更に森の中を突っ切って、ロンの傭兵隊が退路を断った。
「馬鹿な、敵にこれ程の伏兵があるとは?」
リチャードは兵を返して、エヴァンスへ逃げ込もうとした。ロンはこれを無理に止める事はせず、逃げるに任せた。リチャードが必死に逃げると、ガウェイン・スウェイン兄弟が全軍を率いて待ち構えていた。リチャードは合流すると、ガウェインとスウェインに敵を迎え討つ様に命じた。しかし、ガウェインは素早く剣を抜くと、リチャードの喉元に突き付けた。そしてスウェインが縄で縛り上げた。そしてリチャードの兵に向かって、
「お前達の隊長は、我らが捕らえたぞ!我らはレオンハルト王子に味方する事に決めた者だ。そなた等も、敵対するのは止め、我らの真の主君に降るのだ!」
元々レオンハルトに敵対する意志の低かったリチャードの兵は、全員が大人しく降伏する道を選んだ。こうしてレオンハルトは、エヴァンスの街を無血で占拠する事に成功したのである。レオンハルトの入城に、民衆は歓呼の声で迎えた。
ガウェインとスウェイン兄弟の内応は、事前に仕込まれたリュークの策であった。対イサルキアの要衝てあるエヴァンスの守りを任された、有能な軍人であり王国に対する忠誠心の厚さに定評のある男達である。その2人がレオンハルト陣営についた事の影響は、直ぐに顕れた。エヴァンス周辺のみならず、ユージュン全土から正規兵や義勇兵が集まり始め、1ヶ月余りで40000を超える兵力が参集したのである。中でもめぼしい人材として期待されるのが、アンセルム・エリシエルのテュードリア兄妹だった。兄アンセルムは優秀な剣士であり、兵法家としても名が知られている。妹のエリシエルは民政家としての手腕を買われており、補給担当として期待されている。レオンハルトは、彼らしい派手な演出で以って2人を迎え入れた。これにより、今まで不遇をかこって来た人材が、続々と彼の下に参じた。
だが、レオンハルトはまだイリアス・ヨーゼフを討つ素振りを見せなかった。まるで何かを待っている様だった。ロンは何度か何故動かないのかを尋ねてみたのだが、レオンハルトは何も応えなかった。ただ笑って、まあ待っていろと言うばかりである。流石のロンも焦燥感を感じて、リュークに相談を持ち掛けた。
「なあリューク殿、レオンハルト殿下は何故軍を動かさない?一体、何を待ってるんだ?」
リュークは周囲に誰もいない事を念入りに確認してから、更に絶対誰にも言わない事を約束させて、
「殿下が待っておられるのは、あの男だ。このユージュン最強を謳われるあの男、エリック・ファングを待っておられるのだ」
エリック・ファングの名は、ロンも聞いた事がある。かつて皇帝に即位する以前、レイモンド・ストール率いるイサルキア軍50000を、同数の軍勢を率いて互角に渡り合った戦上手である。端正な顔立ちに似合わぬ戦斧の使い手で、レイモンドを幾度も苦しめた武勇の持ち主でもある。結局イサルキア本国での内乱勃発によりレイモンドは撤退したのだが、それまで一歩も退かずに戦い抜いたエリックは、救国の英雄として名を馳せた。だが今彼はイリアス陣営として、王都の防衛に就いている筈だ。
「まさかレオンハルト殿は、エリックが攻めて来るのを待ってるのか?」
「他言無用、ですよ?」
リュークの言葉に、ロンは無言で頷いた。
イリアス・ヨーゼフは狼狽ぶりを隠す余裕すら無くなっていた。無能な臆病者だと信じていた甥レオンハルトが、まさか己に牙を剥いてこようとは思ってもみなかった。そしてユージュン全土から、義勇兵や正規兵までもがあやつの下へ参集しているという。その数は日に日に増えて行き、今にこの王都からも脱走兵が出るに違いない。否、脱走するだけならまだしも、叛乱を起こす者が出るかも知れぬ。その不安が苛立ちに変わり、それが更に人望を落としている事に気付かないという悪循環を繰り返していた。
その日もイリアスは、不安を紛らわす為に朝から酒に溺れていた。そこへ、エリック・ファングが参内したとの報告がもたらされた。
「エリック・ファング、お召により参上した」
「遅いぞエリック!貴様、一体何をしておった!?いや、今はそんな事はどうでも良い。貴様を呼んだのは他でもない、20000の兵を以ってレオンハルトの小僧を討って参れ!」
「20000?…ならばこちらも条件がある。虎の子の竜騎兵1000を預からせて頂く」
「竜騎兵を全て寄越せと申すか!?」
竜騎兵とは、小型の2足歩行の竜を乗りこなす、ユージュン最強の精鋭部隊である。竜は炎を吐いたり空を飛んだりは出来ないが、その爪牙による攻撃力と、強靭な脚力から来る機動力により、その戦闘力は他国の騎馬隊の5倍に匹敵すると言われている。但し、その個体数の少なさと誇り高く、余程の実力がなければ背を預けない為、1000騎が限度という制限を受けている。が、小国ユージュンが今まで他国からの侵略を許さなかった理由の1つだった。
「この条件が認められぬ限り、俺は絶対に出陣しない」
イリアスは散々考え倦ねたが、結局エリックの要求ん飲んだ。と言うより、飲まざるを得なかった。そうしなければ、英雄エリック・ファングを動かす事は出来ないのだから。当のエリックは、了解したと短く応えただけで、出陣準備の為にその場を立ち去った。
エリック・ファング出陣す。その情報は、レオンハルト陣営を騒然とさせた。レオンハルトを始めとする一部の幹部以外は、エリックだけは敵対する事は無いと思っていたからである。そのエリックが竜騎兵1000を率いて来たと聞き、彼が本気である事を思い知らされたのであった。
「エリックは、私の首を本気で取りに来たらしい」
エリックの出陣を待ち構えていたレオンハルトさえ戦慄を覚える程、竜騎兵を率いて来たと言う事実はエリックの鬼気迫る闘志を感じさせた。
「兵力では我らが勝るが、問題は兵の練度だ。我が軍の3分の1は、民兵からなる義勇兵だ。彼らは後方に下げ、正規兵のみで戦うつもりで当たるべきだろう」
リュークの意見に、多くの者が賛同した。異を唱えたのは、ロンとレオンハルトだった。
「義勇兵の士気は、正規兵より高い。彼らは長弓等を用いさせれば、充分戦力になる。要は使い方次第と言う事だ。」
「長槍等も扱い易くて良いでしょうね。俺達傭兵隊は、戦局次第でどこにでも動ける遊撃隊になろう」
「なるほど。お2人の意見はご尤も。それで問題になるのは、どなたが義勇兵を指揮するかですが?」
アンセルムの問いに、レオンハルトが応えた。
「義勇兵は、余が指揮する」
これにはガウェイン・スウェイン兄弟もリュークも反対した。ガウェインなどは、殿下が指揮するなら自分が指揮するとさえ言った。だが、レオンハルトは許さなかった。
「諸君は義勇兵を認めておらぬ。だが、余は他の誰よりも彼らを信じている」
それ以上の理由はいらぬ、レオンハルトは断言した。諸将は沈黙した。だが、リュークがその沈黙を破って発言した。
「では、せめて私に共をお許し下さい。万が一の時は、このリュークが生命にかえてもお守り致します」
「リューク、そなたの忠誠心は万金に価する。だが、死ぬ事は赦さぬ。何が有っても生きるのだ」
他の者も同様だ、レオンハルトは言葉を続ける。
「これからの戦はそれこそ命懸けのものとなるだろう。しかし、死んではならぬ、これは命令だ」
諸将はレオンハルトの言葉に、決意を新たに忠誠を誓うのだった。
レオンハルト軍42000とエリック軍20000は、エヴァンス東方10km程の平野で対峙した。レオンハルト軍は右翼にガウェイン、左翼にスウェイン、中央にアンセルムが布陣し、その後方にレオンハルト率いる義勇兵が控えた。ロンの傭兵隊は、レオンハルトの左翼に陣取った。それに対し、エリック軍は錐行の陣で突撃態勢を取る。しかし、先陣は騎兵であり竜騎兵は最後尾に控えている。
先に仕掛けたのは、エリック軍だった。先陣がレオンハルト軍中央アンセルム隊に突撃を開始した。
「迎撃せよ!」
アンセルムは槍隊を前に出してエリック軍を迎え討つ。戦況は一進一退を繰り返した。これを観て、レオンハルトは左右両翼を前進させ、エリック軍を挟撃すると同時に、本隊である義勇兵の長弓隊に援護射撃を命じた。これに対してエリックは兵を分けて、ガウェイン・スウェイン両翼を抑えながら更に中央への圧力を掛ける。この攻撃に、アンセルム隊は次第に圧され始めた。これを救ったのは、ロンの傭兵隊だった。ロンは独立部隊の機動力を活かして、アンセルム隊に開き掛けた孔を埋める事に成功した。そればかりか、逆撃を掛ける勢いを見せたのは流石にロンだと思わせるものがあった。そのお陰で、アンセルムは陣の再編する事が出来た。
戦局が動いたのは、夕闇が近づいて来た頃であった。
「エリック来襲!!」
その声はレオンハルト軍本隊の後方より上がった。
エリックは戦場に諸将の意識が集中する隙を狙い、本隊である竜騎兵を率いて戦場を大きく迂回して、レオンハルト軍の後方に廻り込んだのである。殺到する竜騎兵の圧倒感に、崩れそうになる義勇兵達を支えたのはレオンハルトの激励だった。
「怯むな義勇兵達よ、諸君の忠義はこのレオンハルトが知っている!竜騎兵と言えど、諸君の忠義の前には恐れるものではないぞ!!」
そう叫ぶと、レオンハルトは先頭に立って竜騎兵を迎え討った。これには周囲の者が大慌てで、
「殿下をお守りするんだ!!」
レオンハルトを討たせまいと、続々と集まり堅固な槍衾を造り上げた。
エリックは一際大きな黒竜に跨がり幾度となく、隙を見付けては突撃を繰り返すのだが、なかなか敵陣を切り崩す事が出来ない。しかし、確実に戦力を削っているのはエリック軍の方である。このまま戦況が推移すれば、確実にエリック軍がレオンハルト本隊を打ち破るだろう。その有り様を観てとったロンは、隣で兵を鼓舞するアンセルムに向かって大声で尋ねた。
「アンセルム、ここを任せて大丈夫か!?」
「それは大丈夫だが、卿はどうするきだ?」
「俺はレオンハルト殿下を守りに行く!!エリアス、付いて来い!」
「はい、ロン様!」
ロンとエリアスは、戦場を疾駆した。そして、レオンハルトの姿を確認するや、一気に彼の下へ急いだ。
エリックはレオンハルトの手腕と人望を認めた。彼が鼓舞すれば、多寡が知れた義勇兵が王国最強の竜騎兵をも阻む壁となるのだ。しかし、自分も王国最強を謳われる武人なのだ。このまま敗れる訳にはいかぬ。その武人の意地が、レオンハルト隊の小さな綻びを見付けさせた。それは小さな、人1人分の亀裂に過ぎなかった。だがエリックは、その小さな亀裂目掛けて先陣を切って突撃を開始した。一瞬だった。エリックが叩き付けた一撃は、堤防を決壊させる大水の様にレオンハルト隊を切り崩したのだった。エリックはレオンハルトの姿を視認するや、騎竜を彼の下へと走らせるそして、こちらの接近に気付き剣を構えるレオンハルトに、戦斧を振りかざして襲いかかった。が、しかしロンが間に割って入り、長剣で以って、戦斧を受け止めたのだった。
「ロン、何故ここへ?」
「戦場全体を見張ってたら、殿下の危機が目に入ったのでね。助太刀に来ました」
「貴様がロンか?邪魔をするなら斬る!」
「そうだぞ、ロン。我らの一騎討ちを邪魔しないで貰いたい」
予想外のレオンハルトの言葉に、ロンは思わず耳を疑った。
「エリックよ。卿は私を試しに来たのであろう?本当にユージュン王国を任せるに足る人物かどうかをな。ならばこの一騎討ち受けてたたねばならん」
「分かりました…ですが、無理はなさらぬ様に」
レオンハルトとエリックは騎乗を止めて、改めて対峙した。エリックは、レオンハルトに対して辛辣な一言を放った。
「殿下は甘い!一国の主たる者が、軽々しく一騎討ちに応じるなど言語道断!」
「軽々しくなど受けておらぬ。だが、王国最強たる卿の、恐らくは生命を賭けた一騎討ち。受けねば、卿に対して礼を失する事となろう」
そう言うと、レオンハルトは長剣を構え直した。エリックも又、戦斧を振りかぶった。
「往くぞ、エリック!」
レオンハルトは、その少年の面影が残る容姿からは信じられない程の素早さで間合いを詰めると、鋭い斬撃を放つ。予想外の攻撃に一瞬戸惑ったエリックだったが、冷静に受け止めると強力な一撃を繰り出す。首を狙ったエリックの攻撃を、身を屈めて避けると、その体勢のまま胴を狙った反撃を返す。エリックは、戦斧の柄でそれを払うが、今度は反撃する余裕が無かった。予想以上に鋭いレオンハルトの攻撃に、エリックは反撃の糸口を掴めずにいた。一旦間合いを取ると、エリックは戦斧を捨て腰の長剣を抜いて攻撃に出た。その攻撃は、一撃の重さを重視した戦斧とは違い、素早く鋭い斬撃だった。形勢は逆転した。今度は、レオンハルトが受けに回る事となった。レオンハルトは巧みな剣さばきで致命の一撃は避け続けているが、徐々に勢いを増していくエリックの攻撃を前に、防戦一方となった。が、一撃一撃の間に、レオンハルトが防御ではなく回避する回数が増えていっている事に、ロンは気付いた。
やがて、レオンハルトは完全にエリックの攻撃を躱すに至った。そして、レオンハルトはエリックの僅かな隙を狙って、彼の剣を叩き落として喉元に剣を突き付けた。
「完敗です、殿下」
エリックはあっさりと負けを認めると、全軍に戦闘停止を命じた。エリック軍は、総員武器を捨て降伏したのだった。
「エリックよ、余は卿の眼鏡に適ったか?」
「殿下、否、陛下。陛下こそこの国の主に相応しいお方です」
「ではエリックよ、改めて卿に命じる。全軍を預かる大将軍として、余に仕えよ」
エリックはいきなりの大抜擢に大いに驚いたが、平伏してこれを受けた。
エリック・ファングの敗戦と降伏の報は、忽ちの内にユージュン全土を駆け巡った。更に彼が大将軍に抜擢された事が伝わると、今まで旗色を窺っていた諸侯が続々とレオンハルトの下に参じた。その為、王都バルハラントへの進行は遅れる事となるのだが、王都は完全に孤立する事になった。
暫くの間、レオンハルトは投降して来た諸侯の歓待に忙殺される事になるのだが、数週間後、再び進発した彼らの下に、凶報がもたらされた。
王都バルハラント、ゼルディア軍により陥落せり
直ぐに謁見出来るだろうと思っていたサイクスだが、城内に通すどころか城外で1時間以上も待たされたのである。
「おい、門番!リュークは、本当にレオンハルト殿下に報告してるんだろうな!?城内に入れさえしないとは、一体どう言うつもりだ!?」
門番に詰め寄り、怒声をあげるサイクスをロンは必死に宥めながら、
「なあ、アンタ。ちゃんとレオンハルト殿下に伝わってるか、一度確認して来ちゃくれないか?」
ロンに言われて、門番は足早に城内に走って行った。だが、門番が戻って来るよりも先に、リュークがやって来た。
「長らくお待たせして、申し訳無い。謁見の準備が出来ましたので、殿下の下へご案内する」
リュークに食って掛かろうとするサイクスを抑えながら、ロンが応える。
「宜しくお願いする。しかし、些か時間が掛かり過ぎではないかな?」
「申し訳無い。だが、殿下にお会いすれば、納得頂ける筈だ。ともかく、こちらへ…」
リュークに促されるまま、一行は城内に入って行った。程なくして、大きな扉の前にやって来た。リュークの指示で扉の脇に控えていた兵が、仰々しく扉を開いた。そこは謁見の間だった。左右に別れた兵士達が、一斉に剣を抜き礼を取り、軍楽隊が国歌を吹奏する。そして正面には、正装に身を固めた若者が、まるで国賓でも招き入れる様な佇まいで、彼らが入室するのを待っていた。3人は突然の出来事に呆気に取られたが、ロンとサイクスは共に平静を装いながら礼を失しない様に、謁見の間へ歩みを進める。エリアスも、それに倣って歩きだした。そして、若者の前まで来ると、片膝を付いて礼をした。
「レオンハルト殿下、お久しゅうございます。私共の為に、過分な歓待痛み入ります」
サイクスが顔を伏せたまま言うと、レオンハルトはサイクスの下まで来ると、その肩を叩いて、
「顔を上げてくれ、ラディ・サイクス。余は卿に詫びねばならぬ。5年前、卿の父エアドリックは我が叔父イリアス・ヨーゼフを諌めた為に命を落とした。そればかりか、その一族郎党に到るまで死なせてしまった。とても許しを請える立場ではない」
涙を流しながら、サイクスの前に跪いた。
「何と畏れ多い。臣の方こそ、5年もの長きにわたる雌伏の間参上する事もせず、殿下に苦渋を味わわせてしまいました」
サイクスも流れる涙を拭いもせず、額づいて詫びた。その2人の姿にロンは、行方知れずになっているレオフォルドの嫡男ヒースの事を思い出さずには居られなかった。ヒース殿下と共に行方知れずになっているゲプラー軍師は、きっと共にいるに違いない。ヒース殿下はまだ9歳だが、いずれ大きく成られた時、ゲプラーが擁立する事も有り得るのではないか、と。
「して、卿らがロン・ジャオス殿とエリアス殿か?ロン殿の武勇伝は、しかと耳にしておるぞ」
レオンハルトはロンを誉めちぎったが、ロンは恐縮するばかりで決して功を誇る様な発言はしなかった。新参の他国者である己の立場を、彼は良く理解していた。しかし、レオンハルトがエリアスの手を取りくちづけしようとした瞬間、謁見の間にいた全員が戦慄する程の殺気を放った。
「貴様、何のつもりだ?」
リュークが瞬時に反応し、ロンの喉元に剣を突き付けた為、場の空気は一気に凍り付いた。その状況を変えたのは、レオンハルトだった。
「エリアス殿は、ロン殿の大切な方だったのだな。エリアス殿の可憐さに、思わず忘れてしまった」
赦されよ、ロン殿。屈託のない笑顔で詫びるレオンハルトに、ロンの殺気は氷解した。それを感じ取ると、リュークは静かに剣を収めた。
「さあ、今宵は大事な客人の来訪を祝って会食の場を準備させておる。皆、愉しんでくれ」
レオンハルトの言葉に、一同の緊張は一気に解れた。会食の場は、城の中庭に設けられており、肉に魚介、果物とそれは豪勢なものだった。サイクスは、顔見知りの傭兵仲間がいたらしく、彼らに捕まっていた。エリアスは城の女官達に取り囲まれ、ロンとの馴れ初めやら、イシュタールの将軍達の中では誰が1番の美男子だとか、質問責めに合っている。仕方なく1人で料理を愉しんでいると、レオンハルトとリュークがロンに話し掛けて来た。
「将軍は、我が国に傭兵となる為に来られたとか?その気持ちは、今も変わりませんか?」
「今の俺は、一介の傭兵でしかありません」
レオンハルトの問いに対し、ロンは堂々と答えた。
「将軍の決意は固い様ですな。ですが、敢えてお願いしたいのです。どうか、我が軍の将軍として契約して頂きたい」
「それは俺ではなく、サイクスに頼むべき事です。彼は俺と同じくらいの戦歴がある、充分将軍の職務を全う出来るでしょう」
それは駄目だ、そう言ったのはリュークだった。リュークは更に続ける。
「彼は確かに歴戦の兵だ。しかし、それだけでは将は勤まらない。彼には敵を震え上がらせるだけの武名がない」
それが、俺には有るってのか?ロンの問いに、リュークは無言で頷く。
「買い被りは止してくれ。俺にはジェラード・ロナやカイ・アクシムの様な真似は出来んよ」
「しかし、君には彼らと戦って生き残ったと言う、確固たる実積がある。どうか、我等の精神的支柱になって頂けないだろうか?」
リュークの請願に、ロンは思わず唸った。やがて、
「味方の内、傭兵は1000人程いる筈だな?その隊長って事なら引き受けても良い。勿論、エリアスを副官として就けて貰おう」
レオンハルトとリュークは、顔を見合わせて頷き合うと、ロンの申し出を是とした。そして、サイクスを3000名の正規兵の内、1000名の兵を預かる部将とする事も告げた。
「作戦は3日後、エヴァンスの街を占拠する」
3日後?しかもたった4000足らずの兵力で、6000近い兵を擁するエヴァンスの街を、攻略ではなく占拠するとは?
「自信がお有りの様ですが、一体どんな魔術をお用いになるのですか?」
ロンの疑問に、レオンハルトは、
「それは結果を御覧じろ、ですよ」
満面の笑顔で応えた。
3日後の朝、朝食が済むと全兵が中庭に集められた。
レオンハルトが中庭に面したバルコニーから、一同に向けて演説を行った。
「兵士諸君、今日は我等にとって特別な日になるだろう。我が叔父イリアス・ヨーゼフが王位を簒奪してより5年、皆屈辱の日々に良く堪えてくれた。だが、それも今日で終わる。我等は今日立ち上がる、正統なる王位継承者である余が立ち上がる。そして勝利する、その時は恩賞は思いのままぞ」
兵士達の歓呼の声に応えて、レオンハルトは腰の長剣を抜いて天にかざした。そしてそれを振り下ろして叫んだ。
「先ずはエヴァンスの街を占拠し、イリアス派を追い払うのだ!」
レオンハルト軍は意気揚々とエヴァンスの街を目指して進む。まるで、その存在を敢えて晒しているかの様な陽気な行軍だった。特にそれが顕著なのが、ロンが預かった傭兵隊だった。彼らは士気こそ高いものの、規律はまるで守らず隊列もてんでバラバラである。オマケに喧嘩はするわで、流石のロンもほとほと困り果てていた。小休止の際、ついにロンは傭兵隊の全員を集めて注意を促した。すると、古参の者らしい屈強な傭兵が数人、傭兵達を代表するかの様にロンに絡んで来た。彼らは各々の武器を手に、ロンを脅して来た。
「俺ら全員、昨日今日隊長になったばかりの若僧の命令なんざ聞く気はねぇんだよ」
「要するに、俺の腕試しをしたいって訳だ?」
「話しが早くて良いね?なら、遠慮なく行かせて貰うぜ!!」
大斧を構えた大男が、ロンの背後から襲いかかる。ロンは紙一重で大斧を躱すと、素早い回し蹴りを顔面に喰らわせた。その一撃で、大男は白目を剥いて失神した。
「ロン様!!」
エリアスが血相を変えて叫ぶが、ロンは不敵な笑みを浮かべて応えた。
「大丈夫、エリアス。5分も掛からないから」
「舐めんじゃねぇえ!!」
傭兵達は一斉に斬り掛かって来た。しかし、ロンはそれら全てを見切って、カウンターの拳を喰らわせて行く。拳と言っても鋼の手甲を着けたままである。殴られた傭兵達は、ある者は顎を、またある者は脇腹を抑えながら蹲った。全員、骨が砕けていた。ロンは、急いで回復術師を呼ぶ様に、エリアスに頼んだ。するとどうだろう。エリアスは、既に回復術師の手配を済ませていた。彼女は、ロンがやり過ぎてしまわないかの心配をしていたのだった。結果は彼女の予想通りになってしまった。
「ロン様、幾ら何でもやり過ぎですよ」
「…うん、我ながら反省してる」
だが、これ以降ロンに逆らおうと言う者は、1人としていなくなったのだった。
「ロン殿、傭兵隊の隊士を殴り倒したと言うのは本当か?」
その日の夜、軍議の席で開口一番リュークが尋ねて来た。ロンが口を開くより早く、エリアスが事の一部始終を説明した。それを聞き終えると、リュークは嘆息し、レオンハルトは大声で笑った。
「殿下、笑い事ではありません!ロン殿、軍の規律を何と考えているのか?」
「だから、規律を守る為にやったんだろ?であろう、ロン殿?」
レオンハルトの問いに、ロンは頷いて、
「多少は手加減したつもりだったのですが、少しだけ熱くなってしまった様で…申し訳無い」
「ロン殿が詫びる必要はないぞ。だいたい、アイツら勝手な事ばかりやるから悪いのだ。実戦に入るまでに事が済んだのは、却って好都合と言うものだ」
レオンハルトは、ロンの行いを好意的に受け取ってくれている様だが、リュークはそれを苦々しく思っている様だった。サイクスは、リュークを宥めるのに必死だった。
「それよりも、明日はいよいよエヴァンスの街の占拠を行う。リューク、作戦の内容を説明せよ」
「はっ、では聞いて頂く」
リュークは地図を広げ、敵味方の兵棋を並べると作戦の内容を説明し始めた。
「…と言う作戦だ、各自定められた指示通りに動いて貰いたい」
各将は、納得して各々の陣へ戻って行った。
レオンハルトの本隊1000は、エヴァンス郊外の森を抜けた辺りに布陣した。ここで敵を挑発し続けたのである。この行動は、エヴァンスの守将であるリチャードの誇りを甚く傷付けた。彼は配下のガウェイン・スウェイン兄弟に出撃を命じたが、兄弟は、出撃を拒否した。これは敵の示威行動であり、出撃すれば必ず罠が待っていると言うのがその理由であった。正論である、が故にリチャードは頑なに出撃を命じた。
「敵は僅か1000、例え罠があったとて大した戦力ではない筈だ。それにあれはレオンハルト王子が直接指揮する一軍だ。レオンハルト王子を討てば、それでこの謀反は終わるのだぞ」
「では勝手になされよ、我らは出撃せぬ」
リチャードは思わず耳を疑った。しかし、確かに出撃せぬと言ったのだ。仕方なく、リチャードは直属の兵2000のみを率いて出撃する事となった。
レオンハルトは、間者からリチャードの出撃を聞くと、してやったりと手を打って喜んだ。後は作戦通り兵を動かすだけだ。レオンハルトは、ことさら慌てて見せた。そして、接敵する前に総員退却を命じた。その様子を見たリチャードは、嵩にかかって追撃を命じた。
「レオンハルト王子を捕らえた者は、恩賞は思いのままぞ」
勢いに乗ったリチャードは、先頭に立って追撃を指揮する。そしてそのまま、レオンハルトを追って森の中に入って来た。
「よし、ここまで引き込めば充分だ。全軍懸かれ!」
レオンハルトは頃合い良しと見ると、全軍に突撃命令を下した。すると森の中に伏せていたサイクスの部隊とリュークの部隊が、左右からリチャードの部隊に襲いかかった。更に森の中を突っ切って、ロンの傭兵隊が退路を断った。
「馬鹿な、敵にこれ程の伏兵があるとは?」
リチャードは兵を返して、エヴァンスへ逃げ込もうとした。ロンはこれを無理に止める事はせず、逃げるに任せた。リチャードが必死に逃げると、ガウェイン・スウェイン兄弟が全軍を率いて待ち構えていた。リチャードは合流すると、ガウェインとスウェインに敵を迎え討つ様に命じた。しかし、ガウェインは素早く剣を抜くと、リチャードの喉元に突き付けた。そしてスウェインが縄で縛り上げた。そしてリチャードの兵に向かって、
「お前達の隊長は、我らが捕らえたぞ!我らはレオンハルト王子に味方する事に決めた者だ。そなた等も、敵対するのは止め、我らの真の主君に降るのだ!」
元々レオンハルトに敵対する意志の低かったリチャードの兵は、全員が大人しく降伏する道を選んだ。こうしてレオンハルトは、エヴァンスの街を無血で占拠する事に成功したのである。レオンハルトの入城に、民衆は歓呼の声で迎えた。
ガウェインとスウェイン兄弟の内応は、事前に仕込まれたリュークの策であった。対イサルキアの要衝てあるエヴァンスの守りを任された、有能な軍人であり王国に対する忠誠心の厚さに定評のある男達である。その2人がレオンハルト陣営についた事の影響は、直ぐに顕れた。エヴァンス周辺のみならず、ユージュン全土から正規兵や義勇兵が集まり始め、1ヶ月余りで40000を超える兵力が参集したのである。中でもめぼしい人材として期待されるのが、アンセルム・エリシエルのテュードリア兄妹だった。兄アンセルムは優秀な剣士であり、兵法家としても名が知られている。妹のエリシエルは民政家としての手腕を買われており、補給担当として期待されている。レオンハルトは、彼らしい派手な演出で以って2人を迎え入れた。これにより、今まで不遇をかこって来た人材が、続々と彼の下に参じた。
だが、レオンハルトはまだイリアス・ヨーゼフを討つ素振りを見せなかった。まるで何かを待っている様だった。ロンは何度か何故動かないのかを尋ねてみたのだが、レオンハルトは何も応えなかった。ただ笑って、まあ待っていろと言うばかりである。流石のロンも焦燥感を感じて、リュークに相談を持ち掛けた。
「なあリューク殿、レオンハルト殿下は何故軍を動かさない?一体、何を待ってるんだ?」
リュークは周囲に誰もいない事を念入りに確認してから、更に絶対誰にも言わない事を約束させて、
「殿下が待っておられるのは、あの男だ。このユージュン最強を謳われるあの男、エリック・ファングを待っておられるのだ」
エリック・ファングの名は、ロンも聞いた事がある。かつて皇帝に即位する以前、レイモンド・ストール率いるイサルキア軍50000を、同数の軍勢を率いて互角に渡り合った戦上手である。端正な顔立ちに似合わぬ戦斧の使い手で、レイモンドを幾度も苦しめた武勇の持ち主でもある。結局イサルキア本国での内乱勃発によりレイモンドは撤退したのだが、それまで一歩も退かずに戦い抜いたエリックは、救国の英雄として名を馳せた。だが今彼はイリアス陣営として、王都の防衛に就いている筈だ。
「まさかレオンハルト殿は、エリックが攻めて来るのを待ってるのか?」
「他言無用、ですよ?」
リュークの言葉に、ロンは無言で頷いた。
イリアス・ヨーゼフは狼狽ぶりを隠す余裕すら無くなっていた。無能な臆病者だと信じていた甥レオンハルトが、まさか己に牙を剥いてこようとは思ってもみなかった。そしてユージュン全土から、義勇兵や正規兵までもがあやつの下へ参集しているという。その数は日に日に増えて行き、今にこの王都からも脱走兵が出るに違いない。否、脱走するだけならまだしも、叛乱を起こす者が出るかも知れぬ。その不安が苛立ちに変わり、それが更に人望を落としている事に気付かないという悪循環を繰り返していた。
その日もイリアスは、不安を紛らわす為に朝から酒に溺れていた。そこへ、エリック・ファングが参内したとの報告がもたらされた。
「エリック・ファング、お召により参上した」
「遅いぞエリック!貴様、一体何をしておった!?いや、今はそんな事はどうでも良い。貴様を呼んだのは他でもない、20000の兵を以ってレオンハルトの小僧を討って参れ!」
「20000?…ならばこちらも条件がある。虎の子の竜騎兵1000を預からせて頂く」
「竜騎兵を全て寄越せと申すか!?」
竜騎兵とは、小型の2足歩行の竜を乗りこなす、ユージュン最強の精鋭部隊である。竜は炎を吐いたり空を飛んだりは出来ないが、その爪牙による攻撃力と、強靭な脚力から来る機動力により、その戦闘力は他国の騎馬隊の5倍に匹敵すると言われている。但し、その個体数の少なさと誇り高く、余程の実力がなければ背を預けない為、1000騎が限度という制限を受けている。が、小国ユージュンが今まで他国からの侵略を許さなかった理由の1つだった。
「この条件が認められぬ限り、俺は絶対に出陣しない」
イリアスは散々考え倦ねたが、結局エリックの要求ん飲んだ。と言うより、飲まざるを得なかった。そうしなければ、英雄エリック・ファングを動かす事は出来ないのだから。当のエリックは、了解したと短く応えただけで、出陣準備の為にその場を立ち去った。
エリック・ファング出陣す。その情報は、レオンハルト陣営を騒然とさせた。レオンハルトを始めとする一部の幹部以外は、エリックだけは敵対する事は無いと思っていたからである。そのエリックが竜騎兵1000を率いて来たと聞き、彼が本気である事を思い知らされたのであった。
「エリックは、私の首を本気で取りに来たらしい」
エリックの出陣を待ち構えていたレオンハルトさえ戦慄を覚える程、竜騎兵を率いて来たと言う事実はエリックの鬼気迫る闘志を感じさせた。
「兵力では我らが勝るが、問題は兵の練度だ。我が軍の3分の1は、民兵からなる義勇兵だ。彼らは後方に下げ、正規兵のみで戦うつもりで当たるべきだろう」
リュークの意見に、多くの者が賛同した。異を唱えたのは、ロンとレオンハルトだった。
「義勇兵の士気は、正規兵より高い。彼らは長弓等を用いさせれば、充分戦力になる。要は使い方次第と言う事だ。」
「長槍等も扱い易くて良いでしょうね。俺達傭兵隊は、戦局次第でどこにでも動ける遊撃隊になろう」
「なるほど。お2人の意見はご尤も。それで問題になるのは、どなたが義勇兵を指揮するかですが?」
アンセルムの問いに、レオンハルトが応えた。
「義勇兵は、余が指揮する」
これにはガウェイン・スウェイン兄弟もリュークも反対した。ガウェインなどは、殿下が指揮するなら自分が指揮するとさえ言った。だが、レオンハルトは許さなかった。
「諸君は義勇兵を認めておらぬ。だが、余は他の誰よりも彼らを信じている」
それ以上の理由はいらぬ、レオンハルトは断言した。諸将は沈黙した。だが、リュークがその沈黙を破って発言した。
「では、せめて私に共をお許し下さい。万が一の時は、このリュークが生命にかえてもお守り致します」
「リューク、そなたの忠誠心は万金に価する。だが、死ぬ事は赦さぬ。何が有っても生きるのだ」
他の者も同様だ、レオンハルトは言葉を続ける。
「これからの戦はそれこそ命懸けのものとなるだろう。しかし、死んではならぬ、これは命令だ」
諸将はレオンハルトの言葉に、決意を新たに忠誠を誓うのだった。
レオンハルト軍42000とエリック軍20000は、エヴァンス東方10km程の平野で対峙した。レオンハルト軍は右翼にガウェイン、左翼にスウェイン、中央にアンセルムが布陣し、その後方にレオンハルト率いる義勇兵が控えた。ロンの傭兵隊は、レオンハルトの左翼に陣取った。それに対し、エリック軍は錐行の陣で突撃態勢を取る。しかし、先陣は騎兵であり竜騎兵は最後尾に控えている。
先に仕掛けたのは、エリック軍だった。先陣がレオンハルト軍中央アンセルム隊に突撃を開始した。
「迎撃せよ!」
アンセルムは槍隊を前に出してエリック軍を迎え討つ。戦況は一進一退を繰り返した。これを観て、レオンハルトは左右両翼を前進させ、エリック軍を挟撃すると同時に、本隊である義勇兵の長弓隊に援護射撃を命じた。これに対してエリックは兵を分けて、ガウェイン・スウェイン両翼を抑えながら更に中央への圧力を掛ける。この攻撃に、アンセルム隊は次第に圧され始めた。これを救ったのは、ロンの傭兵隊だった。ロンは独立部隊の機動力を活かして、アンセルム隊に開き掛けた孔を埋める事に成功した。そればかりか、逆撃を掛ける勢いを見せたのは流石にロンだと思わせるものがあった。そのお陰で、アンセルムは陣の再編する事が出来た。
戦局が動いたのは、夕闇が近づいて来た頃であった。
「エリック来襲!!」
その声はレオンハルト軍本隊の後方より上がった。
エリックは戦場に諸将の意識が集中する隙を狙い、本隊である竜騎兵を率いて戦場を大きく迂回して、レオンハルト軍の後方に廻り込んだのである。殺到する竜騎兵の圧倒感に、崩れそうになる義勇兵達を支えたのはレオンハルトの激励だった。
「怯むな義勇兵達よ、諸君の忠義はこのレオンハルトが知っている!竜騎兵と言えど、諸君の忠義の前には恐れるものではないぞ!!」
そう叫ぶと、レオンハルトは先頭に立って竜騎兵を迎え討った。これには周囲の者が大慌てで、
「殿下をお守りするんだ!!」
レオンハルトを討たせまいと、続々と集まり堅固な槍衾を造り上げた。
エリックは一際大きな黒竜に跨がり幾度となく、隙を見付けては突撃を繰り返すのだが、なかなか敵陣を切り崩す事が出来ない。しかし、確実に戦力を削っているのはエリック軍の方である。このまま戦況が推移すれば、確実にエリック軍がレオンハルト本隊を打ち破るだろう。その有り様を観てとったロンは、隣で兵を鼓舞するアンセルムに向かって大声で尋ねた。
「アンセルム、ここを任せて大丈夫か!?」
「それは大丈夫だが、卿はどうするきだ?」
「俺はレオンハルト殿下を守りに行く!!エリアス、付いて来い!」
「はい、ロン様!」
ロンとエリアスは、戦場を疾駆した。そして、レオンハルトの姿を確認するや、一気に彼の下へ急いだ。
エリックはレオンハルトの手腕と人望を認めた。彼が鼓舞すれば、多寡が知れた義勇兵が王国最強の竜騎兵をも阻む壁となるのだ。しかし、自分も王国最強を謳われる武人なのだ。このまま敗れる訳にはいかぬ。その武人の意地が、レオンハルト隊の小さな綻びを見付けさせた。それは小さな、人1人分の亀裂に過ぎなかった。だがエリックは、その小さな亀裂目掛けて先陣を切って突撃を開始した。一瞬だった。エリックが叩き付けた一撃は、堤防を決壊させる大水の様にレオンハルト隊を切り崩したのだった。エリックはレオンハルトの姿を視認するや、騎竜を彼の下へと走らせるそして、こちらの接近に気付き剣を構えるレオンハルトに、戦斧を振りかざして襲いかかった。が、しかしロンが間に割って入り、長剣で以って、戦斧を受け止めたのだった。
「ロン、何故ここへ?」
「戦場全体を見張ってたら、殿下の危機が目に入ったのでね。助太刀に来ました」
「貴様がロンか?邪魔をするなら斬る!」
「そうだぞ、ロン。我らの一騎討ちを邪魔しないで貰いたい」
予想外のレオンハルトの言葉に、ロンは思わず耳を疑った。
「エリックよ。卿は私を試しに来たのであろう?本当にユージュン王国を任せるに足る人物かどうかをな。ならばこの一騎討ち受けてたたねばならん」
「分かりました…ですが、無理はなさらぬ様に」
レオンハルトとエリックは騎乗を止めて、改めて対峙した。エリックは、レオンハルトに対して辛辣な一言を放った。
「殿下は甘い!一国の主たる者が、軽々しく一騎討ちに応じるなど言語道断!」
「軽々しくなど受けておらぬ。だが、王国最強たる卿の、恐らくは生命を賭けた一騎討ち。受けねば、卿に対して礼を失する事となろう」
そう言うと、レオンハルトは長剣を構え直した。エリックも又、戦斧を振りかぶった。
「往くぞ、エリック!」
レオンハルトは、その少年の面影が残る容姿からは信じられない程の素早さで間合いを詰めると、鋭い斬撃を放つ。予想外の攻撃に一瞬戸惑ったエリックだったが、冷静に受け止めると強力な一撃を繰り出す。首を狙ったエリックの攻撃を、身を屈めて避けると、その体勢のまま胴を狙った反撃を返す。エリックは、戦斧の柄でそれを払うが、今度は反撃する余裕が無かった。予想以上に鋭いレオンハルトの攻撃に、エリックは反撃の糸口を掴めずにいた。一旦間合いを取ると、エリックは戦斧を捨て腰の長剣を抜いて攻撃に出た。その攻撃は、一撃の重さを重視した戦斧とは違い、素早く鋭い斬撃だった。形勢は逆転した。今度は、レオンハルトが受けに回る事となった。レオンハルトは巧みな剣さばきで致命の一撃は避け続けているが、徐々に勢いを増していくエリックの攻撃を前に、防戦一方となった。が、一撃一撃の間に、レオンハルトが防御ではなく回避する回数が増えていっている事に、ロンは気付いた。
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