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第二章 新生活、はじめるよ!
夕焼け会議
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目が覚めた俺は激務で忙しいオースティンをシーフレアに呼んで息抜きがてら夕食をご馳走する事にした。
また、地下迷宮で死にかけたエルルーン達三人も話を聞くためにスクルドに頼んで連れてきてもらった。
「レンジ様、これはうまい!」
先程から一心不乱に料理を口に運んでいる。
そんなに慌てて食べなくても逃げやしないのに。
「その地下迷宮の事はルージュ達は知っていたんだな。俺に気を遣って内緒にしてたことは感謝しよう。
だが状況が変わった。クロノア様より地下迷宮を封印せよとのご指示に従わねばまた俺がど突かれる」
「クロたんも相変わらず急だね」
おい、不敬なことを言うな。
しばかれたらどうするんだ。
それを察した向かいに座るエルルーン達が一斉に身震いしていた。
「リィーナ様。お口にチャックです」
「なにそのチャックって。古すぎてわかんないよ」
たしかに、お口にチャックは父さんがよく使っていたな。母さんに隠し事をする時に。
昔を思い出して少し笑みがこぼれる。
「それでエルルーン。中はどうなっているんだ」
「はい。通路は他のダンジョンと比べて割と広めです。そして中もかなり複雑になっていて私達も地下二階までしか到達出来ませんでした」
エルルーン達が地下二階までとはかなりの難易度だな。
公王さんが命を落としたのも頷ける。
「エルちゃん、モンスターは」
「はい。私達が遭遇したのはミノタウロスの大群とそれを操る悪魔です」
「それだけ」
「はい、それだけです」
納得のいかない顔をリィーナはしていた。それもそうだろう。ミノタウロスが大群とはいえエルルーン達をそこまで追い詰める事が不思議なのだ。
「こっちのミノタウロスって強いのかな」
「はい。ダンジョンの支配者、または守護者とも呼ばれる強敵です」
「それに知性もありますからね。魔族と同じ強さを持つのは確かです」
エルルーンの言葉をセリーヌが補足してくれた。
「なんでそんな危ない所に公王さんは出掛けたんだ。死にたがりなのか」
「いえ。ただの戦鬪狂です。我が主君ながら恥ずかしい限りです」
はあ、馬鹿だねえ。としか言えないな。
「その時エルルーン達は一緒じゃなかったのか」
「はい。私達の制止も効かず勝手に配下の者を引き連れていきました。それに彼らに同行する理由もないので放置する事にしたのです」
隣でオースティンがこめかみを抑えて深く溜息を吐いていた。
「で、どの辺りでやられたんだ」
「生き残った者からは地下一階の下へ降りる階段付近と聞いています」
「同じようにミノタウロスの集団にか」
「はい。そのように聞いています」
うーん、どうすっかな。
俺とリィーナの二人だけじゃ途中で疲れ果てそうだな。
かなり長く潜ると想定すると食料などポーション類も多めに確保する必要があるか。
「リィーナ、行けるか」
「当たり前だよ。僕はレンジの相方だからね。どんな時も一緒だよ」
「よし。明日は俺がポーション作りをするから、リィーナは食料など野営の準備を整えてくれ」
「オッケー。完璧に揃えるから期待してよ」
何に期待するのか分からないが、とにかく任せることにした。
「あのレンジ様。私も一緒に」
ルージュの言葉に皆が一斉に続いた。
「わかった。ただし、絶対に先走るな。俺とリィーナの援護だと思ってついてきてくれ」
彼女達に死なれたら困るしな。
ん、あれ。なんでまだ凛子が居るんだ。
しかも彼女も行く気満々なんだけど。
「あの、凛子は帰った方がいいと思う。そろそろ帰らないとロザミアさんに怒られるぞ」
「帰りません。それになんでロザミアがさんで、私は呼び捨てなのですか」
「いや、君は俺の中で降格したから。あの屋敷のわがまま振りにはほんと呆れたよ」
「そんな……」
日頃の行いって大切だよな。
俺みたいになんで普通に過ごせないかなあ。こいつらは。
「ところでスクルド引退するんだろ。大丈夫なのか」
「はい。すでにアルヴィトに引き継いであります。あとは機を見て布告するだけです」
「それは私と一緒ですな、スクルド様」
「ええぇ、オースティンさんも引退するのか。大丈夫なのかよ」
「次世代に任せますよ。それに私も妻とこちらに住む予定ですから」
な、なんと。すでに決まっていたのか。
「どの辺がご希望ですか」
「はい。出来れば旧市街でお願いします。家は夫婦二人ですので小さいものを希望します」
「わかりました。そう手配しましょう」
ロータが、こんな時にそんな話をしなくてもいいんじゃないか。
「オースティンさんが来てくれて良かったね。これでレンジも男同士の付き合いができるでしょ」
「たしかに。それは悪くないな」
シェフリーさんは何かと忙しいからな。遊びに誘うのは気が引けるし。
うん、これはいいかもしれない。
それに普通の人で、かなりの良識人が近くに居るのは心強い。
これで理不尽女王達から解放されるぜ。
「女神様、感謝致します」
また、地下迷宮で死にかけたエルルーン達三人も話を聞くためにスクルドに頼んで連れてきてもらった。
「レンジ様、これはうまい!」
先程から一心不乱に料理を口に運んでいる。
そんなに慌てて食べなくても逃げやしないのに。
「その地下迷宮の事はルージュ達は知っていたんだな。俺に気を遣って内緒にしてたことは感謝しよう。
だが状況が変わった。クロノア様より地下迷宮を封印せよとのご指示に従わねばまた俺がど突かれる」
「クロたんも相変わらず急だね」
おい、不敬なことを言うな。
しばかれたらどうするんだ。
それを察した向かいに座るエルルーン達が一斉に身震いしていた。
「リィーナ様。お口にチャックです」
「なにそのチャックって。古すぎてわかんないよ」
たしかに、お口にチャックは父さんがよく使っていたな。母さんに隠し事をする時に。
昔を思い出して少し笑みがこぼれる。
「それでエルルーン。中はどうなっているんだ」
「はい。通路は他のダンジョンと比べて割と広めです。そして中もかなり複雑になっていて私達も地下二階までしか到達出来ませんでした」
エルルーン達が地下二階までとはかなりの難易度だな。
公王さんが命を落としたのも頷ける。
「エルちゃん、モンスターは」
「はい。私達が遭遇したのはミノタウロスの大群とそれを操る悪魔です」
「それだけ」
「はい、それだけです」
納得のいかない顔をリィーナはしていた。それもそうだろう。ミノタウロスが大群とはいえエルルーン達をそこまで追い詰める事が不思議なのだ。
「こっちのミノタウロスって強いのかな」
「はい。ダンジョンの支配者、または守護者とも呼ばれる強敵です」
「それに知性もありますからね。魔族と同じ強さを持つのは確かです」
エルルーンの言葉をセリーヌが補足してくれた。
「なんでそんな危ない所に公王さんは出掛けたんだ。死にたがりなのか」
「いえ。ただの戦鬪狂です。我が主君ながら恥ずかしい限りです」
はあ、馬鹿だねえ。としか言えないな。
「その時エルルーン達は一緒じゃなかったのか」
「はい。私達の制止も効かず勝手に配下の者を引き連れていきました。それに彼らに同行する理由もないので放置する事にしたのです」
隣でオースティンがこめかみを抑えて深く溜息を吐いていた。
「で、どの辺りでやられたんだ」
「生き残った者からは地下一階の下へ降りる階段付近と聞いています」
「同じようにミノタウロスの集団にか」
「はい。そのように聞いています」
うーん、どうすっかな。
俺とリィーナの二人だけじゃ途中で疲れ果てそうだな。
かなり長く潜ると想定すると食料などポーション類も多めに確保する必要があるか。
「リィーナ、行けるか」
「当たり前だよ。僕はレンジの相方だからね。どんな時も一緒だよ」
「よし。明日は俺がポーション作りをするから、リィーナは食料など野営の準備を整えてくれ」
「オッケー。完璧に揃えるから期待してよ」
何に期待するのか分からないが、とにかく任せることにした。
「あのレンジ様。私も一緒に」
ルージュの言葉に皆が一斉に続いた。
「わかった。ただし、絶対に先走るな。俺とリィーナの援護だと思ってついてきてくれ」
彼女達に死なれたら困るしな。
ん、あれ。なんでまだ凛子が居るんだ。
しかも彼女も行く気満々なんだけど。
「あの、凛子は帰った方がいいと思う。そろそろ帰らないとロザミアさんに怒られるぞ」
「帰りません。それになんでロザミアがさんで、私は呼び捨てなのですか」
「いや、君は俺の中で降格したから。あの屋敷のわがまま振りにはほんと呆れたよ」
「そんな……」
日頃の行いって大切だよな。
俺みたいになんで普通に過ごせないかなあ。こいつらは。
「ところでスクルド引退するんだろ。大丈夫なのか」
「はい。すでにアルヴィトに引き継いであります。あとは機を見て布告するだけです」
「それは私と一緒ですな、スクルド様」
「ええぇ、オースティンさんも引退するのか。大丈夫なのかよ」
「次世代に任せますよ。それに私も妻とこちらに住む予定ですから」
な、なんと。すでに決まっていたのか。
「どの辺がご希望ですか」
「はい。出来れば旧市街でお願いします。家は夫婦二人ですので小さいものを希望します」
「わかりました。そう手配しましょう」
ロータが、こんな時にそんな話をしなくてもいいんじゃないか。
「オースティンさんが来てくれて良かったね。これでレンジも男同士の付き合いができるでしょ」
「たしかに。それは悪くないな」
シェフリーさんは何かと忙しいからな。遊びに誘うのは気が引けるし。
うん、これはいいかもしれない。
それに普通の人で、かなりの良識人が近くに居るのは心強い。
これで理不尽女王達から解放されるぜ。
「女神様、感謝致します」
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