未知なる世界で新たな冒険(スローライフ)を始めませんか?

そらまめ

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第三章 世界は美しいと証明しろ!

下界への帰還

 ヴァルハラでの過酷な訓練を初めてからから三年を経て、それはようやく終わりを迎えた。
 クロノア様より時の加護を授かっても、俺は最後まで時魔法を使うことは出来なかったが。剣術や体術に関しての武術には何とか及第点をもらったことで訓練は終了した感じだった。
 まあ、師匠曰く。

『これ以上、君たちの外見が成長して変わってしまったら元に戻すのが面倒だし。この辺でお終いにしよう』

 なんとも返事のしづらい事だっのだが、横のリィーナを見れば納得できる。
 うざガキが、うざレディに進化してしまい。これではシーフレアで仲の良い人達に不審な目で見られてしまいそうなので、致し方なしといったところだ。けれど安心して欲しい。リィーナの戦闘に向いた慎ましいスタイルは、しっかりと維持されている。

『そこに関しては最早呪いだね、あきらめな』
『くっ、スカたんには言われたくないよっ!』

 スカディ様にそんな感じで毎日イジられていた。
 しかしそんなリィーナが戦闘面に関して一番成長した。その実力は俺を遥かに超えて女神様に匹敵するまでに成長し、特に能力を全解放したスタイルはヤバい。
 美しく淡く煌めく紅蓮のオーラを全身に纏い。剣や槍、弓をマナで具現化させて戦うあの姿は、一言で言ってかっこいい。

『まさにフレア!』
『奇跡か!』
『帰ってきたわ、私のかわいい妹が!』

 あの四騎士のシスコンどもが、そう言って絶賛するくらいに。

 だが、俺だって全解放できる!

 ……武器とか具現化できないけどな。

 け・れ・ど! 白金に輝いたオーラを纏い。刀に六大属性を付与して戦える! 紅蓮の炎を纏った刀とか最高にイカす!
 もっとも、能力を全解放しても全く精霊魔法が使えないけどな。

『もはや呪いだね。ここまで精霊と相性が悪いのはさ』

 呆れ果てた師匠はそう言って匙を投げたが。全くもって俺も同意見だ。

 それに周りでアンジュ達が魔法で支援してくれるので問題ない。
 え、彼女たちが居ない時はどうするのかって?

 ふっ、愚問だな。
 勇者の魔法は使えなくても。俺にだってライトニング系や空間転移などの魔法は未だに使える。心配すんな。

「ねぇ、レンジ。勇者のスキルが封印されたって事は自動復活も自動回復も出来ないね。大怪我しないように頑張ってね。というか、僕の大聖女であるアイデンティティが復活だね、しっししし」
「あん。俺の防御魔法舐めんなよ。点で捉えた最小の面で素早く展開して防ぐ、五重シールドを!」
「……そこまで重ねなくてもよくない。ほんとビビリだよね、レンジはさ」

 なっ……

「それにさあ。僕に、より踏み込んだやつが勝つ。とか、かっこいい事を言っておいて。言った本人が無意識に安全マージンとって踏み込まないって、どういうことさ。かっこ悪すぎて僕はドン引きだよ、レンジ!」
「……うっせぇわ! ちっとばかし強くなったからって調子のってんじゃねぇぞ、うざガキ!」
「うざガキいうなっ! 僕は一万年に一人のスーパー美少女アイドルだ!」

 リィーナが両手を突き出して突っかかってきたので、その両手を素早く蔦で拘束する魔法で縛り。飛び込んできたリィーナの顔面に、限界まで柔らかくしたシールドを展開してぶつけた。

「ふにゃっ!」

 そして蔦で脚も縛り、動けないように拘束した。

「君のその魔法発動時間の短さだけは称賛するよ。やる事が姑息すぎるけどね」
「お褒めいただきありがとうございます、師匠」
「いや、別に褒めてないけどね」
「ひどいよ、レンジ! 僕の手足を縛って何をするつもりなのさ!」

 手足を縛られて芋虫みたいな動きをしながら、酷い妄想にかられて叫ぶリィーナを尻目に師匠が驚くべき事を口にした。

「下界に帰還する前に君たちや周りの能力を再設定しようか。まずはリィーナちゃんは、蘇生魔法の削除。そしてレンジくんは勇者関連のスキルを削除します。また、君たちの強さに合わせて、あの世界の魔物や魔族、人などの強さを底上げする。早い話。ゲーム風に例えれば、あちらの世界線のユウタくん達と難易度を同じハードレベルにするってことね」


「な、勝手に私の世界を!」
「フーちゃん。異論や反論は認めないよ。これはレンジくん達が奴等に勝利する為に、僕が決めたことだ。それが不服ならこの君の世界を。いや、この世界線を消し去り何も無かったことにする」

 納得いかないと叫んだ女神様に対して。師匠は冷徹な判断を下した。それでも尚食い下がろうと一歩踏み込んだ女神様に、師匠は言葉の刃を喉先に突きつける。

「君たちが負けて、もう一つの世界線に悪影響を及ぼすのは看過できない。要は、いつまでも君の失策には付き合ってられないってことさ。万が一でも奴等が勝利した世界線など存在してはならない。
 そんな事は絶対に認められないし、許されないことなんだよ」
「なら、あの世界のように! あなたが倒せばいいじゃない!」
「甘えるな! 散々都合よく自分たちでやると言っておいて、ここまで勝手に堕落したのは君たちだ!
 ……最後まで自分たちで抗え。その腐った心意気で堕落した罪を自分達自身で償え。
 僕はね。正直君たちにも心底腹を立ててるんだ。奴等と同じくらいにね」

 まるでその言葉は。女神様の喉元に突きつけられた刃が触れて薄く血が流れるように、有無も言わさないっと言った感じで女神様に冷徹に突きつけられてトドメを刺した。

「女神様。僕たちなら大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。それに教えられたでしょ。
 命は儚くて短い。その人としての在り様も不完全だからこそ成長しようと一生懸命に足掻くって。
 そもそも人生にリセットボタンなんてないんだよ。ねっ、レンジ」
「ああ、そうだな。それに、俺たちだけがリセットできるなんて頑張って生きている人達に失礼すぎる。蘇生も、過剰な力も要らない。俺とリィーナは皆と同じように全力で生き抜いて、明日に希望を抱いて楽しく暮らすんだ。そして満足に笑って、生が終えられたと言えるように」
「……あなたたち」

 そう。俺たちは現実に今、この世界で生きている。けしてゲームの世界の中なんかじゃない。
 それにとある女神様との約束もある。
 美しい世界を見せてあげるって約束が。
 その女神様が恥ずかしそうに願った想いを。俺は素敵な願いだと思ったから。だからそんな素敵な願いを叶える為にも。俺が自分自身で掴んだ想いと力のみで全力で生きて、それを証明してみせないと駄目なんだ。


「あなた様。満足そうですね」
「やっと、彼らしくなってきたからね」
「あああっ! 鼻がピクピクしてる! なんかいやらしい妄想してるでしょ、レンジ!」
「な、してねぇよ!」
「下から見れば丸わかりなんだよっ! どうせかっこいいこと言って、チヤホヤされたいとか思ってるんでしょ!」
「思ってねぇよ! そうやって毎回ぐだぐだにすんのはやめろ!」

 そう言い返しながら女神様ゆきなにフォローを乞うも、あっさり素早く顔を逸らされた。

「まさか貴様! 私の娘を誑かそうなどと思ってまいな!」
「ひぇっ、思ってません! 思ってませんからスカディ様!」

 鬼気迫る表情で迫り来るスカディ様に対して素早く土下座をして謝罪しながら必死に弁明した。
 何度も何度も頭を小突かれながら涙目になりながら謝り、思う。
 どうしてこう、毎回良い感じで終わらないのだと。

 けれど、こうして過酷だったヴァルハラ生活は幕を閉じていくのであった。少しの不満を抱えながら。
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