邪神様に恋をして

そらまめ

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邂逅

邪神様、ゆっくり休息します

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 倒れてから十日あまり寝ていたらしい。
 その間に体の隅々を隈なく知られることとなった。
 まあ、そんなことは今更どうでもいい。


 俺はヒルデから巫女姫率いる信徒達との戦の結末を聞いた。
 自分のしでかしたことだか、まったく記憶にない。
 俺の覚えている最後の記憶は、クロノアの泣き顔だけだ。
 結果的に俺が無意識で放った魔法により敵軍は全滅し、女神テティスと公女殿下は無事に水の公国に戻った。

 まあ、めでたし、めでたしだった。


 しかし、ここで重要な問題が発覚する。
 リハビリがてら軽くヒルデと稽古をしようとしたが、手が震えて刀が持てない。
 人と相対すると手が勝手に震えて刀を落としてしまうのだ。
 ヒルデの勧めもあり、しばらくゆっくり休息することにした。



 そんな訳で、今日はミツキの通う騎士学校へ授業参観にきた。
 初めてきた校舎内は質素ながらも気品がある、だぶん。
 そして案内役はエイルだ。最近屋敷では会わないと思っていたら騎士学校の先生になっていた。
 もっとも、ミツキの事を心配してのことらしいが。

 こうして今、ミツキの魔法実習を見学している。
 人や魔物を模した的を目掛けて、生徒が様々な魔術や魔法を放っていた。

「エイル、凄いな。みんなレベルが高いよ」
「ふふふ、悠太さん。私が教えているんですから当然です」
「まあ、教えるのだけは上手かったもんな、エイルは」
「教えるのだけって。悠太さん、本当に失礼ですね」

 おっ、ミツキが氷の槍で的を射抜いた。
 初めて会った時は魔法なんて使えなかったのに凄いな。

「ゆうた様、観ててくれましたか!」
「おう、凄いな!」

 ミツキが俺に手を振ってアピールした。
 うん、ほんと楽しそうでよかった。

「エイル、ウンディーネの加護って凄いな。あんなに早く上達するんだ」
「ミツキの元々の才能もありますけどね。なにより勉強熱心ですから。誰かさんと違って」
「なんだエイル。そうやって自分を卑下することないぞ」
「はああ、違いますよっ。悠太さんの事ですよっ!」
「ばか言うなよ。あんないい生徒は他にいないぞ」

 実習も終わり、昼食だというのでミツキと食堂に向かう。

「おお、自分で好きなのを選べるのか、美味そう」
「はい。ゆうた様、本当に美味しいですよ」

 俺たちはそれぞれ好きな物を皿に取って長テーブルの端に座った。

「ミツキ、別に俺とじゃなくて、友達と一緒に食べてもよかったんだぞ」
「大丈夫です。たまにはゆうた様とこうして食べる方が嬉しいですから」

 だが、なんとなく視線が痛い。特に男子から。

「そうか、ならいいけど」
「はいっ!」

 鳥の唐揚げらしき物を一口食べる。うまい。
 そして丸いパンをちぎってクリームスープに浸して食べた。うん、これも中々いける。
 最後にプリンらしきものを食べる。まさにプリンだ。

 なんか食事もたいして変わらないし、これでテレビとスマホがあればほぼ同じなんだよな。
 日本の知識を活かして金儲けして、なんて無理だな。
 これは一生ヒモ生活かもしれない。

「どうしたんですか、なにか考え事でもありました」
「いや。俺は一生ヒモ生活なのかなって、さ」
「ひも、ですか。よく分かりませんが良いんじゃないですか」

 よく分かってない娘にオッケーもらいました。
 まあ、そんな感じで楽しくミツキと昼食を食べて、俺は騎士学校を後にした。


 一人で向かった先はロータのいる領主館だ。

 ロータとは全然会っていなかったので心配だった。
 執務室にノックをして入ると、ロータは髪もボサボサで疲れ果てた顔をしていた。あの輝いていたロータの面影はどこにも無い。

「よっ、ロータ、忙しそうだな。じゃ、またな」

 俺は踵を返し執務室を出ようとするとロータに足を掴まれ引き止められた。は、速い。

「悠太さまぁ、せっかく来てくれたのに帰らないで下さい。私を慰めてくださいよぉ」
「なんで俺がロータを慰めなきゃいけないんだよ。忙しそうだし仕事の邪魔をしたらいけないだろ」

 足を掴む手を振り解こうとするが、無理だった。

「これも悠太様のせいなんですよ、半分くらいですけど。いや、ちょっとですけど」
「またなんかしてかしたのか。ほんとロータは抜けてるな」
「だってぇ。スクルド姉様から、あなた達が遊んでいるから悠太様がこうなったって、カーラとミストも一緒に怒られたんですよぉ、理不尽ですよ」
「まあ、よく分からんが、スクルドがそう言うならロータ達が悪いのだろう。俺ではどうする事も出来ないな、諦めろ」
「諦められませんよぉ、助けてくださいよっ!」

 だいたい何から助けるんだよ。
 こうなるとロータはポンコツだし、支離滅裂すぎるんだよな。

「分かった。俺はどうすればいい」
「スクルド姉様の恋人になってください。そうすれば機嫌も治るのです」

 ほらみろ。やっぱ訳わかんねぇ事言い出したよ。
 だいたい俺とスクルドが付き合って、なんでロータ達に対して機嫌が良くなるんだよ。ほんと意味がわかりませんね。

「だから、スクルド姉様は悠太様のことが大好きなんです。想いが成就すれば少しは私達にも優しくなる、かもしれません」

 かも、じゃねぇーか。

「スクルドとは今は考えられないな。いいかロータ、同じ屋敷に恋人が四人もいるなんて、俺には無理だ。今でさえ手一杯なんだからな」
「じゃあ、別居すればいいじゃないですか」
「俺のどこにそんな金があるんだよ。ヒモ舐めんな!」

 未だ足にしがみついているロータを振りほどく。
 ロータはひょっこり正座した。

「お金なら私が工面しましょう。こう見えて私、お金持ちですから」
「だから、なんでヒモが前提なんだよ。それじゃ今と一緒だろうが」
「そうですか。良い考えだと思ったのに。でもこうして悠太様と話して元気になりましたよ」
「そうか、なら良かった。ほんとロータには心配しかしないよな。たまには俺を安心させてくれよな」

 ロータがキョトンとした表情で俺を見る。

「悠太様が、私の心配を……」

 なんかめんどくさい展開になりそうなので急いで執務室をでた。



 帰りに市場で屋台の串焼きを頬張っていると、クロノアが飛んできた。

「ユータ、わたしにも買ってよ」
「おう、塩とタレどっちがいい」
「もちろん、ユータと一緒の塩たよ!」

 クロノアの串焼きと、俺のエールを買って、二人でベンチに座って食べた。

「ユータ、エール好きよだよね。よくそんな苦いのを飲めるね」
「甘すぎるのよりはいいかな。食べるときはさ」
「どれ、わたしも試してみるよ」

 クロノアが俺のエールを一口飲んだ。といっても、俺からしたら舐める程度の量だけど。

「うん、串焼きには合うかも」
「気に入ってもらえて何よりだよ、お嬢様」

 それからも二人で色々な物をお腹いっぱい食べた。

「ところでなんで俺の居場所が分かった」
「ユータを見つけるのは簡単だよ。精霊がたくさんいる所に行けば良いからね、ほら」

 たしかにたくさんの精霊が周りにいた。
 特に今まで当たり前すぎて全然気にしてはいなかった。

「マルデル様の伴侶とかじゃなくて、ユータはほんと精霊に愛されてるよね。良かったね」

 クロノアのこんな笑顔、いつぶりかなぁ。
 こうしてると、本当にかわいくて綺麗なんだよな。


 クロノア、大好きだよ。心の中で密かに思った。
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